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#114

「澪さんや悠花さんのことも、理由もなく憎んでおりました。」


「……そうなんですね。」


 彩音には理解出来る話でした。ビアンカの転生した姿が沙織であれば、澪や悠花に対しての感情も変わることがなかったのかもしれません。


「驚かないのですね?」


「えっ?……ええ、人にはいろいろな感情があります。私たちのことを好意的に見ていない方がいらっしゃることは、十分に承知しております。」


「会話をしたことのない相手から嫌われてしまうことも受け入れてしまうのですか?」


「……そうですね。……なにしろ、私は悪役令嬢らしいので。」


 彩音は微笑みながら言いました。

 沙織は意味が分からず、『えっ!?』と短く言った後で彩音をジッと見てしまいます。


「楓さんに、私がズレていることを教えていただきました。おそらく、私は非常識な人間なんです。」


「……そんな、非常識だなんてことはありませんわ。」


「いいえ。今は、それが分かっているんです。……そのことを許せないと感じる方がいるのは、仕方ないことだと言われました。」


「楓さんにですか?」


「はい。ですが、それは悪い事をしているのではなくて、知らないだけなんだとも教えていただきました。……私が気付かないうちに悪役令嬢になってしまう未来は変えられるんです。」


「……だから、いろいろなことに挑戦されているんですか?」


「そうですね。『電車の乗り方も知らない世間知らずのお嬢様が』と言われてしまうこともあるんですって。」


 ちょっと悪い話し方をしている彩音に再び沙織は驚かされます。彩音は笑っていましたが、言葉遣いも変えていきたいとは考えていました。


「たぶん、ソフィアは自分で気付かないうちに敵を増やしてしまっていたんだと思います。」


「えっ?……何のお話でしょうか?」


「いいえ、お気になさらず。何でもありませんわ。」


 沙織は記憶が戻っているわけではなさそうでした。ビアンカから引き継いでいたのは、彩音たちに対する憎しみの感情だけだったのです。


「……ですが、どうして私にそんなお話をされたんですか?」


「あっ……。実は以前、夢に彩音さんが出てきたことがあるんです。」


「私が、沙織さんの夢にですか?」


「はい。……髪の色が少し違っていたので、彩音さんではないような気もするんです。でも、やっぱり彩音さんだと思ってしまって。」


 沙織は、少し混乱気味で話をしていました。

 夢に出てきていたのは彩音ではなくソフィアです。それを分かっていなければ、夢の意味を理解することはできなくて当然でした。


「どんな夢だったのですか?」


「……はい。……このことをお話してしまえば、お友達としていられないかもしれないのですが……、お話しないといけない。……そんな風にも考えていたんです。」


「そんなことはありません、大丈夫です。お聞かせいただけませんか?」


 澪や悠花以外から前世のことを聞けるチャンスでした。彩音は怖さも感じていましたが、これからのことを考えるヒントになるはずです。


「……はい。」


 沙織は彩音と目を合わせることができず、俯いたまま話し始めました。


「彩音さん、彩音さんに似た方は手枷をされて歩いておりました。……大勢の人たちが見守っている中で、高い台の上に向かって歩いていたんです。」


「……手枷をされた私が、高い台にですか?」


「あの、台も手枷も木製で、風景も少し古い感じがしました。」


 彩音が思い出した処刑台の上に辿り着く前の景色のようでした。沙織は遠慮して『処刑台』とは言わないだけだったのです。

 少しだけ頭がクラクラとしましたが、彩音は深呼吸をして続きを聞きます。


「そして、その台に向かって歩いている方を見ていた私は、周囲の人たちと一緒に喜んでいたのです。夢の中の私は『これで苦労は報われた』と言って、笑っていたんです。」


 その話が前世で起こったことであれば、ビアンカの苦労が報われて、ソフィアが処刑台の上に立たされたことになります。

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