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#011

「そんな、情けないなんて言わないでください。彩音様が『三人で明るい未来を勝ち取ろう』と言ってくれたことが嬉しくて、やっていることなんですから。」


 彩音の弱気発言に悠花が反論をします。


「ありがとうございます。前向きに考えましょうと言ったのも、私でしたね。」


 二人に対して気になっていることがあり、そのことが少しだけ彩音を弱気にさせてしまいました。


「……ですが、ヒントになりそうな情報が得られないと、対策を考えることもできませんね。」


 会議として二人に来てもらいながら早くも停滞しそうな雰囲気を感じてしまい彩音が言いました。

 すると、澪が少しだけ申し訳なさそうに話し始めます。


「あのぅ、そのことで原点に立ち返ってみようと思うのですが、いかがでしょうか?」


「……原点……ですか?」


「はい。どうして、前世の記憶が戻ってきたのか?……というところを考えてみたいのです。」


「それは、『前世と現世につながりがある』から……という話しになっていたと思います。島崎さんの件もありますし。」


「ですが、14年間は全く意識することなく生活していたのに、あのタイミングで三人が思い出したのは何故なんでしょう?」


「……確かに、そうですわね。思い出すのであれば、もっと早くでも良かったはず……。どうしてなんでしょう?」


「前世と現世で、彩音様の14歳のお誕生日に共通する何かがあったんではないでしょうか?」


「……14歳の誕生日に共通していたこと……。」


 そこまで二人の会話を聞いていた悠花が、ポツリと呟きます。


「それが、『フラグ』かもしれません。」


 彩音と澪が声を揃えて『それは何ですの?』という質問をしました。


「あっ、はい。……物語の分岐点のようなもので、先の展開を決めてしまうような言葉や行動のことなんです。その『フラグ』が立ってしまったことで、前世の記憶が戻ってきたのかもしれません。」


 読書が趣味である悠花は、ジャンルを問わず様々な本を読んでいました。

 彩音と澪は先日行われたパーティーを思い出してみましたが、特に変わったことはありません。ましてや、前世で行われた14歳のパーティーを事細かに思い出せていない状況で共通項を探し当てることは不可能だと思われました。


 ですが、彩音は処刑台の上で『革命の女神』が呼びかけていた言葉を思い出します。


――『パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない?』……この女が無神経に口にした言葉です!


 彩音の頭の中に響きました。


――そうですわ。前世で、その言葉を発したのも14歳の誕生日だったと思い出していました。


 そして、先日行われた誕生日でも、


――パンがないようでしたら、お菓子を召し上がってください。


 前世と現世で共通する言葉でした。

 悠花が言っている『フラグ』を立ててしまったのは彩音だったのかもしれません。


「どうやら、私の言葉が原因で、こんな事態になってしまったみたいですわ。」


 彩音は思い出したことを隠さず二人に伝えることにしました。説明している彩音は俯いてしまい、声に力はありませんでした。


「……そうだったのですね。」


 悠花が納得したように言いました。


「……もしかすると、彩音様は私たちを『巻き込んでしまった』なんて考えているのではないですか?」


 澪が笑顔で彩音に問いかけました。図星をつかれてしまった彩音は返事をすることもできません。


「そんなことは絶対にありませんわ。」


 澪の言葉に、悠花も笑顔で頷いていました。


「澪さんも、私も、前世で彩音様お一人を処刑台に上がらせてしまったことがことが悔しいんです。……ですから、今回は、明るく楽しく三人で問題解決なんです!」


 彩音は嬉しくて泣きそうになってしまいました。ずっと一緒にいたのに、こんな風に話をする機会がなかったのです。


「……そうでしたわね。……これはチャンスなんです。きっかけになった言葉が分かったんですから、一歩前進ですわ!」


 涙を振り払うように、彩音は立ち上がって声を上げました。

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