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#109

「澪さん、悠花さん、今週の土曜日は空いておりますか?」


 地域清掃が成功したことに多少の盛り上がりを見せていた教室で、彩音が二人の予定を質問しました。


「ええ、もちろん問題ございません。」


「はい。私も大丈夫ですわ。……何か、あったのですか?」


「昨晩、楓さんからお電話がありまして、勉強会をしたいとご提案があったのです。」


 澪と悠花は驚いて顔を見合わせました。彩音は何気なく言っていますが、勉強会を実施することになってしまったのです。


 聖ユトゥルナ女学園は中高一貫なので、彩音たちの勉強はかなり進んでいます。そして、この三人は常に成績上位になっているので、楓が勉強を教える立場になることに不安があります。


「進学先の相談に乗ってくださるだけではないのですか?」


「はい。それもありますが、進学先を決めるには今の学力を確認する必要もあるみたいなんです。」


「楓さん、が行ってくれるんですか?」


「ええ、ご友人の方もご一緒らしいので、図書館で待ち合わせにしております。」


 彩音は、その辺りのことを全く疑いを持っていませんでした。

 それでも、楓が『彩音の学力を確認する』という提案をしてきていることは、澪と悠花には納得できなかったのです。楓の知識や判断力は二人も理解していましたが、学力に関しては別問題でした。


「おはようございます。何をご相談されているんですか?」


 そんな時、千和・渉美・沙織の三人が彩音たちの教室にやって来ました。彩音は澪と悠花に話したことを、そのまま三人にも教えます。


「えっ?楓さんが教えてくださる勉強会でしたら、私も興味があります。」


 ここで意外な反応を示したのは千和でした。理事長の企みの件はありましたが、この場で成績が一番良いのは千和なのです。


「千和さんも、ご興味があるのですか?」


「はい。……楓さんの学校に全国模試で上位だった方がいらっしゃるのですが、久坂さんのお話では、その方よりも楓さんの方が勉強が出来るみたいなんです。」


「えっ!?それって、千和さんよりも成績が良いことになるんですか?」


「おそらくは……、と言うか、間違いないと思います。」


 千和が言うのであれば、澪と悠花は黙って敗北を認めることにしました。そこまでの情報を含めて浩太郎は知っていたことになります。

 そして、この場にいる6人が土曜日に参加することになってしまいました。


 その日の夜、彩音は楓にも人数が増えたことを連絡しましたが、


『まぁ、予想通りだよ。そうなることは分かってたから、大丈夫だ。……ただ、今回は車で送ってもらってくれよ。』


 と、事もなげに返事がありました。



□□□□□□□□



「こいつは、一応、俺の友達ってことになるのかな。」


「一応って、お前。……でも、本当に知り合いだったんだな。」


 楓たちは図書館の前で待っていましたが、高級車2台から降りてきた彩音たちを見て楓の友達は唖然としていました。


「九条彩音です。本日は、私たちのためにお時間を作っていただきまして、ありがとうございます。」


「あっ、やっぱり、わたくしなんだ。……いえ、こちらこそ、よろしくお願いします。村瀬智哉です。」


 驚いてはいましたが、村瀬は丁寧な挨拶を返しました。楓より少しだけ身長が高く、メガネをかけたインテリタイプでした。それでも楓の友人だけあって、気取った態度はありません。


 もしかすると、久坂が一緒かもしれないと思っていた彩音は少しだけ安心してしまいます。

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