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#108

「ええ、これで皆が拾い集めたゴミをまとめれば終了になります。……お待たせしてしまって、申し訳ございませんでした。」


「いや、来てよかった。」


 楓は普段通りにも見えて、いつもとは違う険しさが感じられました。そして、『来てよかった』の意味も気にはなります。


「今日の企画は2年生だったよな?」


「えっ!?はい。発案者は2年生の柴田美鈴さんです。2年生で相談して決まったことを、沙織さんが実施出来るように調整したと聞いております。……それが何かございましたか?」


「ちょっと聞いてみたかっただけだよ。……何でもない。」


 彩音は澪や悠花を見ましたが、二人も楓の態度に首を傾げています。ただ、楓が何でもないと言っている以上、その先を聞くことは出来ませんでした。



「なぁ、九条さんたちが外部受験する意思は変わっていないんだよな?」


「もちろん、そのつもりでおります。あれから理事長とお会いすることは出来ていませんが、担任の先生はご存じのようでした。……まだ、他の生徒には内緒にするようにとも。」


「だろうな。学校側も多少の対策はしておかないと混乱して、収集がつかなくなる。」


「また邪魔されるということですか?」


 澪と悠花も気になっているらしく、楓に質問しました。話題が唐突に変わっていく中で必死に頭を働かせています。

 また何かあるのなら、二人も行動して彩音を守らなければなりませんでした。


「それはないだろ?社長が理事長の弱味を握っているっぽいから、ここで九条さんの邪魔なんか出来るわけないよ。」


「それでは、どんな対策を考えているのでしょうか?」


「うーん。時間稼ぎくらいかな?……意外に九条さんは人気があるみたいだから、追従する生徒が出ることを防ぎたいんじゃないかな。」


 すると、楓は澪と悠花から睨まれてしまい、『意外に、ではありませんわ。』と怒られていました。

 彩音に追従することを決意している二人に聞かせることではありませんでした。学園内の彩音人気を誰よりも喜んでいる二人だったのです。


「……まぁ、それはともかく。……どこに行きたいかとか決めたのか?」


 三人はお互いの顔を見て、楓に困り顔を向けました。

 困り顔の紅葉が楓に助けを求めると、『しょうがないな。』となる流れを学習した結果となります。言葉にして要求するよりも、この方法が簡単であると皆が理解しています。


「ハァ、しょうがない。俺も、高校のことは何も分からないから、ちょっと考えて連絡するよ。」


「はい。ありがとうございます。」


 妙な態度だった直後に高校の話。唐突な話題の切替えに違和感はありましたが、彩音は楓が意味なく話をしているとは考えていませんでした。


 彩音は周囲を見回して、楓が何に気が付いたのかを探そうとしました。開始した時は生徒だけでしたが、今は近隣の住人が混ざって片付け作業をしています。


――あれ?……あの人は。


 離れたところに場違いなスーツ姿の男性を発見しました。


――理事長とご一緒だった、川島さんという方ですわ。


 理事長が不在でも川島だけが来ている状況でしたが、川島が沙織と話している姿は見ていませんでした。生徒会に協力するために来ているわけではなさそうでした。


「アイツは気にしなくていい。」


 彩音が見ている方向に気が付いた楓が、彩音だけに聞こえるような小声で静かに言いました。

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