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4.昼食


 もぐもぐ、じー。もぐもぐ、ちら。じー、パクっ。


「何かしたのか?」

「いや……」


 隣の席で美少女達に囲まれている雪野が、時折こちらに目を向け何か言いたげな表情をしている。周りの美少女達もその様子に気づいており、怪訝けげんそうな顔で俺と雪野を交互に見ている。さすがに、この程度では威嚇いかくより上の行為にはならないようだ。


 田中の問いに唐揚げを口に運びつつ応えると、四宮が行動に出た。


「ちょっ、四宮!?」

「雪野君も一緒に食べた~い? 今なら~東西南(きたなし)の唐揚げ二個をつける~よ?」


 雪野を誘ったのである。雪野は一瞬、虚をつかれたように呆け、目を輝かせて大きくうなずく。巨大人型ロボを目にした少年のようだ。


「お、お前! なんてことを!」

「おもしろそうだ~から」

「ドンマイ」

「お前らぁぁぁぁああ!?」


 絶対にこの状況楽しんでるよね、こいつら!? 俺が困るのがそんなにおもしろいのか、こん畜生!


「し……東西南くん、本当にから揚げもらっていいの?」


 椅子を少しずらして近づけて来た雪野が、少し噛みながらおずおずとそう口にする。ヒロイン達を怒らせないために、断るという選択肢はない。更に、ちらちらと雪野の視線が俺の弁当箱に吸い寄せられていて。それを見れば、断ると良心が痛むことは分かりきっている。


「いいよ。はい」

「ありがとう!」


 ……さらば、唐揚げ。また会おう。


「ん~~! おいしいっ!」

「おばさんが喜ぶよ」


 その無垢な笑顔を前に、ヒロイン達のことを考えるのも馬鹿らしくなり、素で応えてしまう。俺の言葉に、雪野が不思議そうに顔を傾ける。


「あ、実家がちょっと遠くて、従兄いとこの家から通ってるんだよ」

「へー、そうなんだ」


 雪野はうなずくと食事を再開した。一口食べるたび、頬を緩める。本当においしそうに食べる。見ているだけで気が安らぐ。これが男だと信じられない。ずっとでていたい。


 ──って、何考えてんだ。そんなことを考える暇があるなら、対処しないと。周りが怖いことになってんぞ。誰だ、(雪野の)ヒロイン達のことを考えるのも馬鹿らしいとか言ってるバカ野郎。俺だよ!?


「……………雪野ちゃん……うれし、そう……?」


 そんなこんなで心中で叫び声を上げていると、雪野が嫌がっていないため手を出せない美少女達の一人、浜村はまむら紫音しおんさんが発言する。いつも眠そうに目をつむり、色素の薄い髪と合わさって、触れてはいけない神聖なオーラを醸し出している少女だ。この子は比較的おとなしい子で、他のメインヒロイン二人が警戒するように俺を睨むのに対し、ぼーっとして、ぼんやりと虚空を見つめていた。……これを人は不思議ちゃんと言う。


「ふぇ? そ、そう?」


 突然の言葉に慌てふためく雪野。食べ物で頬をぱんぱんにしながらおろおろする様子は、リスみたいで可愛いかった。


「はぁ……、確かにつゆちゃんは喜んでますし、これまでの東西南さんの行動は比較的真面目ですから一応安心できますか」

「うんうん、つゆのんの意思をねじ曲げるのはよくないもんね」


 その言葉に続くように、浜村の隣で警戒するように目を細めていた二人が笑顔で言う。

 どうやら俺は二人のことを勘違いしていたようだ。周りで事の成り行きを見守る──というか、俺を嫉妬百%の目で刺し殺しに来ている奴らとは違い、人のことを尊重できる立派な人達みたいだ。


「それでは、田中さんと四宮さん、それに東西南さん」


 黒髪ロングのザ・正統派美人が、澄んだ目で俺らを見回しながら言葉を綴る。山を流れる小さな清流のような声は、いつまでも聞いていたいという思いを人に抱かせる。その声の主は、クラス委員長を務める稲村いなむら美月みつきさん。品行方正を地で行くその姿は敵を作りやすい反面、多くの人達から尊敬の念を抱かれている。成績では常に田中の次をキープしている上に、運動もできるらしい。正に文武両道。


「私達も昼食に混ざってよろしいでしょうか?」

「お~け~、お~け~。それでい~いよね?」

「もちろん」


 田中と四宮により、俺の意思は聞かれる前に、雪野率いるヒロインズとの昼飯が決定した。まあ、俺も断るつもりはないのだが。


 ここでこの三人と繋がりを作れば、周りの奴らも下手に手を出せなくなる、と願いたい。どこにでもバカというのはいるもんで、もちろん雪野の信者達の中にも存在する。そういう奴のことを俗に、狂信者(頭イッてる奴ら)と言う。ここ、テストに出すよ。覚えておくように。


 閑話休題。


 まあとにかく、自分の安全を考えればこの三人と仲良くするのが妥当だろうということだ。


「それじゃ、食べよっ♪」


 嬉しそうにはにかみ、楜沢くるみさわ胡桃くるみが言う。鞄から弁当箱を次々に取り出し、雪野の前に積んでいく。茶髪をポニーテールにまとめた明るい少女で、スポーツに力を入れている我が校の陸上部のエース。全国区に軽々と参戦できる程の脚力、体力、瞬発力、etc……. それは才能かと思いきや、本人の血の滲むような努力が結果になっているとのこと。『アスリートは変態なぐらいがちょうどいいんだよっ。実際アタシはMだしね! だから努力はご褒美であって、苦痛じゃないんだよっ!』とは本人談。


「うわぁ、まだ出るの……」


 鼻歌混じりに弁当を取り出す楜沢さんを見て、驚きを通り越して呆れてしまう。目算だが、重箱四つ分ぐらいの昼飯が入るであろう弁当箱の数。しかも、それらのほとんどが雪野の前に並べられるのだ。どう見ても小柄な雪野の腹に入る量じゃない。


「成長期の胃を甘くみない方がいいですよ? 異次元に繋がっているそうですから」


 俺の呟きを拾った稲村さんが応えてくれる。


「あと、あの鞄はドラエもんの四次元ポケ○トと同じ仕組みだそうです。紫音さんが貸しているのですよ、あの量の弁当を持って来ますから。ここだけの話、紫音さんはあのような不思議な道具をいくつも所持しているそうですよ」


 この話で一章の主要な人物は大体登場しました。人物の紹介文が長くてすみません。m(_ _)m


 ※ツインヒロインです!

 ※ヒロインは雪野ちゃんとカラスの二人です!

 

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