08 いっぱい食べる君が好き〜大きな一口〜♪
文体を少し変えました。これからもちょくちょく変えていきます。
フフフ、アハハハハハ!やあ、諸君。俺の名前は草野逹見。これから陽キャのリア充になる男だ。よく覚えておきたまえ。え? どういう意味かって? フッ、そのままの意味だよ。そう、俺はこれから東道夏目という美少女と文化祭を一緒に回るのさ!しかも、これは東道から誘われたのだ!え? この間デートしたから今更だろって? チッチッチッ、違うんだよ、寧ろそこが大事なんだよ。よく考えてもみろ。この間デートした時、誘ったのは東道からだ。今回の文化祭も東道から。さらに、東道は転校初日から科学部にやってきた。そして、東道は最初の頃は俺と話すだけで他の人よりもどこか緊張しているようだった。ここから導き出される答えは、ずばり!転校初日に俺に一目惚れしたということさ!!フフッ、自惚れと笑いたければ笑うがいいさ。だかな、お前たちのような根暗陰キャがどれだけ言ったところで東道が俺に惚れているという事実は変わらないんだよ!アーハッハッハッハ!!
…………………………………………………………………………………………………………………………何だ今のは。
今のは俺じゃない、絶対に俺じゃない。あんな気持ち悪いのが俺なわけあるか。……本当に違うよな……? いや、うん、違うはず。あれじゃまるで二重人格みたいじゃないか。……あれ、正式名称は解離性同一性障害だっけ? まあ、どっちでもいいけど。
「準備できたよ」
考え事をしていたところに準備室から出てきた東道が声をかけてくる。
「おう。じゃあ何処に行く?」
「う〜ん……」
東道は俺の手の上で開いている文化祭のパンフレットを覗き込むように眺めてくる。
あ………あぁ^〜髪からいい匂いがするんじゃぁ^〜。……って、ダメだ。これじゃ完全に変態だ。
「草野君はどこか行きたい所はない?」
「何もありません!」
「う、うん。そう?」
「……あ、わ、悪い。ちょっとぼーっとしてた。えっと、行きたい所だよな」
やっべ、条件反射で変なことを言っちまった。気持ちわるがられてないから不安だ……
「……うーん」
ぼーっとしていたことを反省して、今度はしっかりとパンフレットを見て考える。
よく見るといろいろあるもんだな、と感心するくらいにはいろいろある。
「俺は特にはないかな〜……」
「ならさ、私、おやつ食べたいんだよね」
「あー、おやつか。どこ行く?」
この文化祭の出し物の7割は飲食系だ。だから、おやつと一言に言っても、どこに食べに行くかで変わってくる。流石に飲食系の出し物の全てを回って、全てを飲み食いするのは無理だ。
「うーん、とりあえず、一番近いのに行こう」
「え? ……わかった」
一番近いやつ? ちゃんと見て決めなくていいのか?
と、心配した俺をよそに東道は待ち切れないとばかりに歩き始めた。
…………で、一つ気付いたことがある。それは──、
「あ、あっちのも美味しそうだね」
「あ、ああ。そうだな」
そう言って、東道が指を差したのはアメリカンドッグ屋だった。
「買ってくるね。草野君もいる?」
「いや、いい……」
「じゃあ行ってくる」
そう言って、東道は店に小走りで駆けていく。
ヤヴァイ、あいつはヤヴァイ。マジでヤヴァイ。
……まあ、その、何がヤヴァイのかと言うと、あれで12品目なのだ。……もう一度、わかりやすく言おう。東道はさっきからずっと食べっぱなしで、あのアメリカンドッグが12品目なのだ。しかも、さっき四人で昼飯を食べた後なのにも関わらず、東道はおやつとは呼び難い量を食べていた。というか、あれは到底俺の知っているおやつでは無い。その範疇をとっくに超えている。
最初は俺も一緒に食べていた。純粋に味が気になったし、あわよくば東道と違う味を選んでお互いのものを交換する。という恋人的なノリのことをできればいいな。と、そんな邪な期待をしていた。だが、そんなものはすぐに砕け散った。そんな暇もなく、東道は次へ次へと食べていき、気が付けばその品数は二桁を迎えていた。
……だが、問題はそれだけではない。一品ひと品の数が多すぎる。これは盛っているのではなくて、本当に多すぎる。1パック8コ入りのたこ焼きを5パック買ってきたときは流石の俺も顔が引きつった。
「お待たせ」
「おう……」
戻ってきた東道が持っていたビニール袋の中には1パック2本入りのアメリカンドッグが8パック入っていた。
……慣れた、流石にもう慣れたぞ。というか、今までに比べれば少ない方である。もしかして、限界が近いのか……?そうだとありがたいけど……
なんて、そんなことを思っていた時代が俺にもありましたよ。ハハ……。
あの後、校舎内の全ての飲食系を回り、その全てを平らげた東道は校庭に広がる出店に目をつけ、見事食べ切ってみせた。文化祭の飲食系の出し物全制覇である。
今はベンチに座って、お腹の中の空き具合が少し回復した俺は最後くらい付き合おうと思ってかき氷を一緒に食べているところだ。
あ、もちろん東道だけ特Lサイズで。
「ごめんね。何か、振り回したみたいになっちゃって」
急に謝ってきた。
そういう感じで来られると困るんだよなぁ……
「別に、そんなことはないよ。実際、楽しかったし」
「……本当?」
少し不安そうな顔で聞いてくる東道。
あ、その口元隠して上目遣いしてくるの可愛い。
「ホントホント。それに、振り回されるのは慣れっこだよ」
頭に浮かんでくるのはいつも何かとからかってくる後輩の姿。誰のせいかは言わずもがなである。
「うん、そっか。なら良かった」
安心した顔も可愛かった。
……あれ、ちょっと待て。俺、さっきからずっと可愛いしか言ってなくね? ……まいっか。可愛いし。
「にしても本当によく食べたな。あんな量」
「あはは……」
そこで、俺は一つ疑問に思ったことがあったので、そのまま訊いてみる。
「なあ、東道さ。いつも弁当はそんなに凄い量じゃなかったと思うんだけど、家に帰ってから食ってるのか?」
東道の弁当の量は俺と大して変わらない。だから、いつもは『よく食べるなー』としか思ってなくて、あまり気に留めてなかった。
「ううん。そうじゃなくて、私、1ヶ月に一回くらいの頻度でこうなるの」
「1ヶ月に一回? 日付が決まってる訳じゃなくて?」
「そうだったらもうちょっと楽なんだけどね」
「……それはまた、特異な体質なんだな」
「あはは、まあね」
と、東道は少し自虐の混ざった笑みを浮かべる。
「ふーん。でも、東道自身はどうなんだ?」
「え?」
「その、なんて言うか、東道自身は食事っていう行為をどう思ってるのかなって。少なくとも、俺には凄く幸せそうに見えたけど」
「……」
あ、あれ? 東道が黙り込んじゃったぞ? 流石に今のは良くなかった? あ、もしかして、体質のせいで食事が嫌いとか? あー、そうだとしたら申しわけ──
「好きだよ」
「へ?」
東道は見たことのない笑顔で、そう言ってみせた。
「もしかしたら、食事が好きすぎて、こんな体質になっちゃったのかも」
と、今度は普通に笑った。
「はは、そうだったら面白いな」
……あー、やばいな。今のは刺さった。あの笑顔は反則だろ……
そう思えるくらいには、綺麗な笑顔だった。
「あ、草野君!もうこんな時間だよ!」
かき氷を食べ終わり、二人で駄弁っていたら東道が急に焦り出したので俺も東道が見ていた時計を見てみた。
現在時刻、午後02時57分。……57分!?
「うわ、まじか!?」
ガタッとベンチを勢いよく立ち上がると、俺たちはかき氷の容器とプラスチックのスプーンをゴミ箱に放り投げ、人混みを掻き分けながら全力で物理室に向かった。
「もう!何やってたんですか!」
「「ごめんなさい」」
PS:遅刻しました/(^o^)\
ところで、最近の若者はこのタイトルの元ネタがわからないらしいんですが、逆に俺はなぜ知ってるんでしょうか……?世代的には少し違うはずなんですが。自分で自分が不思議でしょうがないです。




