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真っ直ぐ道を進んでいくと、RPGゲームに出てきそうな街が姿を現した。
煉瓦の建物に石畳の道路。
道路の脇では木造の露店が果物などの食物や小物を売っている。
その風景の中を、これまたRPG風な装いをした人々が行き交っていた。
改めて自分の格好を見てみると、白色無地のTシャツにジーパン、しまむ○にありそうなベルトには百均っぽい剣を引っ掛けている。
貧乏な劇団の衣装のような出で立ちだ。勇者ヨシ○コでもこんな格好はしないはず。
「そうだ、味噌を買わないと」
女神様との約束を守るべく、味噌を購入しようと露店を巡る。
お願いはされたものの、女神様は傍にいないし、どうやって味噌汁を献上するのか分からないけど、多分仏壇でも作って、お供えすればいいだろう。
「あの」
「なんだい?」
「味噌って売ってないんですか?」
何店舗か確認したが、大豆や塩、麹などの味噌の材料はあるにもかかわらず、肝心の味噌が見当たらない。
調味料を売っていた露店にも、ケチャップやソースはあったが、味噌は店先に出てないようだった。
不思議に思い、露店のおじさんに質問する。
「ミソ?ミソとはなんだ?」
「え?調味料の中で群を抜いて美味しい、毎日の食卓に欠かせない、あの味噌のことですけど…?」
「ふぅん?わしは聞いたこともないがなあ。おい、お前さんは知ってるか?」
おじさんが、隣の露店の若い男性に聞く。
しかし、男性も首を横に振り、「俺も聞いたことないな」と答えた。
どうやらこの世界に味噌は存在しないらしい。
(一から味噌を作るか。発酵させるまで時間はかかってしまうが仕方ない)
「大豆と塩と麹はいくらなんだ?」
「シオーとコージーは大体100グラム100Gで、ダイズーは100グラム1万Gだな」
ジーパンのポケットに入っていた金貨を取り出す。
100Gと書かれた金貨が5枚。
どうあがいても大豆は買えそうにない。
「大豆がどうしてそんなに高いんだ?」
「ダイズーは収穫時期が限られてるし、育てるのがとてつもなく難しいのに対して、いろんな料理に使われるくらい人気の食材で需要が高いんだよ。買っていくのはもっぱら金持ち様方の高級品だな」
大豆が高級品とは…。
これはなかなか味噌汁作りも手強いな。
「お兄さん、その服、新入りだろ?」
「あぁ、そうだが」
「なら、左手のあの大きな建物、あそこは役場だから、そこで冒険者登録をするんだ。そうしたら、装備も一式貸してくれるし、役場に張り出されている依頼をこなせるようになる。依頼を無事成功させれば、お金も貰える」
「そうなのか。教えてくれてありがとう」
「けど、まあ、大豆を買えるくらい稼ぐには、レベル上げも考えると相当時間がかかるとは思うけどな」
頑張れよ、という男性の言葉に頷き、露店を後にする。
役場に向かおうと石畳の道路を歩いていた時。
「この出来損ないが!!!」
大きな怒鳴り声が街中に響いた。