2
「おはようございます〜」
目を覚ますと、大きな山の谷間から女性の顔が見えた。
後頭部に柔らかい感触が伝わる。
どうやら、見知らぬ女性に膝枕をされているようだ。
「あら、もう少し私の膝の上でお休みになられても良かったですのに」
ここはどこか現状を把握するために辺りを見回しながら体を起こす。
膝枕をしてくれた女性は透けるような金色の長い髪を揺らし、綺麗な碧色の目を細めてほほ笑む。
上も下も右も左も見渡す限りの真っ白な空間。
物は何もなく、在るのは自分と目の前の女性だけだ。
「…俺は死んだのか?」
「うふふっ、さすが私の見込んだ方。状況把握力が高くて助かりますわ。死を受け入れてくれない方も多いですのに」
女性は俺の左肩に両手を乗せ、俺の左半身に体を寄せる。
「ここはこの世とあの世の狭間、そして私は、いわゆる"女神様"のようなものです。あなたの魂に刻まれた素質をこのまま無に還してしまうのは勿体ないと思いまして、私が引き寄せさせていただきました」
「俺はどうなるんだ?」
「あなたには異世界に転生してもらいます」
…異世界転生。
漫画やアニメで見たことはあるが、本当に実在するんだな。
「転生後、その、お願いがありまして」
「ん?なんだ?」
「私に毎日お味噌汁を作っていただけませんか?毎日じゃなくても気が向いた時でも構いませんので」
「そんなことか。それくらい構わないが」
即答すると女神様は目を輝かせる。
「ありがとうございます!では、ささやかながら、お礼にステータスを上げておきますね!」
パチンと女神様が指を鳴らすと、体が光に包まれる。
「それでは第二の人生を楽しんでくださいませ」