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俺の名前は蘇威 巳園、19歳だ。
実家は味噌屋で両親は有名な味噌職人だ。
俺は幼少の頃から両親の味噌作りを手伝っていた。
そのおかげか、小学生の時には味噌作りのスキルは職人の域に達し、周りからその学習の速さに「神童」と呼ばれ、日本一の味噌職人になることを有望視されていた。
しかし、16歳の時、体育の授業で右手を痛め、味噌作りが出来なくなった。
それから何もやる気が起きなくなり、毎日が惰性で過ぎていく。
なんとなく入った大学も、食堂の味噌汁が不味くてどうでもよくなり、中退して引きこもりになってしまった。
夢も希望もなく、ただ来世に期待するだけ。
その日も、ただ無気力に、街のネオンとうっすらと見える星を見ながら、親に頼まれた味噌造りの材料を買って帰路を歩いていた。
突如、ドンっと街中に大きな音が響く。
同時に体に大きな衝撃が走った。
赤に染まる道路。
散らばる大豆。
遠のく意識。
俺は歩道に乗り上げたトラックに轢かれ、19歳という短い人生を終えた。