表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/69

進化と要因 Ⅰ

重たい……。

眠りから覚めてきた俺が感じたのはそれだった。

何故、そう感じたのかというと、何かが俺の上に乗っているのだ。

それが何なのか……ノワールだろうか? スイムだろうか?

いや、スイムにしては少し大きい……だが、ノワールよりも少し大きいというか……うん?

この感じ、人の様に思えるぞ?

俺は段々覚醒してきた意識でそれを確認すると、ゆっくりと目を覚ます。


「目を開けたら、知ってる天井でした……とかはないよな」


やっぱり、異世界に来たんだな……。

寝て起きたら、実はアレは夢でした、的なオチなのではないだろうかと一瞬でも考えてしまった。

まぁ、現実なんだと再確認できたし、次に確認すべきは……俺の上に乗っている何か。

意識がはっきりしてきたおかげでわかる……腹部に何かが丸まって乗っている。

しかも、腹に当たっている感触……手だ。

腕や足などを折り曲げて、丸まっているのがわかる。

ということは……メイか?

俺は隣のベッドで寝ているであろうメイの方へと視線を移す。

そこにメイの姿は……あった。

それはもう気持ちよさそうな顔で、未だに深い眠りにいるのだろうと伺えるくらいに。

いや、それよりも待て。

メイじゃないとすれば、今俺の腹の上に乗っているのは誰だ?

やだ、なんか怖くなってきた。

だって、魔王の城だし、変なのいても絶対おかしくないし。

だけど、確認しなければ、いつまでもこのままだし……。


「……よし!」


覚悟を決めた俺はかけ布団を掴み、ゆっくりと持ちあげていき、その中を確認する。

持ち上げたことによってできた隙間から差し込んだ光で、俺の腹の上に何がいるのか確認できた。

いうなら……小学生くらいの女の子。

それも低学年じゃないだろうかと思えるくらいの。

布団の隙間から差し込んだ光によって、見える綺麗な水色の髪。

そして、眠ってはいるが、可愛らしい顔立ちで、メイと同様美少女だとわかる。

そう、ここまでは問題ない……いや、俺の腹の上に知らない子が乗っている時点で問題ありなのだが。

一番の問題はもっと別にある。

そう、その問題というのは……その子は裸で俺の腹の上で丸まって眠っているのだ。

もう一度言おう……裸でだ!


「これまずくないですかね!?」


メイはともかく、カミオさんとかに見つかった時の反応が!

絶対勘違いされちゃうパターンだよ、コレ!?

誰かに見つかったら、ますます言い広められる案件だよ、コレ!?

周りからロリコン扱いされる未来しか見えないよ!

どこの誰かは知らんが、さっさと起きてもらって、服を着てもらわないと。

起こそうと、その少女に手を伸ばした時だ。

扉をノックする音が聞こえてくる。


『ユージさん、起きてますか?』


この声は……ルフェさんだ!?

最悪だ……カミオさんが来るかと思っていたが、まさかのルフェさん!?

いや、別にカミオさんでもやばいんだけどさ!

タイミング悪いというか、フラグ回収が早すぎる……!

このまま見つかってはまずい。


『アレ? まだ寝てるんでしょうか? 朝食の時間ですし、起こした方がいいですよね』


今、その優しさはいらないかなぁ!

非常にまずい……!


『それでは失礼します』

「あぁ、待ってください! 起きました! 起きましたんで、大丈夫です!」

『そうなんですか? それでは、中に入れてもらってもいいでしょうか? お話をしたくて、迎えに来ちゃったんです』


う~ん、確かに外で待たせるのは悪いかもしれないけど……中に入れてはダメだ!

これが見つかってはいけないのだ!


「き、着替えるんで、悪いですけど、外で待っていてくれると嬉しいです!」

『そ、そうですか。確かに男性の方が着替えるのに中で待つのは……アレ? 昨日、異世界から来たばかりのユージさんが着替えを持ってましたっけ?』


うぐっ……そこをツッコンじゃう?

なんでそんなとこに気付いちゃうの?


「え、えっと!」

『あの、お邪魔の様でしたら、先に行って待ってますので。食堂で』


あぁ! 明らかに声が落ち込んでる!

絶対、扉の向こうで、少ししょんぼりしているよ!

そのまま行かれて、リオンさんが理由を聞いたら……殺される!?

飄々としていた人だけど、絶対身内をどうこうとか言って、やられちゃう!


「ま、待ってください! 大丈夫です! 実は俺もルフェさんと話がしたかったんですよ!」

『ホントですか!』


あ、声が明るくなった。

昨日から思っていたが、ルフェさんは魔王の妹というにはかなり人当りが良い人だ。

コミュ力高そうな人だよな、この人。

さてと、もう諦めるしかないかな。

布団で隠そうとしても、不自然に膨らんだ布団になるし、俺が起き上がれないから、寝転んだまま出迎えるのもダメだよな。

まぁ、今も起き上がれず、寝転んだままなんだけどね。

大声を上げていたのに、周りは起きる気配はなし。

メイは余程疲れていたんだろうなとわかる。

ノワールとスイムは……床で眠っているだろうから、起き上がれない俺からすれば見えない。

いや、とりあえず、ルフェさんが入ってくる前にだな、理解を得てもらわないと!


「ユージさん……」

「あ……」


いつの間にかルフェさんが中に入ってきており、膨らむ布団を見て、何か驚いた様な顔をしている。

コレ終わったかな……と思ったが、まだいけると気付いた。

そう、布団が膨らんでいて、俺の上に何かがあるのはわかっているはずだ。

ここで誤魔化せば、大丈夫なんじゃないのか!?


「あの、ユージさん。その布団のふくらみは……?」

「あぁ、これはですね。にm「うみゅ~……」……」


俺が誤魔化そうとした時、腹の上に寝転がっていた子が起き上がり、布団が捲れる。

それによって、露わになる全裸の少女。

そして、固まる俺とルフェさん。

うん……異世界に来て、二日目。

社会的に死んだな、俺。

そんなことを知ってか知らずか……いや、知らずだな。

少女は眠たそうに目を擦り、俺の方を見ると、眠気が吹き飛んだのだろうか。

笑顔を浮かべて、俺に抱き着いてきた……What!?


「な、なに!? 何が起きてるんだ!?」

「うみゅ! うみゅみゅ!」


なんか、喋りかけてきてるんですけど!

できるなら、人間でも理解できる言葉で話してほしいかな!

いきなり抱き着かれてびっくりしている俺を少女は嬉しそうに抱き締め、俺の胸板に頬擦りをしてくる。

まさにその仕草は甘えているかの様な……って、待て。

ルフェさんを忘れちゃいけない!

視線をルフェさんへと移してみると、未だに驚愕の表情で固まっているのが見える。

終わったかな……。

さらば、異世界生活……。


「ま、魔人!? 魔族に進化したんですか!? スライムのハズのスイム・・・ちゃんが!?」

「そう、スイムに抱き着かれて……え!?」


待って! 今、ルフェさんなんて言った!?

俺に抱き着いている子がスイム!?


「え!? スイム!? 本当ですか!?」

「ハイ、間違いありません。この子から感じる魔力はスイムちゃんのです」


今、俺に抱き着いているのが魔族……魔人となったスイム?


「本当にスイム……なのか?」

「うみゅ! うみゅ!」


そうだよ! と言いたげに何度も首を縦に振る少女……もとい、スイム。

よくよく見れば、右胸より少し上……鎖骨に近い位置に当たる場所に俺と契約した証である紋章がある。

え……本当にスイム?


「スイム! お前、進化したのか!? しかも、魔人に!?」

「うみゅ!」

「まだ言葉は喋れない様だけど、スゲェ! やったな、スイムー!」

「うみゅー!」


スイムが魔人に、魔族になった嬉しさから思いっきり抱き締めると、スイムも嬉しそうな声を上げてくれる。

ついでに、頭も撫でてあげるのも忘れない。

嬉しい、二日目で、しかも! 昨日テイムしたばかりのスイムが魔人に進化するなんて!


「うぅん……? うるさいよ……」


眠たそうに目を擦りながら起き上がるメイ。

そして、ノワールの方からも、声が聞こえてきて、起きたのがわかる。

すると、更に驚いた様な顔をするルフェさん。

どうしたんだろうか? と思って、俺のベッドのすぐ近く、足元らへんで眠っているであろうノワールの方へと視線を向ける。

それによって、気付く。

ちょっと待て……ノワールの背中と耳の先端が微妙にベッドから見えるのだが。

おかしい……いくらブラックドックが元々大型犬くらいのサイズはあったと言っても、今俺が使っているベッドから考えると、その姿はベッドによって隠されて見えないはずなのだ。

だが、今見えている背中と耳の先っぽはどういうことだ?

そう思っているとノワールが移動をし始め、やがてベッドの横に来たことで姿を現す。

見覚えのある巨大な黒い犬。

口からは炎がチラチラと溢れており、目つきもブラックドックよりも少し鋭そうだ。

メイの次に襲われた魔物……そう、ヘルハウンドにそっくりなのだ。

まさか……まさかとは思うが。


【個体名:ノワール。黒妖犬ブラックドックから炎黒犬ヘルハウンドへの進化を確認しました】


マジですかい、ヘルプさん!

昨日今日で二体も進化するものなのか!?

それもスイムは魔人化したし!

スキルとかも増えてたりしないのかな!


「あの、ユージさん! これは一体どういうことでしょうか!?」

「どういうことというと?」

「この状況です! 昨日今日でテイムしたばかりの二匹が進化するなんてありえないんです! それも、スイムちゃんは魔人に……!」


と言われても、進化しているのだから、どういうことなのかと言われても、答えようがない。

でも、やっぱり一日だけで進化するなんて、あり得ないことなんだろうな。

特にスイムは魔人となっているのだから……。


「俺も何がなんだかさっぱりで……。やっぱり、一日で進化なんてありえないですよね……」

「当たり前です!」


ですよね……。

スイムが魔人に、ノワールはヘルハウンドへと進化したことに嬉しさを覚えてしまっていて、気にしない様にしていた。

育成ゲームでも、RPGでもそうだが、仲間を進化、強化するのにはそれなりに時間を費やすものだ。

だからこそ、昨日テイムしたばかりのスイムとノワールが進化するなどあり得ない。

ゲームだとチートか、もしくは改造でもしてんじゃないかとなるだろうな。

経験値的なもので魔物が進化するのかはわからないが、確かに戦闘をあまりしていないスイム、テイムしたばかりのノワールが進化するのはおかしい。


「うみゅ! うみゅみゅ!」


スイムは何か知っているのか、必死に伝えようと手を振って見せる。

その動作は少女の容姿と相まって可愛らしいのだが……全裸でやるのだけは勘弁してほしい。

思えば、メイが起きたわりには静かだな……?

メイの方を見てみると、どうやら二度寝へと入っていた様で、ベッドで幸せそうに眠っている。

アイツ、これだけ騒いでいても、二度寝できるとは……凄いな。

とりあえず、どうしたものか……。

何をするにしても……スイムの服が必要だよな。

いつまでも全裸っていうわけにもいかないし、目のやり場に困るし。


「ルフェさん、とりあえず服を貸してもらってもいいですか? スイムがこのままでいるわけにもいきませんし」

「あ、そ、そうですね。スイムちゃんも全裸のままですしね。スイムちゃんのための服を用意させますね! もちろん、それはあげます」

「え? 悪いですよ。貸してくれるだけで」

「いえ、いいんです。それに……この世界に来たばかりのユージさんはお金がないんですから、服は買えないでしょ?」


うっ……確かにそうだけど。

ルフェさんの痛いところの指摘に苦い顔を浮かべる。

ギルドで働き始めたとしても、すぐに服を買ってあげられるほどのお金を稼ぐなんて無理だろう。

それに貸してもらった服を傷つけるのもダメだよな。

それならお言葉に甘えて、服を貰った方がいいのかもしれない。


「それじゃ……お願いします」

「ハイ、お任せください。スライムの魔人なんてスイムちゃんが初めてですよ。どんな服がいいでしょうか」

「そうですか。スイムが初のスライムの魔人……え? スイムが初めて?」


ちょっと待って、どういうことだ?

魔物が進化することによって、魔人となり、魔族の仲間入りをするはずだ。

なら、キメラはいなかったとしても、スライムの魔人くらいは、いてもおかしくはないはずなのに。

だって、魔物なら……。


「ハイ、スライムで初めてスイムちゃんが魔人になったのは確かです。だって、スライムは『本来は魔人になることのない』種族ですから」



ルフェさんはそれだけ言うと、部屋から出て行ってしまった。

スライムは……本来は魔人になることのない種族?

なら、スイムはなぜ……いや、魔物なら魔人になれるものじゃなかったのか?

まだ、俺の知らない何かがあるのかもしれない。

俺はそう思えて仕方なかった。

最近、ちょっとタイトルというか、キメラ少女に出会いました、という部分を変えようかと悩んでいる日々の風狼龍です。

それではまた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ