『冬、いつかまた。』
冬、雪は恋をする。
空からヒラヒラと落ちてきて、森や村を白く包む雪は、恋をする。
雪が積もっていくように、その雪の心にも【恋】という名の想いが積もる。
雪は愛しい兎に話しかける。
「あなたはどうして白色なの?」と。
兎は答える。
「あなたに溶け込むためよ」
恋をした雪は、白色の兎に愛されたくて、必死で話しかける。楽しかったこと、嬉しかったこと、驚いたこと、自慢したいこと。自分をもっと知ってほしくて、たくさんたくさん話しかける。
だけど、白色の兎は気にせず飛び跳ねる。そんな兎は、ある日、雪に言った。
「なんで、あなたはそこにいるの? あなたが雪じゃなければよかったのに」
それを聞いた雪は、悲しみ、泣きながら去っていった。そして2度と兎の前に現れることはなかった。
その日から白色の兎も元気がなくなっていった。兎も、雪に恋をしていたのだ。
白く輝く雪の上で、同じ色をした兎は話していた。「僕はあなたにずっといて欲しかったのに…」と兎は悲しみ、泣いていた。
日が経つにつれ、兎の涙は川へと流れていった。雪もまた、川から海へと流れていってしまった。
その2人の想いが、いつか海で再開することを誰も知らない。
あなただから好きになったのに。……ずっと、冬のままなら良いのに。