『夏、見つめて。』
夏、向日葵は恋をする。
黄色い花を咲かせ、人を明るく元気にさせる向日葵は、恋をする。
好きな人を目で追いかけるように、その向日葵も【恋】という名の視線を送る。
向日葵は愛しい太陽に話しかける。
「あなたはどうして素敵なの?」と。
太陽は答える。
「あなたの姿を素敵に見せるためだよ」
恋をした向日葵は、素敵な太陽に自分だけを見て欲しくて、必死で話しかける。楽しかったこと、嬉しかったこと、驚いたこと、自慢したいこと。自分をもっと知ってほしくて、たくさんたくさん話しかける。
だけど、太陽はみんなを見てる。そんな太陽は、ある日、向日葵に言った。
「なんで、あなたはそこにいるの? 僕はあなたの隣にいたかった。これで最後だ」
それを聞いた向日葵は、悲しみ、泣きながら下を向いた。そして2度と太陽を見ることはなかった。
その日から地面の下の土竜も元気がなくなっていった。太陽のふりをした土竜も、向日葵に恋をしていたのだ。
太陽には届かない声を拾い、姿の見えない向日葵に恋をし、太陽のふりをした土竜は話す。「僕はあなたの隣に居たかっただけなのに…」と土竜は悲しみ、泣いていた。
日が経つにつれ、向日葵は上を向くことを忘れてしまった。土竜もまた、土の上の向日葵を見ようと思わなくなった。
その2人の光景を、太陽だけが見ていることを誰も知らない。
僕はあなたの好きな人にはなれないけど、あなたの好きな人より、あなたの側にいられるよ。…僕じゃ、ダメなのかな。