邪悪な神殿 勇気ある行動とだらしない行動
青白い光線が、銃口から放たれた。
唐突すぎる攻撃に、俺たちはとっさに床に這いつくばった。
「クエエエエエエエエ!」
異形の頭が近づいてきた。頭は山羊そっくりだが、なぜかクチバシがつきだしている。そのかぎ爪に、銃を握りしめている。再び、青白い光線!
「あうっ!」
デリラをかばったラハブが、左肩に手をやった。焦げた肩から、肉の焼ける臭いがする。
「魔法の銃だ。気をつけろ!」
苦しげな声で、ラハブが叫ぶ。
「いやっ、いやああ!」
デリラは、なにごとかわめきながら、【爆裂バーンアウト】を量産しまくっている。
俺の方は、すばしこさだけが身上なので、銃を向けられてもなんとかかわしていた。
「【ヒール】!」
パウロがラハブの肩を治癒する。青白い光線が交差する部屋のなか、俺たちは苦戦していた。
神殿の奥に行くにつれ、モンスターの攻撃は苛烈さを増している。アスリアはすでにじっとりと汗をにじませて、魔性星を砕いて飲んでいる。
「宝珠は最後までとっておけよ。あれを使うと、おまえの生命エネルギーが喰われる」
ラハブは、じっとりと汗がにじんでいた。ほとんどひとりで敵と戦っているのだから、当然と言えば当然だ。もう少し、俺に高い剣のスキルがあれば……! 夢解きチートと宝珠力しか頼れないのが悔しくてならない。
ビーっという音とともに、青白い光線が再び銃口から飛び出してきた。今度は、俺が標的だ。俺はすばやく床を転がった。
「向こうの扉に、突っ込め!」
俺が奥の扉をさすと、異形の連中は、クエエエエエエエエと叫びながら、ずん、ずんと近づいてきている。
「鈴木……義也よ……」
くぐもった声が、そのうちのリーダー格から聞こえてきた。
「鈴木……義也よ、どこにいる……」
なんだ? こいつら、俺を探して……?
なぜだ?
「鈴木義也は、ここにいる!」
いきなり、ラハブが立ち上がった。
「いいえ、あたしが鈴木義也よ!」
デリラも立ち上がる。
「呼んだかの?」
パウロも立ち上がった。
「バカッ、なにされるかわからないんだぞ!」
俺が声を荒げると、みんなは俺を見下ろした。
「すると、論理的には、こいつが鈴木義也か……」
リーダーは、ツカツカと近づいてきた。そして、【爆裂バーンアウト】を唱えようとするデリラに、銃柄を叩きつけて気絶させ、かえす銃身でラハブを吹っ飛ばした。
「やめなさい!」
アスリアが、立ち上がった。「なにをするというのです。目的がわたくしなら、そう言えばよろしいでしょう」
「いっしょに来てもらおう」
リーダーは、銃口を俺とアスリアに突きつけた。抵抗する間もなく、俺たちは異形の連中にひったてられた。
「ほかの連中は、消せ」
「―――やめろ、やめろーっ!」
俺は、右に左に必死になってあがいた。しかしリーダーは、俺の手の中から宝珠を奪い取って、クエエエエエエエエと勝利の笑いをあげた。
青白い光線。
そして、うぐっという声とともに、みなが―――ラハブが、デリラが、パウロが、横たわるのを見た。
「うわあアアアアアアアア!」
こんなときに宝珠があったら! しかし宝珠はリーダーに奪われている。俺はみぞおちにいっぱつ噛まされて、そのまま気絶してしまった。




