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夢の国を行く帆船    作者: 鈴宮とも子
禁断の木の実をめぐる争い―――呪わしい命たち
37/43

邪悪な神殿 勇気ある行動とだらしない行動

青白い光線が、銃口から放たれた。

 唐突すぎる攻撃に、俺たちはとっさに床に這いつくばった。

「クエエエエエエエエ!」

 異形の頭が近づいてきた。頭は山羊そっくりだが、なぜかクチバシがつきだしている。そのかぎ爪に、銃を握りしめている。再び、青白い光線!

「あうっ!」

 デリラをかばったラハブが、左肩に手をやった。焦げた肩から、肉の焼ける臭いがする。

「魔法の銃だ。気をつけろ!」

 苦しげな声で、ラハブが叫ぶ。

「いやっ、いやああ!」

 デリラは、なにごとかわめきながら、【爆裂バーンアウト】を量産しまくっている。

 俺の方は、すばしこさだけが身上なので、銃を向けられてもなんとかかわしていた。

「【ヒール】!」

 パウロがラハブの肩を治癒する。青白い光線が交差する部屋のなか、俺たちは苦戦していた。

 神殿の奥に行くにつれ、モンスターの攻撃は苛烈さを増している。アスリアはすでにじっとりと汗をにじませて、魔性星を砕いて飲んでいる。

「宝珠は最後までとっておけよ。あれを使うと、おまえの生命エネルギーが喰われる」

 ラハブは、じっとりと汗がにじんでいた。ほとんどひとりで敵と戦っているのだから、当然と言えば当然だ。もう少し、俺に高い剣のスキルがあれば……! 夢解きチートと宝珠力しか頼れないのが悔しくてならない。

 ビーっという音とともに、青白い光線が再び銃口から飛び出してきた。今度は、俺が標的だ。俺はすばやく床を転がった。

「向こうの扉に、突っ込め!」

 俺が奥の扉をさすと、異形の連中は、クエエエエエエエエと叫びながら、ずん、ずんと近づいてきている。

「鈴木……義也よ……」

 くぐもった声が、そのうちのリーダー格から聞こえてきた。

「鈴木……義也よ、どこにいる……」

 なんだ? こいつら、俺を探して……?

 なぜだ?

「鈴木義也は、ここにいる!」

 いきなり、ラハブが立ち上がった。

「いいえ、あたしが鈴木義也よ!」

 デリラも立ち上がる。

「呼んだかの?」

 パウロも立ち上がった。

「バカッ、なにされるかわからないんだぞ!」

 俺が声を荒げると、みんなは俺を見下ろした。

「すると、論理的には、こいつが鈴木義也か……」

 リーダーは、ツカツカと近づいてきた。そして、【爆裂バーンアウト】を唱えようとするデリラに、銃柄を叩きつけて気絶させ、かえす銃身でラハブを吹っ飛ばした。

「やめなさい!」

 アスリアが、立ち上がった。「なにをするというのです。目的がわたくしなら、そう言えばよろしいでしょう」

「いっしょに来てもらおう」

 リーダーは、銃口を俺とアスリアに突きつけた。抵抗する間もなく、俺たちは異形の連中にひったてられた。

「ほかの連中は、消せ」

「―――やめろ、やめろーっ!」

 俺は、右に左に必死になってあがいた。しかしリーダーは、俺の手の中から宝珠を奪い取って、クエエエエエエエエと勝利の笑いをあげた。

 青白い光線。

 そして、うぐっという声とともに、みなが―――ラハブが、デリラが、パウロが、横たわるのを見た。

「うわあアアアアアアアア!」

 こんなときに宝珠があったら! しかし宝珠はリーダーに奪われている。俺はみぞおちにいっぱつ噛まされて、そのまま気絶してしまった。


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