表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢の国を行く帆船    作者: 鈴宮とも子
禁断の木の実をめぐる争い―――呪わしい命たち
24/43

戦い終わって日が暮れて

とりあえず、めちゃめちゃになった教会内を片付けることになった。

 死霊が触ったところは、長いすと言わず祭壇と言わず、べっとりとした気色悪いなにかが張り付いていたのである。


「ったく、死霊ってのは、ゾンビの一種なのかよ。こんなにもよごしやがって。食われたらゾンビ化するのかよ」

 俺が愚痴りながら雑巾を絞っていると、

「あの頭をもぎ取って土に埋葬することで、増殖するんだって! 叔父さんから聞きましたよ?」

 デリラが、博識なところを見せる。

 俺はゾッとして身体を震わせた。「あんなヤツの頭を埋葬なんて、考えられない」


「モンスターの風習として、お互いの頭を埋葬するってのは、アリかもな」

 ラハブは首をコキコキ言わせる。

「あのうさぎ人間には、たしかに知性のようなものがあるように感じられた」

「ウォーターメロンマンにも、パウロを誘惑する知恵があったっけな」


 西方教会の最高責任者まで屈服させる狡猾さを持っているのだ。もしかして、ペテロも、なにかワナにかけられているかもしれない。聖水が効かなかったのは、ペテロのせいなのでは?

 いや、アヤシイと言えばエリヤもアヤシイ。動機がわからないペテロと違って、エリヤはサウル国王の上級親衛隊長、という地位がある。煙ったいアスリアの周囲を崩すために、魔物と通じて俺たちの命を狙った……?


 しかし、そんなわかりやすい図式なんだろうか?

 俺は、頭を振った。

 エリヤがサウル国王の命をうけてアスリアを倒す、というのならわかる。だが、俺たちはただの下っ端だ。手を下すなら、まえにウォーターメロンマンがやったように、直接アスリアを倒した方が手っ取り早い。なぜ、俺たちを狙うのか。


 それほど、聖剣ジェマイルが怖いのか?

 たかが剣ひとふりが、そんなに恐ろしいのか?

 邪神ブラークルとは、どんなやつなんだ?

 よくわからん!

 ひとつ言えることは、また死霊が現れるときまでに、宝珠がなぜ反応しなかったのか、原因を追及しなければならないってことだ。いつまでもデリラに頼っていたら、彼女だって魔力を消費しすぎて倒れてしまう。今だって、デリラの額は汗にまみれ、服はぐっしょりになっている。胸の膨らみがちょっとエロい。


 いやいや。いまそれどころじゃないんだ。

 デリラがイマイチ、よくわからん性格なのも困ったものだが、脇道にそれがちな俺の集中力のなさはどうよ。

 少々、くたびれたので俺もトイレに行くことにした。

 俺が部屋を出ると、入れ違いにエリヤが入ってきた。


「ラハブ。おまえはアスリア王女と親しいそうだな。俺様からの手紙も、伝書鳩につけてくれ」

 ん? 上級親衛隊が、アスリア王女にどんな用があるってんだ?

 振り返ると、エリヤはなにやら、陰険な目でラハブを見守っていた。

 ペテロとは正反対の目つきだ。

 こいつは、警戒した方がいいかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ