空飛ぶ船が巨大化した!
帆船は空を飛んでいたのだ。キラキラ波の光る大海原が下の方に見える。それだけでも非常識なのに、船室から声が飛んできた。
「何者だ! このギデオン号が、王女アスリアのものだと知っての侵入か!」
小さな女の子の声。振り返ると、そこに美しい赤毛のゴスロリ少女がいた。目は青く、肌は白く、手に剣を握っている。
俺は敵意のないことを示そうと、右手を上げた。
「は、はろー……」
「とらえろ!」
ゴスロリ少女が命じると同時に、少女兵士たちがどっと繰り出してきて、俺をつかまえて後ろ手に縛った。
「ちょっ、ちょっと待て、話を聞け!」
ゴスロリ少女は、敵意いっぱいの目で、俺をねめつける。
「問答無用!」
「俺は無実だ!」
精一杯叫んだ。少女はまなじりをつり上げる。
「きさま、どこからきた」
「―――空の窓から来ました……」
さっきまであった空の隅を示すと、ゴスロリ少女は怒りで満面を朱に染めた。荒々しく剣を振ると、
「そうか、それならわたしは人魚から生まれたんだ。おい、こいつを船のこぎ手に使ってやるから、船の底へ連れて行け」
というわけで、俺はこのギデオン号のこぎ手に回されることになったのだった。