アスリアさまを救え!
事情を説明すると、パウロは考え込みながら、
「若者よ、エメット神は意味もなく消えたり現れたりしない。君はなにか、重要な手がかりを手に入れておるのじゃ」
「そ、そーなの?」
あの、宇宙文字を書き連ねたみたいな文字を思い起こし、俺はめまいを感じた。あんな中にヒントが隠されているとは、とても思えない。
「もっと精しく話してみなさい」
柴田先生そっくりの声としぐさで言われたら、抵抗する気にもなれなかった。俺はエメット神の言葉と俺の反応まで、正確に打ち明ける羽目になってしまった。
「ふーむ、行動様式……。その言葉には、聞き覚えがある」
パウロは、そうつぶやくと何気ない動作で『邪神ブラークルのモンスターたち』を手に取った。
「わしも、アスリア王女のことが気になっての。なんとかしたいと願っておった。ちょうど扉が現れておったので、ここに入ったというわけじゃ」
と言いながら、本をすごい勢いでめくっていく。
「ウォーターメロンマン……、ウの項目、208ページ」
つぶやくと、そのページをめくり、開いて読み上げる。
「ウォーターメロンマンは、スイカそっくりの姿に化ける。そしてそれを捕食しようとする人間に種を植え付け、繁殖する。種は肉に食い込み、三ヶ月以内に発芽。体液を吸い取り、成長すると、人間をミイラ化して完全に食い殺してしまう」
「うっ」
俺は吐き気がしてきた。アスリア……。アスリアの未来が、ひからびたミイラになるっていうのか。俺のせいで。
「なんとかなりませんか」
俺は、ポケットに手を突っ込んだ。パウロはこの行儀悪いしぐさをとがめるでもなかった。
「ウォーターメロンマンの故郷は、ブラークルの仲間であるジャミシテ国の温泉地エリコ。そこには、種を植え付けられた人間を救える、唯一の方法があると書いてあるのぉ」
「どんな方法ですか」
「エリコの温泉水じゃ」
本から顔を上げて、力強い口調でパウロは言った。
「それは種にとっては毒になるらしい。人間にはまったく害はないが、ひとくちその水を飲むと種はたちまち力を失い、きれいにはがれてしまうという」
「……それなら、エリコに向かいましょう!」
俺は、いてもたってもいられなくなって、足をぴょんぴょんさせてしまった。しかしパウロは頭を振った。
「無駄じゃ」
俺は足を止め、パウロに噛みついてしまった。
「なぜ!」
「エリコまでは、この魔法の船でも三ヶ月以上かかる。また、たとえ着いてもその先は我らの敵、ジャミシテ国なのじゃよ。あまつさえ、無事にそこに潜入できたとしても、ウォーターメロンマンの攻撃が待ち構えておるじゃろう。罠とわかっていて飛び込むことはないぞ」
パウロは、大人だ。常識をわきまえている。だが、俺はあきらめたくなかった。弟は救えなかったが、王女が死ぬまであと三ヶ月もあるのだ! じっと死ぬのを待てというのか?
「これも、神の思し召しなのじゃろう」
パウロは、半分あきらめているようだ。俺は唇をかみしめる。なにか、なにか方法はないのか?
いや。ある。
「アスリア王女に、会ってくる」
俺は部屋を飛び出した。今から頼むことは、彼女にとっては賭けになるだろうが、やられっぱなしでいるよりはよほどマシだ。俺はアスリアの部屋をノックした。




