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夢の国を行く帆船    作者: 鈴宮とも子
魔法の船のLTBG
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13/43

アスリアさまを救え!

 事情を説明すると、パウロは考え込みながら、

「若者よ、エメット神は意味もなく消えたり現れたりしない。君はなにか、重要な手がかりを手に入れておるのじゃ」

「そ、そーなの?」


 あの、宇宙文字を書き連ねたみたいな文字を思い起こし、俺はめまいを感じた。あんな中にヒントが隠されているとは、とても思えない。

「もっと精しく話してみなさい」


 柴田先生そっくりの声としぐさで言われたら、抵抗する気にもなれなかった。俺はエメット神の言葉と俺の反応まで、正確に打ち明ける羽目になってしまった。

「ふーむ、行動様式……。その言葉には、聞き覚えがある」


 パウロは、そうつぶやくと何気ない動作で『邪神ブラークルのモンスターたち』を手に取った。

「わしも、アスリア王女のことが気になっての。なんとかしたいと願っておった。ちょうど扉が現れておったので、ここに入ったというわけじゃ」

と言いながら、本をすごい勢いでめくっていく。


「ウォーターメロンマン……、ウの項目、208ページ」

 つぶやくと、そのページをめくり、開いて読み上げる。

「ウォーターメロンマンは、スイカそっくりの姿に化ける。そしてそれを捕食しようとする人間に種を植え付け、繁殖する。種は肉に食い込み、三ヶ月以内に発芽。体液を吸い取り、成長すると、人間をミイラ化して完全に食い殺してしまう」

「うっ」


 俺は吐き気がしてきた。アスリア……。アスリアの未来が、ひからびたミイラになるっていうのか。俺のせいで。

「なんとかなりませんか」

 俺は、ポケットに手を突っ込んだ。パウロはこの行儀悪いしぐさをとがめるでもなかった。

「ウォーターメロンマンの故郷は、ブラークルの仲間であるジャミシテ国の温泉地エリコ。そこには、種を植え付けられた人間を救える、唯一の方法があると書いてあるのぉ」

「どんな方法ですか」


「エリコの温泉水じゃ」

 本から顔を上げて、力強い口調でパウロは言った。

「それは種にとっては毒になるらしい。人間にはまったく害はないが、ひとくちその水を飲むと種はたちまち力を失い、きれいにはがれてしまうという」

「……それなら、エリコに向かいましょう!」


 俺は、いてもたってもいられなくなって、足をぴょんぴょんさせてしまった。しかしパウロは頭を振った。

「無駄じゃ」

 俺は足を止め、パウロに噛みついてしまった。

「なぜ!」


「エリコまでは、この魔法の船でも三ヶ月以上かかる。また、たとえ着いてもその先は我らの敵、ジャミシテ国なのじゃよ。あまつさえ、無事にそこに潜入できたとしても、ウォーターメロンマンの攻撃が待ち構えておるじゃろう。罠とわかっていて飛び込むことはないぞ」

パウロは、大人だ。常識をわきまえている。だが、俺はあきらめたくなかった。弟は救えなかったが、王女が死ぬまであと三ヶ月もあるのだ! じっと死ぬのを待てというのか?

「これも、神の思し召しなのじゃろう」


 パウロは、半分あきらめているようだ。俺は唇をかみしめる。なにか、なにか方法はないのか? 

 いや。ある。


「アスリア王女に、会ってくる」

 俺は部屋を飛び出した。今から頼むことは、彼女にとっては賭けになるだろうが、やられっぱなしでいるよりはよほどマシだ。俺はアスリアの部屋をノックした。


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