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スーリ戦 決着


俺はさっき零華に1つだけ言ってないことがある。もう覚悟は決めていた。スーリは殺そうと思っていたし、俺の仲間に手を出そうとした奴は容赦なく殺す。過去とか現在は関係ない、俺がやりたいようにやる。


だが、スーリを殺そうと思った矢先に、リリーから


(賢神の使者は殺さないで下さい!)


と、連絡が来たわけだ。


(リリーか? なぜ急に?)


(使者を仲間にできれば勝率が上がるので)


(それだけ?)


(えぇ、逆らえないように闇魔法で縛っちゃえば、使いたい放題じゃないですか! )


(それはそうなんだが……)


(私は龍弥さんだった頃を知っています。だからなぜ急に無力感を味わっていたのかも分かります。そして決心したんですよね? 賢神の使者を殺すって……ですが、あなたは勝つために正しい選択と最善の選択、どちらを取るべきだと思いますか?)


(……最善の選択だ)


(そうですよね、あなたは賢神の使者の力を自由に使えるようになれば、3人も使者を抱えることになります。そうなれば、この戦争には勝ったも同然ではないですか?)


(そうだな、わざわざ殺さなくてもいいか)


(分かってもらえたようで良かったです!)


(おう、ありがとうリリー)


(いえいえ、では頑張って下さい!)


このようなやり取りがあって、スーリを殺さない方向で話を進めたのだ。まさか、シーナを賭けて戦うことになるとは思わなかったが。


「勝利条件は相手のの降伏のみでいいのだな?」


「あぁ、それでいい」


「なぜ急に私を殺すのをやめたのかは知らないが、シリスティーナを手に入れるチャンスをくれたことは感謝するぞ」


「チャンス? そんなもんはない。お前が俺に勝てる可能性は限りなくゼロに近いからな」


「ほぉ、いい自信じゃないか。しかし、いささか自分の力を過信しすぎているように思える」


「過信なんてしてないさ、俺からはお前のステータスは丸わかりだし、スキルの数やステータスは俺のが上だ」


「ふっ、戦闘とはスキルやステータスが決めるわけじゃないということを見せてやろう」


「それじゃ2人とも準備はいいわね?」


「あぁ」


「もちろんだ」


「ルールは何でもあり、勝利条件は相手の降伏。では……始め!!」


まずは様子見だな。あいつは賢神の使者だけあって、遠距離からの攻撃手段が多い。

遠距離からの攻撃を防ぐ練習はシーナやアリス、零華に手伝ってもらってやってあるから、何とか防げるはず……


「我は古より森を守りし世界樹の眷属なり、我の呼び声に応え生を宿し、その命を育みたまえ『植物発生(プラントジェネレイト)』」


スーリがそう叫ぶと、足元から植物が生え始め、瞬く間に成長し、小さな森ができあがった。

早速使ってきたか。奴のユニークスキルの1つ『植物魔法』。貢献ポイントで交換したのだろう。俺のリストにもシーナのリストにもなかった魔法だ。


あいつは弓と風魔法のスペシャリストなわけだから、荒野で戦うよりも森の中で戦う方が有利だ。この規模の魔法を使っているのでそれなりにMPは消費するだろうが、そうまでしても森を作った方が有利だと考えたわけだな。


マップを見れば奴の居場所はすぐにわかる。そう思い、視線をマップに移動させようとすると


ヒュンッという音がすぐ近くで聞こえ、俺の顔スレスレを矢が通り過ぎた。

危機察知がしっかりと機能していたおかげで、上手くかわせたが、今のはヒヤッとした。


飛んできた方向に顔を向けると、今度も全くの死角から矢が飛んできた。移動が早すぎる、奴は転移魔法が使えなかったはずだが……


その後も死角からの矢を危機察知で、ギリギリ避けていきながら、この状況を切り崩す方法を模索する。


そういえば、俺は何で奴の土俵で戦ってるんだ? こんな森の中で戦う必要なんてなくないか?


……うん、必要ないな


飛んできた矢をかわし、俺は魔法を練り始める。



ーーー


sideスーリ


「ふっ、為すすべもないようだな」


私は矢を射りながら、クリシュ=レンメールが踊り狂う姿を見て、自然に笑みがこぼれていた。


私の弓の腕と風魔法、植物魔法を掛け合わせた完璧な戦法だ、彼は矢に踊らされるだけで何もできない。


「さて、そろそろ次の手を打とうか」


私はターゲットから少しだけ目を離し、魔法の詠唱に入る。


「我は……『コントロールデトネーション』


私の詠唱が途中で遮られて、前を向くと真っ赤な炎が差し迫っていた。

直感でマズイと判断し、荒野まで移動すると爆炎が森を包み込むのが目に映った。


「君は本当に爆発が好きなのだな」


呆然としながら独り言をポツリと呟くと


「嫌味を言うのはよしてくれよ、あの爆発は俺もやりすぎたなって思ってるんだ」


真後ろから声をかけられた。

そうか、転移魔法を使ったわけだな。森の中では私が高速で移動していたこともあって使わなかったというより、使えなかっただけで、開けた場所ならかなり厄介だ。


「そんなことより、これでお前のアドバンテージは無くなったわけだ。お前が森を作り出すたびに俺はそれをぶち壊していくぞ」


「そうだな、君相手に森を作り出すのは悪手だろう」


「降参するか? 他にもユニークスキルや、良いスキルはあるだろうが、俺相手に通用はしないぞ。それにお前は……」


「ふっ、この程度で降参だと? 良い気にならないでもらいたい。私のシリスティーナへの愛情は植物魔法が通用しないだけで諦められる程やわなものではない!!」


そうだ、私の愛情に勝るものがあってたまるか。何としてでもこの男に勝たねばならない。かと言って有効打があるかと問われれば、そうではない。この男にどのような攻撃をすれば降参してもらえるのか見当もつかないのだ。


「やっぱそうなるよな。んじゃこれでも降参しないか?」


「いつの間に……」


そう、いつの間にだ。全く見えなかったぞ。私の首に剣を突き立てられる瞬間を……


「ちなみに転移魔法なんざ使ってないぞ。ただ居合をしたにすぎない」


「居合? なんだそれは」


「む、そうか、居合なんて言われてもわかんないか。とにかく、俺は剣を抜くタイミングで素早く移動しただけだ」


そんなことを言われても信じられるわけがない。私は森の中では圧倒的な力を発揮するが、荒野で全くの無力かと言われればそうでもない。特に弓を射るために鍛えた目には自信があるのだが、この目を用いても全く見えなかったのだ。

会話中であっても油断なんてしてなかったにもかかわらず、この男は私の首に剣を突き立てるとは……


「この状況じゃあ降参するしかないだろ? 少しでも動いたらこのまま剣を振るし、詠唱しようとすればそれもまた剣を振る。無詠唱ができるなら話は違うだろうが……いや魔力の流れを、少しでも感じたら剣を振るから結局は同じだな」


「たしかにこの状況では何もできんな」


しかし、ここで降参するということはシリスティーナを諦めるということ……一体どうすれば……


「あの、零華様、この状況は一体どういうことなのでしょうか?」


「ん? あらミオじゃない。どうしたのよ」


「遠くで大きな爆発が起きて、それがビルデン王国の兵士の大半を壊滅させたと分かったので、戦争は終結したのかと思ったのですが、中々私たちをお呼びにならなかったので……」


「……ごめんなさい、すっかり忘れてたわ」


「では戦争は終結したということでよろしいでしょうか? でしたらご主人様と戦っている方は……」


「終結はしたけど、あの賢神の使者がシーナを賭けてクリシュと戦ってるのよ。変態ってのは本当に厄介ね」


「あー、あの方が件の剣の使者ですか」


何か失礼なことを言われている気がして、視線だけ話し声がする方に向けると、そこには女神が立っていた。何ということだ、今までシリスティーナ以外の女性など微塵も興味が湧かなかったというのに、あの女性は立っているだけで私の愛情を自分に向けさせるなんて!!


「ク、クククリシュ=レンメール!! あそこにいる女性は何者だ!」


「は? なんだ急に? 俺を油断させようとしても無駄だぞ。この剣は絶対に……」


「このような戦いは私の降参で構わないのだ!! あそこにいるエルフの女性は一体誰なのだ!」


「随分と急だな、怪しんでくれと言ってるのか?」


「だから! シリスティーナなどどうでもよいのだ!! あの……ミオ? ミオという女性は何者なんだ!」


「私なんてどうでもいい……」


「お、落ち込まないでくださいませ! あの変態が興味を失ってくれたのは喜ばしいことですわ!」


「それはそうなんだが、こう、プライドがな……」


「おい! 何シーナを傷つけてるんだ!」


「もう降参でよいか!? 私はいち早く彼女を口説かなくてはならないのだ!」


「あの男最低ね、ミオここはいいから逃げなさい」


「……そうさせていただきます」


「あ! 待ってくれ私のフィアンセ!」


「誰がフィアンセですかー!」


「さっきまでシリアス展開だと思っていたのに、どうしてこうなった?」


クリシュ=レンメールのつぶやきなど、あの女神をどう口説き落とそうか考えている私の耳には入ってこなかった。

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