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決意

 sideスーリ


『グオオォォォォォォォ!!』


 シリスティーナが咆哮を上げながら、私に体当たりをしてくる。お互いに空を飛んでいるので、地の利などないし、そもそも私は空よりも森の中の方が力を発揮できるのだ。だが彼女の攻撃が私に当たることはない。標的の大きさが違うのだ。


『くっ、避けてばかりで攻撃してこないではないか!!』


「当然だろう? 君に攻撃なんてできるわけない。君の身体は将来私のものになるのだから」


『気持ち悪いことしか言えぬのか! 貴様は!』


「気持ち悪いとは心外だ」


『黙れ!!』


 今度はブレスか、いや、ブレスというのが正しいのか分からんな。彼女は古代魔法が使えるからそれかもしれない。


 古代魔法は本当に厄介だ。現代の魔法よりMP消費は大きいが、効果が高いものが多い。


 それに、ブレスを避けたとしても下からは大量のナイフが飛んできている。大体下にいる獣人は何者だ? あの獣人に関してはここにいる者の中で唯一の一般人だ。


 使者が3人に、HPという概念が存在しない女とただのSSSランク。何とも異質な者たちが揃ったものだ。


 だというのに、あの獣人の殺気はこの中で1番恐ろしく感じる。クリシュ=レンメールを殺そうとした時の殺気は、気を失いかけた。


 む、クリシュ=レンメールが復活したか? あの女が何かしたようだな。


「待たせたなみんな、迷惑をかけた。すまない」


 ほぉ、素直に人に謝れる者は嫌いではない。


「そ、そんな! 迷惑だなんて! もうお体は大丈夫なんですか?」


「体はそもそも悪くも何ともなかったんだ。俺の心が弱かった」


「そーよ、ヘタレを治してくれればアンタはもっと……」


「もっと? 零華さん、もっとって何ですか?」


「な、何でもないわよ!」


「むぅ、クリシュ様は今のままで完璧です。これ以上素晴らしくなってしまったら、メイドとしての私の役割が無くなってしまいます! 普段のクリシュ様をお支えするのが私の使命なのですから」


「それ、普段の俺がだらしないって言ってないか?」


「はい! ……あっ、違います! クリシュ様はそのままでいてほしいだけで、えっと、その……」


「はぁ、分かった分かった。シーナも! そんな奴の相手をさせて悪かった」


『まったく、待たせすぎだぞ。何度吐き気を催したことか』


「散々な言い方ではないかクリシュ=レンメール。私たちは初対面だと思っていたが?」


「そうだな、初めましてだ。スーリ=コールカン。使者同士、楽しく殺し合おうじゃないか」


「いや、殺し合いはまた今度にしよう。流石に君たち4人を1度に相手をするのは無理がある。それに、君たちはどうやったのかは知らないが、ステータスを偽っている節があるのでな。クリシュ=レンメール、君は使者同士と言ったが、私からは君のスキル欄に『加護』がないのだよ。魔神の加護があると思っていたのだが、偽るとはズルいではないか」


「それは悪いな。だが、相手にスキルを見られるのはデメリットしかないんだぜ? 隠すに決まってんだろ?」


「それはそうだ。まったく君は不思議だ。風魔法は恐らく私と同等の力を持っているにもかかわらず、右手には剣を握っている。剣神なのか、魔神なのか、王神なのか、まったく分からない」


「そんなの分からなくてもいいだろう?」


「私の力は全て君にバレているのにか? とにかく、私は逃げさせてもらう」


 だが、どうやって逃げたものか。彼らには空間転移を使えるシーナがいる。そして私の位置が分かるメニュースキルもある。


「逃げられるとでも? でもまぁ殺すのもいいが、お前さ、俺に見逃す交換条件でも投げかけてみる気はないか?」


 は? 何を言ってるのだ?


「アンタ! まだ……」


「違うんだ零華。これはチャンスだ。使者の力を自由に借りれるかもしれないだろ?」


「うーん、いまいち納得できないわね」


「俺は零華のおかげで、道が見えた。殺す意味がある時は容赦なく殺す。けど、殺さなくてもいい時は殺さない。だれかに命令されて生死を決めるんじゃない。俺が決める。そして責任は全部背負う。それが俺が決めた道だ」


「クリシュ……」


「お前も、もちろん逃げ切れないことは分かってるよな?」


「もちろん分かっている。そして戦えば私が殺されることもな」


「それは良かった。で、俺が言ってるのは、お前が一旦俺のパーティに入って(すぐに抜けさせるが)その後、お前の提示する、俺がお前を逃してもいいと思えるほどの条件を満たしてもらったら、逃してやるってことだ」


「私が敗退するのは確定か?」


「それは悪いが確定だ」


「そうか……」


 正直、ここで敗退したからといって何とも思わない。むしろ殺されないのなら万々歳だ。というのも私がここに来たのは、クリシュ=レンメールを殺すためだが、まさかここまでの強敵が揃ってるとは思わなかった。つまりは失敗したのだ。すぐに逃げようとも思ったが、クリシュ=レンメールの調子がおかしかったので、欲が出てしまった。悩むことではない。私のできる限りの条件を提示するべきだ。


 しかし。


「私は……」


「シリスティーナを諦めきれない」


『まだ言うか!!』


「前世から数えて、私は計10人の妻がいる。しかしシリスティーナ! 君を手に入れられるのなら君だけを愛そう!! それほどまでに私の心には君で溢れているのだ!」


「素晴らしい愛の告白だ」


『クリシュ殿!! ふざけないでくれ!』


「悪い悪い、じゃあどうする? お前は俺たちと戦うのか?」


「いや、これは私のワガママなんだが……私は敗退を受け入れよう。それに、私の全てを君たちに捧げよう。だが、シリスティーナを諦めることは受け入れられない。だからクリシュ=レンメール!! シリスティーナを賭けて私と戦ってくれ!!」


『ん? 変な話になってないか?』


「おう、変な話になってるぞ」


「クリシュを復活させたのはいいけど、まさか殺し合いじゃなくて、女の取り合いが始まるとは……」


「話がこじれすぎではないですか?」


「だから、これは私のワガママなのだ! シリスティーナは貴様のものなのだろう!? 私が勝ったら譲ってくれと言っているのだ!」


「『違う!!』」


「む? 違うだと? 何がだ?」


「シーナは俺のものじゃない!」


『そ、そうだ! まだ違うのだ!』


「シーナさん、『まだ』とはどういうことですか?」


「ほっほーう! 面白いことになったじゃないの」


「ほんと、私がいない間に面白いことになってますわね」


 む、1人また美女が増えている。彼女も中々の強さ……闘神!? なんだそのユニークスキルは!! 彼女も使者なのか!?


「あら、お帰り。早かったわね、結構遠いと思っていたのだけど」


「えぇ、遠かったですわ。けど誰も迎えに来てくれないんですもの」


「申し訳ないです。色々と立て込んでいまして」


「見れば分かりますわ。中々面白いことになってるではないですか」


「本当は今から殺し合いが始まる血なまぐさい展開だったはずなのよ。けどこじれちゃったわ」


「とにかく! 私が君に勝ったら、シリスティーナを私にくれ!」


『もうめんどくさい。クリシュ殿、どどーんとぶっ飛ばしてくれ』


「いや、相手は使者だぞ!? そんな簡単に勝てるとは思えないんだが」


『何を言っているのだ。貴殿が本気を出した時、私とアリス殿が組んでも勝てなかったではないか。私も元だが使者なのだぞ?』


「それはそれ、これはこれだろ」


『私を賭けて戦うのは嫌か?』


「うん、シーナを物みたいに扱っているみたいで……」


『クリシュ殿……』


「甘い展開のところ悪いけど、クリシュ、アンタは女心を分かっているようで分かってないわ。女ってのはね、自分のために戦ってくれる男に惹かれるものよ。このままじゃあのエルフにシーナが惹かれるわ」


 む? そうなのか? それは喜ばしいことだ。


『そんなわけないだろう!? 怒るぞ零華殿!!』


「シーナがアイツに……? そんなの許さん……そういえばアイツはシーナの下着を……よし、殺そう」


「交渉は成立か?」


「成立だ。お前の敗退は確定。お前は全てを俺たちに捧げる。これからシーナを賭けて俺とお前で殺し合う」


「殺し合いまでしたら意味ないではないか」


「お前は殺す……!」


「ダメよ。アンタが決めたことじゃない。約束を破る男は嫌われるわ」


「……そうだった。悪い、頭に血が上ってた。降参した方の負けな」


「貴様は感情のブレが激しい男なのだな。前世でもそうだったのか?」


「前世は逆だ。感情なんてものは捨ててたからな……」


「なるほど、では始めるか?」


「あぁ、だが先にお前を敗退させるぞ」


「分かった」


 シリスティーナは絶対に手に入れる。


 クリシュ=レンメールの詳しい強さは分からないが、ここまで強大な仲間を持っているのだ。


 油断はしない。全力で挑ませてもらおう。



恐らく、殺し合いが始まると予想していた人が多いと思いますが、クリシュの葛藤やこの決断は後々重要な要素になる予定ですので、これからも暖かく見守ってくださると嬉しいです!

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