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魔の森争奪戦6

 side ビルデン王国 総帥


「な、何が起こったのだ……?」


 信じられない光景が目の前に広がっていた。荒野に立っている5人を目指し進んでいたはずの兵士達の半数以上が、突如として消えていったのだ。


「……どうなっているんだ? おい! 報告しろ!」


「は、はっ! 我が国の兵士の半数以上は落ちていったものと思われます!」


「落ちていっただと? どういうことだ!!」


「見ればわかるだろう? 地面が消えたようだ」


「せ、先生! このタイミングで天災が起こったということですか!?」


「天災なんてものじゃないね。これはどう見ても人災だ。恐らく土魔法を使ったんだろう」


「土魔法ですと!? 土魔法でこの規模の穴を開けたということですか!?」


「恐らく土魔法Ⅹの使い手が2人はいるのだろうね……シリスティーナも古代魔法が使えるから3人でやったのだろう」


「3人でこの規模を……ですがこれだけの大魔法を使ったとなるとMPは相当……」


「油断はしない方がいいだろうけど、かなりのMPは消費しただろうさ。攻め所としては今だ。兵士達は萎縮してるだろうけど、そうなってるという現状は相手方の思うつぼだろう。だとしたら我々は今攻めなければならないということは分かるね?」


「そ、そうですな! ビルデン王国の兵士よ! 恐れることはない! この規模の大魔法を使ったのだ! 敵は疲弊している! 今こそが攻め時だ! 全軍突撃いいい!」


 国王陛下直々にフリーデンを奪取せよとお言葉をいただいているのだ。私が今やるべきことをやらねばなるまい。兵士の半数が地の底に沈んでしまったとしても、我々にはまだ数万の兵士とSランクの冒険者、そしてSSSランクの先生がいるのだ。負ける道理などない!!


「ド、ドラゴンだ!!」


 私が意気込んでいると兵士達の叫び声が聞こえた。


「ドラゴンだと!? こんな時に……」


 空を仰ぐと、鮮やかな深緑のドラゴンが翼を羽ばたかせながらこちらを睨みつけていた。普通のワイバーンや成竜なら兵士が100人ほどで戦えば安全に勝てる。しかしーー


「なんて規格外の大きさだ……」


 空でこちらを睨みつけているドラゴンは成竜の数倍は大きく、逞しかった。


「総帥殿よ、ありゃ老竜レベルかもしくはそれ以上の存在だぞ」


 近くにいた冒険者が話しかけてきた。こいつはビルデン王国ではかなり名の知れた冒険者だ。


「老竜だと!?」


「あぁ、俺はSランクだからな、ワイバーン狩りをしてる最中にチラッとだけ老竜を見たことがあるんだが、あれぐらいだった」


「老竜ともなれば兵士ではいくら数を注ぎ込んでも勝てるか分からんな……おい、Sランクの冒険者を集めてきてくれ、私も出る」


「総帥殿が直々にか!? アンタってこの大陸で3人しかいないSSランクなんだろ!? うっひゃー! 近くでアンタの戦いを見れるとはなぁーー、よっしゃ! 他のやつらも呼んでくるぜ!」


 老竜が相手となれば私か先生以外にまともな戦いができる者などいないだろう。しかし先生には相手の領主の相手をしてもらわなければならないのだ。私が出るしかあるまい。


「へーえ、君が出るのか。私はクリシュ=レンメールの観察をもう少し続けたいからまだ出ないがいいかい?」


「えぇ、先生には万全を期して戦ってもらいたいので」


「そうかい……あぁそうだ、あの老竜なんだが確認したいことがあるのだ。できれば捕獲してもらいたい」


「殺すなということですか?」


「端的に言うとそうなる」


「……かなり難しいでしょうな」


「では私がアレと戦ってもいいよ? その代わり君がクリシュ=レンメールと戦うことになるが」


「はぁ、分かりました。できる限り殺さないようにしましょう」


「よろしくね」


 まったく、討伐と捕獲の難易度の違いは先生も分かっているだろうに……しかし先生にこう言われればやるしかないだろう。私ではSSSランクには勝てないからな。



 ーーー


 sideクリシュ


 時は少し戻り、大魔法を使い兵士達の半数を減らした後のクリシュ達一行は次の作戦に出ていた。


「2人ともお疲れ様。MPの方はまだ余裕があるか?」


「うん。クリシュが作ったこの鎧のお陰で私本来のMPなら満タンよ」


「私も同じくだ」


「よし、それじゃ次の作戦に移る。シーナは竜化して敵本陣まで突っ込んでくれ。兵士達の数を減らすことはあんまり考えなくていい。恐らく手強い冒険者が集まってくるだろうから、俺たちが数を減らすまで注意を引いててくれ」


「承知した」


 そうシーナが答えると俺たちから少し離れ、上空に転移し竜の姿に変化した。いつ見ても美しい深緑のドラゴンだ。竜王と呼ばれているだけある迫力も兼ね備えていて、いつまでも見ていたいと思ってしまう。


「で、私たちはどうすればいいの?」


 おっと、見とれている場合じゃなかったな。


「零華はここで魔法を撃ちまくってくれ。アリスは零華のサポート。俺とイリスは敵の後ろに転移して向こう側から数を減らしてくる」


「土魔法は使わない方がいいわよね?」


「あぁ、土魔法だけじゃないってところを相手に教えてやった方がいいだろうな。向こうは何故か全然怯んでないし」


 一瞬、絶望感を漂わせていたがすぐに士気を上げてきたからな。向こうには優秀な大将がいるのだろう。


「分かったわ。くれぐれも気を付けてね」


「言われなくても」


「クリシュ様、イリスさん、付与魔法をかけておきますね」


 俺たちの体を赤い膜が包み込む。アリスの付与魔法は何となくあったかく感じる。


「ありがとう。じゃあ言ってくる」


 アリス、零華と別れ、俺とイリスは敵陣の後方へと転移した。


「クリシュ様は剣をお使いになりますの?」


「両方使ってくよ。イリスに当たるとマズイから、イリスは左翼を攻めてくれ。俺は右翼を攻める」


「分かりましたわ」


 イリスはSSSランクの魔物から作り出したドレスグローブに包まれた拳を合わせ、勢いよく飛び出して行った。あのドレスグローブはアリスと俺でめちゃくちゃな性能にしちゃったから、一般兵の相手をするとなると、手応えが全くないかもしれないな。

 ーーまったく戦闘狂は大変だぜ。


 イリスが戦闘狂だと知ったのは、パワーレベリングをし始めた頃だった……いかんいかん、今は戦争中だ。気を引き締めていかないと。


「まずは、ド派手にいきますかね」


 俺は火・水・風・土・光・闇の6属性を極めた上で『ユニーク魔法』を持っているが、大人数を相手にするとなったらこれしかないな。


「地球の知識とこっちの魔法がありゃこんなものが個人で作れちゃうんだからな、恐ろしいったらありゃしないよ」


 俺が今いるのは敵陣左翼の1番左。そこから右翼の1番右まで転移する。かなり距離を取っているので、イリスに被害が及ぶことはないだろう。


「さて、まずは水だな。『レインフォール』!!」


『レインフォール』は俺のユニーク魔法だ。雲ひとつない天気でも雨を作り出すだけの魔法。不思議な現象ってだけだ。


 ただ、勢いは半端ではない。広範囲で力強い雨が降り続ける。もちろん止める術はなく、一瞬で水溜りが作られる。兵士の視界は遮られ、水で足元を取られるため、動きが悪くなる。


 俺は地面に手をつき、次の魔法を繰り出す。このユニーク魔法は正直使いたくなかった。兵士にはそれぞれ家族がいて、この戦争が終わったら笑顔で家に帰るのだろう。その笑顔を俺は奪うことになる。敵の軍事力を舐めていたせいで使わざるを得なくなってしまったが……


 深呼吸をして心を落ち着かせる。既に何人も殺してるじゃないか。殺す人数が増えたから罪悪感を抱くのか? そうじゃないだろ。俺は自分の周りの笑顔だけを考えなきゃいけないんだ。


 覚悟を決めて魔法を発動する。


 火属性と土属性を混ぜ合わせて、新たな魔法を構築し、雨の集中しているところに発動……


 そして、視界は真っ白になり、大きな爆発音で耳が潰れそうになる。



 俺は恐らくラビリスという世界で初めて水蒸気爆発を戦争に使った男になった。




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