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魔の森争奪戦5

 

「よ、予想以上の軍事力ですね」


「そうね……どう考えても私たちだけでやれるとは思えないわ」


「この数を5人でというのは少し……」


「狂ってますわね」


「おいおい、言いたい放題だな」


 この兵士の数を見ればそうなる気持ちも分からんでもないけど……


「兵士に混じって冒険者もいますね」


 ビルデン王国の軍事力がここまでとは思ってなかった。俺は前世で3万の軍隊と戦って死んでしまったが、現在はあの時とは次元の違う強さを手に入れているはずだ。もちろんこの世界にはスキルというものがあるから、簡単に勝てるとは思えなかったが、少なくとも負けるとは考えていなかった。


 相手の兵士の数が約30万人で1人当たり6万人を倒す計算になるとは思わなかったからだ。


 今俺たちがいるのは、ビルデン王国とフリーデンの間にある荒野だ。魔の森を挟んで隣接しているのだが、そもそも魔の森はデカイ荒野の中にある森であり、荒野自体の面積はとてつもなく広いのだ。



「最初に聞いておきたいんだが、みんなは人を殺すことに、ためらいはあるか?」


「私はないわね。魔王だった頃は殺さなきゃ殺されてたから」


「私もないぞ。前は人間などゴミだと思っていたからな」


 この2人の答えは予想できていたが、思ってたよりシーナが……まぁそれは置いといて、問題は残り2人だ。


「殺さなきゃクリシュ様が殺されてしまう可能性がありますので、殺します」


「クリシュ様が……そうですわね、私も殺しまくります」


「アンタ達は本当にクリシュのことしか頭にないのね」


「いえ、クリシュ様だけでなく、零華さんやシーナさん、イリスさんも殺されてしまう可能性があるなら、その芽は摘まないといけないです」


「そうですわ! お友達を殺されるなんて嫌ですわ! だったら人を殺すことにためらいなど……」


「そ、そう……ありがとね……」


 さっきから、メイドとお姫様のセリフとは思えないけど、2人とも大丈夫そうだな。


 零華の照れ顔が見れたのはラッキーだった。


「さて、一応後ろにうちの軍隊やメイドに潜んでもらっているが、あの兵力にぶつけたところで、そこまで状況は変わらないだろう。だから基本的には俺たちだけでやるぞ」


「はい」「えぇ」「うむ」「わかりましたわ」


「領民にはちゃんと説明をしてある。俺たちがこの戦いに勝てば、フリーデンに手を出してくるようなバカは減るだろう。だからこそ、勝つぞ!!」


「「「「おぉーー!!」」」」


 気合いは十分入った。作戦も考えてあるし、俺やアリスが作った装備も今できる完璧なものだ。絶対に勝ってやる。


「さて、そろそろ向こうの総大将が出てくるはずなんだが……」


「全然出てきませんね」


「恐らくですが、私たちの姿を確認できてないのでしょう。5人で来るとは思ってないでしょうから」


「じゃあこっちから名乗りでるか?」


「それでも大丈夫だと思いますわ。向こうから宣戦布告してきて、お互い準備完了していながら、名乗り出ないのは私たちに失礼な行為ですし」


「よし、じゃあ風魔法で向こうまで声を届かせてやるかな」


「ねぇねぇ! どうせなら思いっきり挑発してやんなさいよ! 最初は私とアンタとシーナで思いっきりやるのよね? 相手が怒りに任せて突っ込んでくるところにぶち込めば、萎縮してくれるかもしれないわ!」


「オーケー、じゃあ一丁やってやりますか!」



 ーーー


「おい、どうなっている!! 向こうの軍隊の姿が全くもって見えないではないか!! もう開戦時間からかなり過ぎているのだぞ!! 我がビルデン王国を愚弄する気なのか!!」


「分かりません! 5人ほど荒野に立っているのは確認できますが……」


「そいつらは恐らくこの辺りで狩りをしていた冒険者だろう。可哀想ではあるが、そいつらに構ってる暇などないわ!」


「しかし総帥様、たかが街1つにここまでの兵力をつぎ込む必要などあるのですか?」


「こちらにも事情があるのだ! 貴様はさっさと持ち場に戻れ!」


「は、はい!」


 兵士は一喝され、テントから出て持ち場に戻っていく。


「私も疑問なのだ。しかし先生が……」


「私がどうかしたかね?」


「せ、先生!? なぜここに……」


「君たちが間違えて彼女を殺してしまう可能性があるからだよ。私が君たちに協力しているのは彼女のためだけだからね」


「しかし先生、ここまで兵力を注ぎ込んだのはなぜです? 先生の言う女性が強いのは話を聞く限り分かりますが、その女性も先生が抑えてくれるのでしょう?」


「いや、私は彼女の相手はできないだろう。どの使者からは分からないがそいつの相手をしなければならないだろうからね」


「は? 使者とは何のことですか?」


「失言だった。忘れてくれたまえ」


「は、はぁ? 先生がそう仰るなら」


「敵の主な戦力は分かっているのだろうね?」


「い、いえ、こんなちっぽけな街1つの領主や強力な冒険者などはいつも調べておりませんので……軍隊の人数しか……」


「はぁ、全くダメダメだねぇ。私は正直、この人数でも少ないんじゃないかと睨んでいるよ」


「なんですと!?」


「私は君たちと違って情報収集はしっかりやるんだ。向こうの領主の名前や主な戦力は分かっているのだよ。それを踏まえてこの戦力ではギリギリだろうね」


「しかし、バンベス王国にこの数をどうにかできるような戦力など……いや、待てよ? 少し前にSSSランク騒ぎがあったが」


「それだよ。君たちの相手をするフリーデンの領主はSSSランクだ」


「ば、馬鹿な! あれはバンベスが我々を萎縮させるための嘘だと聞いています!」


「へぇ、そんなこと誰から聞いたんだい?」


「こ、国王様です……」


「国王は信じたくなかっただけじゃないのかい? それはともかく、私の調べではSSSランクが3人いるはずだよ」


「さ、3人もですか!?」


「うん、だからこの戦力ではギリギリだと言ったんだ。この荒野だと私の力を存分に発揮することはできないが、その3人のうち1人は私が抑えるから、他は君たちが頼むよ。言っておくがシリスティーナだけは殺してはいけないよ?」


「しょ、承知しました」


「うん、さてさて、クリシュ=レンメールか……君は一体どの神の使者なんだい?」


 そう空に投げかけてエルフの男、賢神の使者スーリは不敵に笑った。



『おーーーい、聞こえてるかーー??』


「ん?なんだこの声は? 風魔法に乗せているのか?」


 何の魔法を使ったのか、何のスキルを使ったのか、今後どのような動きをするのがベストかなど一瞬で判断できるようだ。なるほど、賢神の使者というだけあって洞察力はかなりのものらしい。


「クリシュ=レンメールの仕業か……」


『俺はクリシュ=レンメールだ。君たちが宣戦布告したフリーデンの領主なのだが、いくら待ってもそちらが名乗りを上げないので、こういう形を取らせてもらった』


『おっと、君たちから俺の姿は確認できていないかな? もしかして軍隊の姿が見えないから名乗りを上げなかったのかい?』


『残念だが、君たち程度に我がフリーデンの軍隊を使うつもりはないよ。ほら見てごらん、荒野に5人立っているのが見えるだろう? この5人が君たちの相手だ。精々頑張りたまて』


『君たちの大将の名前を聞いたところで、俺の頭じゃ覚えられないから名乗りは要らないよ。さっさとかかってこい』


「ふむ、これは煽られているのかな? 何か罠があると考えるべきーー」


「全軍突撃いいいいいい!!!」


『おおおおおおおお!!!!』


「はぁ、あの将軍は気が短すぎてダメだね……うん、私はしばらく傍観でもさせてもらおう」



 ーーー


「クリシュ様、どうやら全軍で来るようですね」


「お、全軍か。ラッキーだな、零華! シーナ! 準備はできてるか?」


「もちろんよ」


「いつでもいけるぞ」


「よし、3人じゃ全範囲は無理だな……だが半数はやらせてもらうとするか。3……2……1……いっけぇぇぇ!」


 俺の合図で3人は同時に魔法を放つ。零華とシーナで地面に穴を開けて、俺がその穴をさらに深くするだけ。風魔法を使えない者はただ落ちるしかない。




 こうして魔の森争奪戦はフリーデンの先制攻撃で幕を開けるのだった。


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