フリーデンの発展
「あら、姫さまも連れて来たのね」
「なりゆきでな、とりあえずみんな席に座ってくれ」
ここは大会議室で、50人は余裕で入る。
10人規模の小会議室もあるが、どのような用途で使うかはまだ考えていない。
「す、すごいですわね、数日でここまで作るなんて……椅子や机も一級品ばかりですわ」
そういう小物は馬車での移動中に作っておいた。ウチの馬車は普通のより何倍も早く移動できるからそこまで数は多くないけどな。
「正直私も、バンベスの王城よりすごいの作っちゃったんじゃないかって心配してるわ。大きさ自体は少し小さいけど機能は完全にこっちのが上だし」
「ま、まぁいいじゃないか! とにかくみんな座ってくれ!」
零華の目がどんどん鋭くなっていったので、身の危険を感じて強引に話をそらした。やっぱ徹夜でここまでやったのは失敗だったかな。
「あ、あのクリシュ様、私たちはどうすればよろしいでしょうか?」
メイド長(予定)のミオがおずおずと手をあげて声をかけてきた。
「どうすればって、テキトーなところに座ってくれ。これからこの屋敷……っていうかもはや城か? の説明とかしないと行けないから」
「ご主人様と同じ席に着くということですか!?」
「……? そうだけど何かおかしい? てゆうか君たちはもう奴隷じゃないんだからそんなこと気にしなくていいよ? 未だに奴隷のシーナも席に着いてるだろ?」
まぁ俺が強引に座らせたんだけどな。
「ミオさん、身内しかいない時はそこまで気にしなくて大丈夫です。クリシュ様はそういうお方なので。主人と一緒に席に着かない場合はお客様がいらっしゃった時のみで構いません」
アリスが補足説明してくれたが、まぁそんな感じだ。
「は、はぁ、分かりました。クリシュ様、城の設備紹介の前に、私たちの分担の説明をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「うん、いいよ。アリスとも話し合って決めたんだよね?」
「ありがとうございます、アリス様には色々とアドバイスをいただきましたが、爵位を持つアリス様に側仕えが居ないのは色々と問題がありそうでしたので、若干変更いたしました」
「……いらないって言ったのに」
「そういうわけにもいきません! あなたは辺境伯なのですよ? 自覚を持って下さい!」
「……はい」
アリスがこうやって叱られるのは珍しいな。写真があったら撮っておきたい顔をしてる。いや、シュンとしてる女の子をフィルムに収めたいって、どういう性癖だよって思うけどな。
「では、ご説明させていただきます。クリシュ様、アリス様、零華様にはそれぞれ執事を付けさせていただきます。丁度3人居たので良かったです」
俺の執事はシルバに決まった。シルバは執事スキルⅩの完璧執事さんで、60代前後の優しそうな人だ。
執事は3人で生粋のメイドが15人、門番や警備などもできるメイドが6人の総勢24名がこの城に住み込みで働く者たちになる。
「ご主人様に解放していただきましたが、私たちは一生尽くすつもりでいますので、これからどうぞよろしくお願い申し上げます」
メイド長に任命されたミオがそう言いながらお辞儀をすると、みんな揃って深々と頭を下げた。
「あぁ、よろしくな。賃金は一月で金貨5枚でいいか? あ、メイド長や執事に関しては少し増やすぞ、仕事量が違うからな」
「それは少し貰いすぎな気もしますね……衣食住を全て揃えてもらっていますし……」
「服については最初だけだぞ?」
「それでもここまで高品質のものをいただけたので……」
アリスが一工夫して少々丈夫なメイド服や執事服になってるからな。
「あとな、これから話すことに関係するんだが、ここは辺境だから近くに魔の森があるだろ? 君たちには交代でそこに入ってもらって魔物を狩ってもらうことになるから、それの手当てでもあるんだ」
うわー、みんなの顔が一気に青ざめたな。そんなに怖いのか魔の森。
「あ、あの、私たちのレベルで魔の森は流石に無理が……」
「いや、流石に安全マージンは十分に取ってもらうし、最初は俺たちも同行して行くよ。何せメニュースキルを持ってる人材を手に入れたんだから有効活用しないとな」
メニュースキルのパーティ設定は、上限が6人までになっているが、重複可能なことが判明した。つまり、俺のパーティにシーナが入っていても、俺以外のパーティメンバーはシーナをリーダーとしたパーティに入ることができるのだ。つまり、俺とシーナを除けば最大9人をパーティに加入できるのだ。パーティリーダーはもちろん俺で、シーナには戦争を敗退してもらうことになるけどな。
「ちょっと待ってほしい。なぜクリシュ殿がメニュースキルについてそこまで詳しいのだ? 零華殿はスキルについて詳しくは分からないだろう? その魔眼は対象人物の心を調べるもののはずだ」
やっぱり口出すよな。この数日間で零華の魔眼については調べたようだな。メニュースキルならスキルを詳しく調べられるから、分かったのだろう。
「……みんな落ち着いて聞いてくれ、ここにいるメンバーは、俺が心から信頼できる者たちだと判断している。だから俺が今から話す内容について他言無用で頼む。それとできればあんまり驚かないでくれ」
そう言ってみんなを見回す。イリス姫やミオを筆頭にした使用人達は、神妙な面持ちで頷き、シーナは訝しげに頷いた。
「俺は……魔神リリーの使者としてこの世界に転生したクリシュ=レンメールだ。他の6人の使者と競い合っている。そして、そこにいるシリスティーナは龍神の使者だ」
うん、ポカーンとした表情がまた見れたな。そんでもってみんなソッコーで隠し持っていた武器で、シーナを拘束するために前に出た。いやぁ、流石の身のこなしですな。
あっさりと拘束されたシーナの様子はというと……
「クリシュ殿が使者……クリシュ殿が使者……クリシュ殿が使者……」
壊れちまってる。まぁ奴隷に落とされた時点で勝負は決まっていたようなもんだけど、希望が全くないわけじゃなかったもんな。主人が使者になったら、殺されるかパーティメンバーにされちゃえば完全に終わりだし。
「シーナ悪いけど俺は君を殺す気はなくて、パーティメンバーになってもら……」
「いやったぁぁ! これで戦争を抜けられるぞーー!!」
え、なに!? なんでそんな喜んでんの? 敗退するんだよ?
「つまりあれか? クリシュ殿は私をパーティに入れて敗退させてくれるんだよな? そういうことだよな?」
「お、おう、そうだけどなんでそんな喜んでるんだ?」
「そうかそうか! 良かった! 私の話は長くなるから後で話すとしよう。私は今後クリシュ殿に協力することを誓うぞ!」
なんなんだ? 演技か?
「あんた、演技じゃないのよね?」
「演技ではない。竜王としてここに誓う」
「竜王?」
「私は転生前に竜王として生きていたのだ。色々あって、今はただのシリスティーナだ」
「そうか、零華どうだ?」
「うん、信じていいと思うわ」
「分かった。シーナ、今から君を俺のパーティに入れる。そしたら奴隷から解放するからな」
「ありがとう、やっと龍神に一泡吹かせられる!」
一体なにがあったら神に一泡吹かせたくなるのか。
「よし、じゃあ『契約破棄』……これでシーナは奴隷じゃなくて俺たちのパーティメンバーだ。みんなもこれからは奴隷としてじゃなくて、俺たちの仲間の1人として扱うように頼む」
「あぁ、自由だ……クリシュ殿、貴殿には是非この戦争を勝ち抜いて欲しい。私は元々貢献ポイントがそんなにあったわけではないが、今回の一件で貴殿は1位になったはずだ。それに破神の使者とさえ出会わなければ他の使者に負けることはないだろう? アリス殿や零華殿もいるのだ。どんどん使者を倒していこうじゃないか! 私の空間転移で別の大陸でも行き放題だからな!」
「いや、俺は積極的に使者と戦うつもりはないぞ。向こうから攻撃してこない限りな」
「な、なぜだ!? それほどの力があるのなら……」
「確かに他の使者を殺すか、パーティメンバーに入れれば貢献ポイントの稼ぎは大きいけどな、俺にも考えがあるんだ」
「か、考えとは? より効率よく稼げるのか?」
「あぁ、君をパーティメンバーに入れた時点で正直勝負は決まったようなものだよ。みんなも聞いてくれ、俺が今から1年をかけてやることの大まかな流れを知っておいてほしい」
それからみんなにこれからどうするかの予定を話した。
大まかには
・現在いる村人はみんな農民であるため、外から人を呼び込み、軍を編成する。
これについては、奴隷でまかなってもいいかもしれないが、ミオ曰く英雄の軍に入れるならと、応募が殺到する可能性があるとのことだ。
・ウチの使用人達のランクとレベルを強制的に伸ばしていく。
これに関しては最重要項目の1つだ。俺とシーナのパーティ設定さえあれば、パワーレベリングが可能なので、全員Aランク以上にはなってもらう。彼らがそこまで強くなれば他の国が攻めてこようとも、使者が攻めてこようとも勝てるだろう。
・俺やアリスが作った武具や魔法道具を販売する。
これは貢献ポイント用なのと、この村の名産にしようと思っている。この村に税を納めている者だけに販売すると宣言し、強い冒険者を呼び込もうという考えだ。あと、軍に入る者には5割引で販売する。そもそも俺たちが作るのは、下手すれば国宝級の武具になるものだから、相当な額が入るはずだ。国王に売ってもいいな。
・イリスとシーナのパワーレベリング。
シーナはレベル上げすれば確実に1人で他の使者と戦えるので、必須項目だ。イリスに関しては本人が強くなりたいと言ってきたので、俺のパーティに入れることにした。彼女のユニークスキルは正直、かなり強力なので俺も全力でパワーレベリングするつもりだ。
とりあえず1年はこの4項目を中心にやっていこうと思う。後、迷宮とかを発見できたらいいな。
まぁ、俺は当分の間この城の小物を作ることに専念するけどね。
「みんな、この1年は忙しくなると思うけど、よろしく頼む。みんなでこのフリーデンを発展させていこう!」
「「「「はい!!」」」」
いい返事だ。フリーデンはこの村の名称で平和という意味がある。さぁ、始めようじゃないか。
ーー
そして1年の月日が流れ、フリーデンは王都に次ぐ大都市になった。




