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フリーデン

 

「この街道をあと20分ぐらい進めば村に到着だな」


「そういえば、村の名前ってどうするつもりなの?」


「それがさ、全然決まってないんだよなぁ、シーナはなんかオススメの名前ある?」


「私はそういうことを考えるのは少し苦手でな。今まで修行と竜の世話しかしてこなかったのだ。申し訳ないが力になれそうにない」


 シーナとは、龍神の使者シリスティーナの略名だ。本人からそう呼ぶように言われたので、みんなそう呼んでいる。


 本人は奴隷館を出てすぐに、自分が使者だということをぶっちゃけた。俺のことはまだ詳しく説明してないし、零華が魔眼を持っていたから隠すつもりもなかったのかもしれないが、噂が広まって困るとは思わなかったのだろうか? レベル的には使者の中で最弱なのに……


 俺たちが使者という言葉に疑問を持たないのを不思議がってはいたが、自分なりに納得したようで、賢神の使者がシーナを殺しに来たところを、古代魔法の空間転移でこの大陸に逃げて来たそうだ。


 彼女のステータスは


 シリスティーナ

 lv 118

 ランクS

 称号【不幸少女】

【竜の巫女】


 HP 22000

 MP 25000

 筋力 15600

 体力 14500

 敏捷力 9500

 魔力 21000

 魔法防御 17600

 知力 3200

 運 -50


 スキル 『闘技Ⅷ』『身体強化Ⅹ』『MP増加Ⅵ』『MP消費減少Ⅷ』『魔力上昇Ⅹ』『無詠唱』


 ユニークスキル『龍神の加護』『古代魔法』『竜魔法』『竜化』『メニュースキル』『超身体強化Ⅴ』



 こうなっているが、ステータスが異様に高いな。2つの加護を持っている俺と、レベルが同じ時なら良い勝負だ。それに加え、古代魔法と竜魔法を使えるなら、魔神の使者単独でコイツと戦っても絶対に勝てないな。そりゃ最下位にもなるわ。


 それよりも俺の目を引いたのは、運-50という数字。これどうなんだろうな。不幸少女……不憫だ。


 あと、ステータスが身体強化を中心に、肉弾戦で強いように上げてるようだが、魔法系のスキルが強いんだし、『超身体強化』を取った理由が分からないな。


「そろそろ貴殿達の正体を教えてもらえないだろうか? ランクを上げると、肉体が戦闘に最適の年齢になってから成長を止めるそうだが、それにしても貴殿達は若すぎる。少年少女がスキルをそんなに持っていることも不思議だ。それに零華殿のHP∞とはどういうことなのだ?」


「まぁ、落ち着いてくれ、詳しい話は絶対に後でしてやるから、まずは村を復興させてからだ。俺たちが治めることになる村のは領主不在で結構大変なことになってるらしいから、俺や零華の土魔法で、外壁や、道、建物を作って、広めの領地や無料の住宅を新しく作ったり、税金を決めたり、やることは沢山あるからな。話はその後だ」


「無料で提供するのか!?」


「あぁ、全部の家にトイレを付けたいんだよ。土魔法なら簡単に作れるし、上水道や、下水道も作りたいから、それも水魔法でちょちょいっとやる。トイレがないと臭いだろ? 俺が住むところが臭いのはちょっと嫌なんだよな」


「なるほどなぁ、そういえばこの馬車って、空間魔法を使っているようだが、作ったのはもしかしてクリシュ殿が……?」


「あ、馬車の話は……」


「そうなんだよ! 結構こだわって作っててさ! まず馬なんだけど……」


「ほらぁ! 始まったーー! シーナのせいよ?」


「え! 馬も土魔法で作ったのか! それは興味深いな!」


「シーナもそっち側の人間だったのね!?」


 俺は零華が何か喚いてるのも気にかけずに、最高傑作の話を存分にシーナにした。いやぁ、目を輝かせて聞いてくれるのは実に嬉しいことだな!


 それから数分経ち、俺たちは村の入り口までやってきた。入り口を守る者は誰も立って居なかったので、そのまま中に入り、大きい馬車を見て驚いている住民に村長の家を聞いて、そこに向かった。


 この村の規模はレンメール村よりもさらに小さく、冒険者ギルドはかろうじて存在するものの、ギルドマスターしか従業員がいない。冒険者はDランクの者が最高で、凶暴な魔物が出たら終わりという、深刻な状況にある。村の活気も全くない。


 俺たち3人は村長の家の前に馬車を停め、家のドアをノックした。


 3人しか居ないのは、アリスに王都で他の奴隷の世話を頼んだからだ。服や身の回りの物を多めに買って、仕事の分担の話などもそこでやっておいてもらう。


 奴隷は自分の所持品は全て奴隷商人に回収されているので、自分の物を一切持っていない。だから、みんなにお小遣いとしてとりあえず金貨2枚を渡しておいたのだ。……それでも多いって零華にめちゃくちゃ怒られたけどな。奴隷達もすごい喜んでくれてさらに忠誠を誓ってもらったんだからいいじゃないか。


 とまぁ、そういうわけで現在は俺たち3人が村長の家に来ているわけだ。


「お待ちしておりました。この村に領主が来ると聞いてみんな不安になっておりましたら、まさか英雄様が辺境伯として来てくださるとは思わなかったので、私たちはとても感激しております。この村は何もなく、活気も全くありませんが、よろしくお願いいたします」


 中では礼儀正しいお爺さんと、優しそうなお婆さんが腰を45度に傾けて俺たちに礼をしていた。


「あぁ、頭をあげてくれ。俺はクリシュ=レンメールだ。辺境伯の1人としてこの地を治めに来た。一応、この村の代表になる。こちらこそ、あなた達には色々と協力してもらうことが多くあると思うが、よろしく頼む」


 こちらの方が身分が高く、向こうは平民なので、こういう口調にしておく。


「私は零華。貴族になったばかりで家名はまだ決めてないわ。よろしく」


「私はお2人の奴隷であるシリスティーナだ」


 シーナは敬語が苦手らしいので、誰にでもこういう口調になっている。奴隷から解放しないのは、色々考えてのことだ。


「クリシュ様、実はですね、前に住んでいた領主様が居なくなってから、領主の館は魔物によって壊されてしまったので、クリシュ様方が住む家が……」


「あ、そのことなんだけどさ、俺たちの屋敷は自分達で作るよ。土魔法が得意なんでね、他の人たちが作るより断然早いし、良い感じで作れると思う。それに加えて、ここら辺一帯は全部俺の土地だよな? だから、近くにある森とか全部俺と零華で切り倒して、そこまで城壁作っちゃってさ、領民の家も新しく全部作り直すから、今日中にみんな家の荷物まとめておくように言っておいてくれない?」


 うん、村長のそんな顔が見たかったんだ。



 次の日には、王都よりも高く厚い城壁に、土魔法で作った一律の家が所狭しと並ぶ領地が生まれていた。


「まさか、一晩でここまで村が生まれ変わるとは思っておりませんでした」


「いんや、今日もさらに発展させるよ。とりあえず、領民にはこの屋敷を中心とした地域から少し離れた所に引っ越してもらう。で、村長にはそれぞれ家に番号がついてるから、領民の名簿を番号と共に作ってもらう。勝手に住んでもらっちゃ困るからね。元々この村にいた人たちには無料で提供するけど、トイレや台所、風呂がついてる家は結構高いからね。外からやって来た人たちからはお金を取るよ。それで、この屋敷を中心とした地域は商業地区にする。で、元々みんなが住んでいたところは、宿屋や、冒険者ギルド、食事処にするつもりだ」


「はぁ、とてつもないですな。とにかく今私がすることは領民に引っ越しを促すことと、名簿を作ることですね? 不正を働こうとしたら、クリシュ様の名前を使ってもよろしいでしょうか?」


「俺の名前? 別にいいけどなんで?」


「このような奇跡を1日で起こしてしまったのですから、領民がクリシュ様に嫌われたらどうなるかを考えたら、恐怖に陥るはずですので」


「なるほど、いいんじゃないかしら?」


「うむ、天変地異をやってのける者に嫌われると考えたら、恐ろしいことこの上ないだろうな」


「あーー、そっかぁ、うん、俺の名前どんどん出しちゃって。後、これぐらいの奇跡だったら、俺以外の2人も簡単に起こせるって言っといてくれ」


「いや、私は城壁とか道の整備はできるけど、こんなに細かい設計は無理よ? あんたのⅩⅩレベルの魔法じゃないと」


「それに、この屋敷に関しては、そんじょそこらの国の城よりも高性能だぞ。風呂もトイレも自動って、魔石加工スキルは本当にすごいのだな」


「まぁ、みんなの家にもそれはついてるんだけどな。魔力流せば使えるって、村長はみんなに伝えといてくれ」


「かしこまりました。あとクリシュ様、私は既に村長ではありませんので、ガーラとお呼び下さい」


「そうだったな、あ、そうだガーラはこの村の重鎮になってもらうから、この屋敷の近くに住んでくれ。この屋敷周りの30〜50軒以外に領民に住むよう指示をよろしく」


「はっ!」


 ガーラは杖をついて、軽い足取りで扉を開けて出て行った。


 昨日の夜、ガーラが杖をついてるのを見て、何となく改良できないかなっと思って作ってみた杖なんだけど、思いのほか高性能になってしまったものをプレゼントしておいた。なんと歩くだけで疲労回復する杖だ。歩けば歩くだけ体力が回復するという矛盾。運動不足になりがちな老人にはうってつけの商品になりそうだ。


「そう言えばこの屋敷って広すぎて、まだ性能が全部分かってないんだけど、何が付いてるの?」


「ん、そうだな説明してないところが多いな。丁度いいや、そろそろアリス達を呼んでみようか、買い物は6日間もあったし、十分だろ」


「ん? じゃあ私が転移で呼んでこようか? クリシュ殿は知らないだろうが、『メニュースキル』っていうのがあってだな、それがあると狙った場所に確実に転移できるのだ。私に関しては空間転移なので行ったことない場所でも行けるぞ」


 へぇ、シーナは古代魔法の転移だから、俺のとは性能が明らかに違うようだな。……べ、別に悔しくはないけどね!!


「いや、俺も狙った場所に確実に飛べるから問題ない」


「へ? それってすごい技術じゃないか!」


「それも含めてまとめて説明してやるよ。俺や零華が何者なのかも含めてな」


 そう、ここに住む者達には、俺が使者であること、零華が魔族であることを教えるつもりだ。それで出て行くなら構わないつもりでな。


「じゃあ行ってくる」


 俺はアリス達がいる、王城の前に転移した。王城の兵士たちは既に俺のことを知っている者ばかりなので、みんな敬礼してくれる。


「アリス達が中にいるか知ってるかい?」


 マップ機能でもちろん中にいることは分かっているが一応聞いておく。

 何となく兵士が話しかけてもらいたがってる気がしたんだよな。


「はっ! アリス様を含め、25名が滞在されております!」


 兵士は敬礼を崩さず、少し緊張した様子で返事をしてくれた。


「じゃあそこまで案内してもらえるかな?」


「よ、喜んで!」


「おい! ずるいぞ! クリシュ様、私が案内いたします!」


「いえ、私が!」


「お前らやめろ! ここの責任者は俺だぞ! 俺が案内する!」


 いや、責任者がここを抜けたらマズイだろ。

 みんな英雄に対しての憧れが半端ないな。アリスが気まずそうにしてる様子が目に浮かぶよ。


「これはこれはクリシュ殿、ようこそいらっしゃった」


「ん? あぁ、オーグさん、久しぶり」


 オーグ=バリタン、彼はこの国の総帥閣下だ。軍部でNo.1の立場の彼がなぜここに?


「イリス姫に会いに来たんでしょう? 私が案内しましょう。さぁこちらに」


「あ、いや、姫じゃなくてーー」


「ハッハッハ、若いですなぁ、照れなくてもよろしいでしょう。ささ、参りましょう」


 俺この人少し苦手なんだよな。話しが通じなくて、ザ・体育会系って感じ。


「実はですな、クリシュ殿と出会ってから姫さまはずいぶんとお元気になられたのですよ」


「え? そうなの? 結構勢いのあるお姫様だなぁって思ったけど」


「姫さまはあまり外に出ないのですよ。クリシュ殿やアリス殿、零華殿はあまり気にしてないようですが、自分の容姿を快く思ってないようでして……」


「え!? あんなに可愛いのに!?」


「ハッハッハ、そりゃあもう姫さまは可愛いですよ! 気にしてるのは髪の色ですな」


「髪の色? 何か問題あったっけ?」


「それについては私からは言えませんなぁ、姫さまから直接聞いてくだされ。姫さまは今アリス様とご一緒におられるのでな」


 イリス姫は綺麗なピンク色の髪だが、何の問題があったのだろうか。色々と考えているうちに俺たちはみんながいるサロンに着いた。


「あ、クリシュ様! ご機嫌よう」


「ん、イリス姫か、久しぶりだな」


「姫なんて言わないで下さいませ、私たちは婚約しているのですから、イリスと……」


「そ、それはまた今度の機会に……」


「ふむ、クリシュ殿はヘタレですなぁ」


「えぇ、クリシュ様はヘタレなのです」


 総帥にアリスまで勝手なこと言いやがって……一国の姫なんだぞ。本来ならめちゃくちゃ立場が上の人なんだからな!! 緊張するのは当たり前だ! ……国王は殴ったけど。


「クリシュ様は本日どのようなご用件ですか? ついに私を……」


「い、いや、村の整備が終わったから、みんなを連れて行こうと思ってね」


「では! 私もすぐに準備をしてきますね!」


「えぇ!? イリス姫も付いてくるのか!?」


「……ダメでしょうか?」


 だから! 俺の周りにいる女性はどうしてこうもウルウルの目で俺を見上げるのが上手なんだ!


「クリシュ、姫を連れてってやってはくれないだろうか?」


 コクオウガアラワレタ


「いや、姫だぞ!? 村に住むなんておかしいだろ!? しかも辺境だぞ!?」


「ふっ、心配はいらぬよ。イリスは特殊なスキルを持っているからな。むしろ辺境の方がその力を発揮できるだろう」


「いや、そうかもしれないけど! 姫さまを危険な地に連れては行けないって!」


「クリシュ様……私の身を案じてくれるのですね……やっぱりクリシュ様はお優しいですわ」


「ハッハッハ、そうだなイリス。ほら準備して来なさい。クリシュは転移できるしいつでも帰っては来れるだろう?」


「それはそうだけど、王城に気軽に来る貴族ってなんかおかしい気もするんだが……」


「いいんだよ、私たちは友人なのだからな!」


 高笑いしている国王を殴りたくなる気持ちはどうやっても捨てられそうにないな。



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