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奴隷

 

「まさか英雄様方に私共の店に立ち寄っていただけるとは思いませんでした。ここは貴族の方々専門の奴隷館ですので、満足いただける品が揃っていると自負しております」


 俺たちは現在奴隷館の一室に居る。ここは貴族御用達のお店で、外見が良かったり、教養が高かったり、戦闘にかなり強かったりと、高級な奴隷が揃っているのだ。


 俺たちは3人とも晴れて貴族になったので、この店で村の開拓に必要な奴隷を揃えようと考えている。


「知ってると思うけど、私たちは領地を貰えることになったの。だから領地開拓に必要な奴隷を今日は買いに来たわ」


 奴隷商人との会話は基本的に零華に任せることにしてある。

 この丸々と太った悪そうな顔の商人は『魔眼』を持っているからだ。


 ユニークスキルである魔眼には様々な種類がある。他人のステータスを見ることができるものや、嘘を判別できるもの、触れていれば他人の記憶を読み取ることができるものなどだ。


 デイスやこの商人は他人のステータスを見ることができる魔眼を持っており、俺たちが奴隷館に来た時にじっくりとステータスとスキルを確認されたようだ。


 ユニークスキルは1000人に1人ぐらいの割合で持っているが、俺や零華のようにいくつもユニークスキルを持ってることは相当に珍しい。俺はかなり特殊だけどな。


 魔眼を持つ者は奴隷商になることが多いそうだ。自分の持つ奴隷の価値が正確に分かるからな。しかも奴隷商は相当儲けられる。人の人生を売って儲けるってのは日本人から見れば倫理観ぶち壊しだが、この世界では当たり前のことだ。


 俺はデイスからスキルを隠蔽するペンダントを貰っているし、アリスと零華にも同じような効果があるペンダントを、俺が作りだして渡してある。ーーアリスはともかく、零華は魔王だってバレると厄介だからだ。


 魔眼を持ってないと足元を見られそうだし、奴隷商には零華は魔眼持ちであることを確認させたため、交渉は零華に一任してあるのだ。

 念話で俺が指示をするけどな。


「なるほど、それはそれは運がいいですな」


 何のことか分からないけど、俺の運は5しかないぞ。アリスの強運が働いてるのかな?


「どういうことかしら?」


「先の戦争でいくつか貴族が解体しましてな、そこに勤めていた者が私の元に流れてきたのですよ。その者達ならば、教養や礼儀作法、領地の納め方などを身に付けているものが多いでしょう」


「へぇ、それは確かに運がいいわ。アリスのおかげね」


「アリス様は運が素晴らしくいいようですしな」


 俺と零華の運が低いって分かって言ってるなこいつ。多分ジョークだと思うが、人の気にしてることを……


「じゃあその人たち全員連れてきてもらえるかしら? 」


「分かりました。人数が多いので3回ほどに分けさせてもらいますが、よろしいでしょうか?」


「構わないわ」


「では、少々失礼いたします」


 そう言って商人は部屋から出て行った。商人の名前はステータスを確認したから分かるけど、零華の『査定』では完全に黒だったんで、できれば二度と会いたくない。


「この後は私が見て、白の人間を全員買うでいいのよね?」


「あぁ、全員だ。よろしく頼む」


「何人か分からないし、高級奴隷だから値段はそこそこ行くはずだけど……まぁあれだけお金があれば余裕ね」


 零華の魔眼はステータスを見ることが能力ではない。他人の本質を色で認識することができるのだ。


 善人なら白、悪人なら黒って感じに。本当はもっと細かく分けられるそうだが、概ね黒と白の判断でいい。驚いたことに俺の家族や、王家の方々はみんな真っ白だったらしい。零華もここまで白いのは珍しいことだって騒いでたからな。


 人間ってのは善良な奴が少ないようにできてるから、今回買うとしても相当少ない人数になるのではないかと思う。


「お待たせしました。こちらがオススメの奴隷達です」


 真っ黒なやつが10人ほどの奴隷を連れてきた。

 最初の10人はみんな女奴隷で、様々な種族が混じってるようだ。


「順番に紹介しますね。右からエルフのミオ、彼女は男爵のメイド長として長年働いていていてメイドのまとめ役としてはうってつけの人材です。次に……」


 初めてエルフを見たが、やっぱり結構な美人だな。順番に説明してもらい、俺もステータスをすべて確認した。


「……これで全員ですね、番号を言ってもらえれば、その者をここにお連れしてお話をしてもらった後に、契約となります」


 零華と目を合わせて、お互いに頷いた。

 俺の中で、問題がありそうな奴は見つからなかったが、零華は本質を見抜いてるはずなので、零華の意見を優先する。


「じゃあ、5番と16番、あとは21番以外の24人ね。順番に連れて来てもらってもいいかしら?」


「そ、そんなにですか!? ……失礼ですが、ここは高級奴隷専門なので、お値段が少し……」


 そんなことは分かっているが、俺たちが自由に使える金は国家予算並にあるので、多分足りるだろう。


「高級ね……1人当たりどれくらいになるのかしら?」


「そうですなぁ……白金貨1枚はしますかねぇ」


 こいつは腹黒いからもっと安いんだろうけど、人の人生に値段をつけるってのはどうも気が引けるし、値下げ交渉なんていうものは、できればやりたくないな。


「うん、全然大丈夫よ。私たちは英雄なのよ? そこんとこ考慮しながら発言してちょうだいね」


 零華が目を細めてそう言うが、これは『金足りるのか?』という発言に対してであって、『ぼったくろうとしたらタダじゃおかねぇぞ』と言ってるわけではない。ーーと思う。


「これはこれは失礼いたしました。では24人を1人ずつ連れて来ますので、どうぞごゆっくりお話くださいませ」


 腹黒商人はニッコリと笑いながらも、冷や汗をぬぐって、奴隷を呼びに行った。


「そんなに"シロ"がいたのか?」


「えぇ、私も驚いたわ。スキルとかレベルはどうだったの?」


「家事とか礼儀作法はみんな高かったよ。執事は結構レベル高いのが多かったな」


「そう、でも24人かぁ、もうちょっと欲しかったわね」


「いや、そのメンバーは全員ウチの執事とメイドになるんだぞ? 多すぎるくらいだ」


「何言ってんのよ! 辺境伯なのよ? もっと多くてもいいわ! レインはそういうのに疎かったけどね、貴族には見栄ってのが大切なのよ! しかも私たちは3人が貴族なのよ? 24人なら1人当たり8人しか残らないじゃない」


「私には必要ありませんので、お2人で12人ずつどうぞ」


「ダメよ。一応あんたも貴族なんだから、他の貴族にナメられるわ」


「……私はクリシュ様の隣にいれるだけで十分ですので」


「……まぁいいわ。でも形式上はあんたの部下ってことにしなさい」


「はぁ、分かりました」


 そうこう言っているうちに1人目の奴隷がやってきた。エルフのメイドさん候補の女性だ。


「ご挨拶申し上げます。ブロッケン男爵様の下でメイドをしておりました、ミオと申します。メイド長を務めていたので、お力になれる部分も多いと思います。よろしくお願いします」


 奴隷は自分を売り込むように言われてるので、アピールが必要なのだが、このミオという女性はどこか事務的な感じがするな。


「申し訳ありません、私は長年生きておりまして、その人生の大半をメイドとして過ごしてきたので、愛想といいますか、愛嬌といいますか、そういうものを出さないようにしていたら、いつの間にかこの事務的な受け答えが板についてしまったのです」


 顔に出てしまったようだな。


「分かった。さて、まずは雇用形態について話すからそれで納得いかなかったら、俺たちに買われるのを拒否してくれ」


 俺が話し始めるとミオは大層驚いた様子で、アリスと零華を見つめだした。


「こうゆうご主人様なのよ。慣れなさい」


「どういう意味だ?」


「クリシュ様、奴隷に賃金を払うことはいささか普通のことではないので、驚いているのだと思いますよ」


「そうなのか? でも給料貰えなかったら、俺の屋敷に住むとしても、好きなものも買えないし、生活していくのに大変だろ? そりゃそこまでの額を払えるわけじゃないけど、俺は無理に働いてもらうつもりはないなぁ」


「あんたね、月に金貨5枚の賃金って馬鹿のやることよ? この世界じゃ金貨2枚で家族が1ヶ月不自由なく生活できちゃうんだから……しかも週に2日休みを取り入れるのなんて、誰もやってないわよ。せめて週に1日ぐらいにしなさい」


「さらに、クリシュ様の闇魔法で逃げることや、私たちに攻撃することは禁止にするのはいいですが、奴隷からは解放するとは……」


「ちょっと奴隷に甘すぎる気がするわよねぇ」


 えー、そんなに甘かったかなぁ。


「だってさ、例えばミオなんてエルフだから長命なんだよな? 下手したら何十年、何百年も奴隷ってことだろ? そんなの可哀想じゃないか」


「自分を買い戻すっていう手もあるけど、奴隷が金を得る方法なんてほとんどないから実質不可能な話なのよねぇ……ってミオ!? どうしたの!?」


 零華がミオを見てすぐにハンカチを取り出した。見るとミオが涙を流して俺たちの方をじっと見ていた。


「うっぐ、ひくっ、だって……エルフの私が奴隷で可哀想って……私、このまま何年も何年も奴隷なのかな? って、死んだ方がマシなんじゃないかって、ずっと思っていました。そんな私の前にご主人様がたが現れて、賃金とかお休みとか前にいた男爵様よりも条件が良くて……奴隷なのにいいのかな? って思ってしまって……私決めました! 私は皆様に一生お仕えいたします! どんな仕事でも喜んでやります! ……ふぅ、そうです、この後呼ばれてる子たちに、今の話を私から説明させていただけませんか? みんな、同じ職場で働いていた者たちで、私の言葉ならこの夢のような話が真実だと信じるでしょう。私でさえこれが夢なのか現実なのか分からなくなってしまっています、ですから私が説明した方がよろしいのではないでしょうか?」


 泣き顔が途中から、キリッとした仕事のできる女性の顔になったな。俺たちの話をちゃんと聞き入れて、この後どうすれば効率がいいのか、どうすれば納得してもらえるのかをキチンと把握できてる。メイド長をやっていただけあるな、彼女には今後もみんなのまとめ役をやってもらおう。


 その後、ミオから説明された奴隷たちは、みんなして涙を流し、俺たちに忠誠を誓った。みんな零華の魔眼で心が綺麗な人たちなのは分かっていたので、とても良い人材が手に入った。


 ーー店主が黒すぎて二度と会いたくはないが、店自体は定期的に通いたいな。


 奴隷には首輪が付けられており、この首輪に主人の血を垂らして"契約(コントラスト)"することで、奴隷契約は完了する。

 性的な行為は本人の了承なしでは禁止で、過度な暴力を振るわれるようなら、逆らって逃げることはできるが、主人に攻撃することはできないし、基本命令には絶対遵守なのが奴隷だ。


 俺は人が首輪をつけているのが、どうも気に食わなかったので、さっさと首輪を取って闇魔法で奴隷の首輪と同じような効果を持つ『契約魔法』を使った。


『契約魔法』の主人設定は、俺、アリス、零華にしておいたので、全員が俺たち3人の奴隷というか、雇用主になる。


「クリシュ様、少しよろいでしょうか?」


 俺が全員に闇魔法をかけおわると、奴隷商人がニコニコ顔で話しかけてきた。

 彼はミオからの指摘で、予想通りぼったくりだったことが判明しているので、散々零華に値引きされて、怒り心頭かと思っていたのだが、どうしたのだろう。


「なんだ? もしかしてまだオススメの奴隷がいるのかな?」


「はい、実は飛びっきりのがいまして、さっきの奴隷達も警備できるものが多いですが、その奴隷、実はレベルがとんでもなく高く……いえ、クリシュ様やお2人方には及びませんが、まぁ何にせよとにかく強く、国王様から英雄以外の者に、この奴隷が買われると、下手したら反乱が起きるので、皆様方以外には売らないように仰せつかっているのですよ」


 へぇ、そいつは中々良さそうだな。


「ん? じゃあ何で最初に俺たちに紹介しなかったんだ? 俺たち以外には売れないんだろ?」


「いえ、そのですね……強い上に美人で、さらに竜人なので、値段がそこそこ……これはぼったくりでも何でもなく、国王様が定めた適正価格で光金貨50枚もするんですよ。ですので貴族でも買えない奴隷を、最初にオススメするのは少し気が引けまして……」


 いや、お前腹の中真っ黒だから、気が引けるとか思わないだろ絶対。

 多分、俺たちは金無さそうに見えたんだろうな。元子爵家の人間だとしても、辺境出身だし、長男なだけで当主じゃなかったからな。光金貨50枚は流石に払えないと思ったんだろ。

 いや、分かるよ? 5億だもんな。奴隷1人にそんな金かけるなら、その金でそこそこ強いやつを何人も買うよな。


「まぁ、とりあえず見せるだけ見せてくれないか? 多分買わないとは思うけどさ」


 5億で奴隷買った、だなんて言えば家族のみんなからお説教コース間違いなしだからな。買わない方向でいくが、そんだけの価値がついた奴隷は絶対に見ておきたい。


「分かりました。おい、入ってこい!」


 商人のかけ声で入ってきたのは、身長は俺と同じくらいで160センチ。(俺はまだ14歳なのでこれから伸びる……はずだ)真っ赤で艶かしい唇に良く映える翡翠の目と髪。まさに絶世の美女と呼ぶにふさわしい女性だった。


「シリスティーナと申します。ほら、自己紹介しなさい」


「私はシリスティーナ。ある目的のためにこの大陸に渡ってきた。貴殿は英雄だそうだな。レベルは私よりも断然上か……うむ、素晴らしいスキルだ。Ⅹよりも上があるとは知らなかったぞ。貴殿なら奴も倒せるだろう。私はある男に追われていて倒れたところをこの奴隷商人に拾われたのだが、どうか私を買ってもらえないだろうか? あわよくば私と一緒に賢神の使者を殺してもらいたい」


 一気に喋られてしまったが、この鈴の音のように心地いい声に反応してやらないとな。


「この奴隷買った!!」


 アリスと零華が「バカなの!?」みたいな目でこちらを見てるが仕方ないだろう。だってこんなチャンスないんだぞ?



 龍神の使者を奴隷として買うチャンスなんてな。

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