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料理上手と食いしん坊と心配性

 side???


「ここか、奴がいる場所は……」


 目の前にあるのは、掘っ建て小屋と言えるほど小さく、ボロボロの家だ。

 わざわざ別の大陸まで来て、SSSランクの冒険者がいると噂される家まで来たのは理由がある。


「たのもーーう!! ここにSSSランク冒険者、ジバがいると聞いた。俺は剣神の使者シンハだ!! ここを開けてくれねぇかな!」


 俺は出来る限り大声でそう叫び、扉が開くのを待った。

 中から少し物音がして、しばらく待つと扉が静かに開かれた。


「ふむ、まさか使者が俺のところに来るとは思わなかったな。剣神の使者は女だったのか」


 出てきたのは、最強の男と言われても全然ピンとこない容姿の男だった。

 この世界では珍しい黒髪黒目で身長は170半ばほど。筋肉の付きはさほどなく、使者を目の前にしても緊張などはしていないようだった。


「で、何しに来たんだ? 俺を殺しに来たのか? それとも共闘しに来たのか? たしかに魔神の使者は俺にとっても厄介な敵になりそうだが、俺は誰も殺す気はないぞ? 魔物狩りをして、それなりに暮らしていきたいと思っているからな」


「俺も他の使者を殺してまで貢献ポイントを稼ぐ気なんかねぇよ。けど、この前使者のレベルが発表されただろ? 俺は使者の中じゃ最強だと、いや、この世界で最強だと思ってたんだ。そしたら2人も俺より強い奴が居たからな。比較的近い大陸にいたお前に会いに来たんだ」


「なるほどな、会いに来たと言ったが……へぇ、そういうスキルを持っているのか。中々まっすぐに生きてる女のようだな」


「あ、ステータス確認しやがったな!? まぁいいけどよ。俺もさっき確認したしな。お前は俺では真似できないやり方で強くなってるようだな」


「俺のは真似しない方がいいだろうよ。で、会いに来ただけで他に何の目的もないのか?」


「そんなわけねーだろ、せっかくここまで来たんだ、やりあおうぜ!!」


「ちっ、剣神の使者はやはり戦闘狂だったか。その戦い、俺にメリットはあるのか?」


「あぁ? んなもん知るか!! 俺は強いヤツと戦いたいだけなんだよ!!」


「俺は基本的に人間は殺さない主義だ。貴様ほど強ければ手に入る経験値も多そうだが、殺さなければ意味がない。なら戦う意味がない」


「ハッ!!なら俺が魔物狩って稼いだ金やるよ! それならいいだろ?」


「そんなもんいらん。人から無償で貰った金は貢献ポイントにはならないからな。そうだな……勝者のパーティに入って貢献ポイントをパーティリーダーのものとする。という条件ならやってもいいぞ」


「はぁ!? それはつまり敗者はこの代理戦争を降りるってことか!?」


「ほぉ、頭はさほど悪くないようだな。つまりはそういうことだが、どうする?」


「ちょっと待て、そんな大事なことは剣神様に確認してからじゃないと無理だ。俺は戦闘狂だから大事なことは確認しろって言われてるんだ」


「じゃあさっさと確認するんだな。俺も貢献ポイントを大幅に稼ぐチャンスはものにしたいからな。少し待っててやろう」


 俺は早速剣神様に連絡した。

 返答はどんどんやれとのことだ。俺が負けたところでしょうがないことだし、いづれぶつかる可能性もあるからと。ただ1番の理由としては『面白そうだな。俺も破神とやりたいたいぜ!!』ということらしい。

 一応、使者じゃなくなっても加護は残り、連絡は取れなくなり、敗退扱いとなり、7位になるそうだ。死んだ時と同じだ。


「よし、許可ももらったことだし、早速やりあうぞ!!」


「まぁ待て、お前も疲れてるだろう? 一旦中に入って休め。一息ついたら俺が訓練場としている荒野に連れていく。そこで戦おう。自分のHPは確認できるな? 1割を下回った方の負け。敗者は勝者のパーティに入り、今後は勝者の手伝いをする。ということで異論はないか?」


「あぁ! だが、一息入れる必要はない! さっき宿から直接来たばかりだからな! さっさとやろう!!」


「ちっ、戦闘狂が……策を練る時間くらい寄越せ」


「おいおい、最強だろ? お前。そんなもん必要ねーだろ! 荒野に行くぞ!」


「はいはい、分かったよ」


 ーーそして、荒野とその周辺にあった森や川には、その日のうちに、直径数キロにも及ぶクレームや底が見えない斬撃の跡ができ、剣神の使者は代理戦争を敗退することになった。



 ーー


 sideクリシュ


「剣神の使者が敗退して、破神が俺を抜いて貢献ポイント獲得量1位になった」


 俺は今朝リリーに教えてもらったことを、アリスと零華に伝えていた。

 ここは、王都に向かう馬車の中で、住めるんじゃないか? とも思える施設を兼ね備えている。馬は俺が作り出したものなので、行者は必要ない。なので、こうしてソファーに座り2人と話をしていても何も問題がないのだ。


「それはつまり、破神の使者が剣神の使者を殺したってこと?」


「いや、リリー曰く、破神の使者のパーティに入ったそうだ。何やら2人とも殺しあうつもりはなかったけど、勝者のパーティに入って、今後手伝い続けることを賭けてたようだな」


「使者が使者のパーティに入ると貢献ポイントが、パーティリーダーのものになるってことですか?」


「そうらしいな。俺は使者同士が出会ったら絶対殺し合いになると思ってたから、そんな方法があるなんて知らなかったが、提案したやつは意外とまともなようだな。破神の使者が提案したらしいけど、そいつなら、もしかして話が通じるかもな」


「話が通じないことを前提にしてるわね……野蛮なやつばっかりじゃないわよ? あの子だって真面目な良い子だったし」


「前任の魔神の使者か、そういえば、剣神と魔神の使者達はパーティ組んでたんだっけか。恐らくパーティリーダーは剣神の使者だったんだろうな。魔神の使者は最下位のはずだし」


「うん、マルコがリーダーだったと思うわ。そんなことより、今日の夕方には王都に着くわよね? お昼は何にする? やっぱりドラゴン? ドラゴンだったら私尻尾が食べたいわ!」


「そんなことよりって……結構大事な話だったはずなんだが……食い意地張りすぎだろ」


「なによ! クリシュだってアリスの作るご飯はいつも最高だって言ってるじゃない!」


「素材が良いだけですよ、私の腕じゃないです」


「いや、家事レベルⅩが何言ってんだ? アリスより上手い料理作るやつなんて、この世界にいないぞきっと」


「そ、そんなことはないと思います……」


 スキルのレベルは

 Ⅰ〜Ⅲーー初級レベル

 Ⅳ〜Ⅵーー中級レベル

 Ⅶ〜Ⅸーー上級レベル

 Ⅹーー達人やら伝説やら言われるレベル


 ざっくり言うとこんな感じになる。

 つまり、アリスは家事の達人やら伝説の家事師だとかのレベルになるのだ。伝説の家事師って何だよって話になるが……


 家事にはもちろん料理も含まれるので、アリスの作る料理に勝てる料理を作れる料理人はこの世界にほぼいないだろう。限界突破してる料理人がいるなら大金払ってでも食ってみたいもんだな。


 しかもアリスはSランク以上の魔物の肉を使って料理をしてるので、王様でも食えないレベルの味になっている。


 ぶっちゃけ、俺も料理ができないわけじゃない。日本で生きてた頃は専属の料理人が居たからする必要もなかったのだが、料理を作ってみたいと好奇心から、料理人達に教えてもらって何度か作っているので、人が食えるレベルの料理は作れるのだ。


 だから、料理スキルを身に付けたくて屋敷で料理をしていたのだが、アリスに見つかり、「私の料理では満足いただけませんでしたか……?」と上目遣いで瞳をウルウルさせてしまったので、そこから料理を作ることはなくなってしまった。


 ただ、どうしても和食が食べたい時などは、アリスにレシピを教えて作ってもらったりする。アリスは家事に関して、完璧超人であり、理解度も高いので教えたレシピを超えるレベルの料理が出される。

 ……アリスはミシュランとか絶対載れるし、最高ランクの星を獲得できるんだろうな。


「アリスの料理は、俺たち以外に食わせるわけにはいかない。アリスを拉致ろうと考えるやつがいないとも限らない程のうまさだからな。いや、アリスは料理もそうだが、外見も凄まじいほど可愛いから、料理もできると知った瞬間に拉致ろうとする輩は出てくる……」


「はいはい、クリシュは心配しすぎよ。とりあえず、今日は唐揚げがいいわ! クリシュ、唐揚げにしましょ!」


「そ、そうですね! 唐揚げにしましょうクリシュ様!」


 アリスの顔が普段の白さからは考えられないほど赤くなって、頭からは湯気が出ている。まさか、熱があるのか!?


「だ、大丈夫かアリス!? 顔が赤く……って熱い!? 熱すぎるぞ!! 風邪ひいたのか!?」


 俺はアリスの額に自分の額を当てて、体温を確認した。その熱さが尋常じゃないことに、風邪や病気になってしまったのではないかと心配になってしまった。


「く、くく、クリシュ様!? そんな近くに寄られたら……はぅぅ……」


「ちょっ!? アリス!? ……気を失ったのか!? これは本格的にまずい! 『パーフェクトヒー……」


「なに最上級回復魔法使おうとしてるのよ!! ただ単に恥ずかしくて気を失っただけじゃないの!!」


「いや、そんなこと言われても、アリスがこんなに熱を……」


「だーかーらー!! あんたのせいで気を失ったっつてんでしょ!! いいから休ませて、私に唐揚げ出せーー!!」


「おまっ!? アリスが倒れてるのに食う気とか!! 食い意地張りすぎの問題じゃない! 人としてどうなんだ!?」


「私は人じゃないから関係ないわね! 刀だから! さらに魔王だから!」



 こんな風にやり取りしながら王都まで俺たちは進むのであった。

 王都で、ある運命的な出会いをするとも知らずに……


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