SSSランク
俺はいつのことだったか、テンプレを望んでいた時期があった。
冒険者ギルドで絡まれて、それをぶっ飛ばしたら、そいつが実は強かったっていうテンプレ。
実際に体験すると、
「おいコラ! ガキがここに何の用だって言ってんだよ! 聞こえてねーのか!?」
「貴様! クリシュ様にその言葉遣いはなんだ! この方はクリシュ=レンメール様だぞ! この領地を治めているレイン=レンメール様のご子息様に……」
「も、申し訳ございませんでした!! ほら! お前も謝るんだよ! 死にたいのか!?」
「ちっ、七光り野郎か」
「あなた、よほど死にたいようですね、ぶっ殺してさしあげましょう」
「冒険者稼業は遊びじゃねーんだ! 貴族様が来るようなところじゃない!」
なんて、意外とめんどくさいことになっていた。
アリスが売り言葉に買い言葉で、どんどん深みにハマっていく。
……アリスってこんな乱暴な言葉使ったっけな?
まったく、テンプレってめんどくさいんだな。
数々の主人公達にご冥福をお祈りします。
「じゃあテメェらのランクはいくつなんだよ! 俺たちを殺すなんて言うんだから、俺よりランクは高いんだよな? ちなみに俺はBランク。ここのトップだ。さぁ言ってみな! テメェらのランクをよ!」
俺たちにランクを開示しろって?
辱めたいんだろうなこの男は。貴族が冒険者ギルドに顔だして、ランクが低ければここの領地の安全性が問われるってか? レインがAランクなのは有名だが、俺のランクは全く更新していないので、Hランクってことになってるしな。
「私たちはえ……」
「俺たちの実力が知りたいのなら、実際に戦ってみるか?」
「クリシュ様!? 何を言ってるんですか!?」
アリスが驚きの表情でこちらを見ている。
「急にSSSランクって言っても信じてくれないだろ? できるだけド派手にやってやろうぜ」
俺は耳打ちで2人にそう言うと、アリスは困ったような顔して、零華はニヤリと笑った。
「あんた、相当悪い顔してるわよ?」
「なーに、俺たちを馬鹿にしたんだ、殺さない程度にやってやる」
さーて、やってやるかねー。
「ちょっと待ったぁぁぁぁ!!! おい!そこの男! そいつらに、いや、その方々に手を出すのはやめておけ!」
「あん? なんだお前」
「俺は鑑定持ちだよ! その方のランクを見たんだ! お前じゃ勝負にならない!」
あー、鑑定持ちかぁ、俺の計画台無しだな。
「はっ、ランクが低すぎるからか? 俺だってここの領主の息子が、どれくらいのランクなのかは調べがついてるんだ。半殺し程度にしてやる。貴族って言っても、向こうから勝負を申し込んできたんだ。文句言わねぇだろ」
「違う! 逆だ! その方のランクはSSSって出てるんだよ! 一緒にいる方々もランクSSSなんだ! 俺だって意味分かんないんだ! 鑑定スキルがおかしくなっちまったんじゃないかって疑うくらいにな!」
さっきまではガヤガヤとうるさかったギルドが、一瞬静かになった。が、静かになったのは一瞬で、その男の叫びを聞いた者たちが一斉に笑い出した。
「ハハハハハハ!! おもしれぇ冗談だ! そこにいるガキどもがSSSランクだぁ? 聞いたことないぞ? SSSランクなんてな!」
「あいつ鑑定しすぎて頭ぶっ壊れたのか? それにしても……ぷぷっ、SSSランクは言い過ぎだろ」
「あいつ金で雇われたのか? 鑑定してSSSだって言えってさ」
「違う! みんな違うんだ! 本当にSSSランクなんだよ!! お前ら全員相手にしても勝てるくらい強いんだ!」
「お前、もう哀れだぞ?」
「雇われ野郎は帰ってろ」
ひどい罵詈雑言が飛んできてるな。
そろそろ助けてやるか。
「俺たちがランクいくつかなんて関係ないだろ? お前が戦いたいならやってやるからさっさと演習場に来い。ウォルツさん、水晶持ってきてもらっていいですか? 演習場で、みんなの前で更新します」
「え? あ、はい! 分かりました」
「クリシュ様、人が見てる前でやるんですか?」
「あぁ、証人を増やすんだ。零華って登録だけはしてあったよな?」
「したわよ。クリシュ達と魔物狩りする直前に」
「じゃあ犯罪履歴とかに問題はないか」
「何を疑ってるのか詳しく聞きたいわね」
「痛い痛い!! ステータスは俺のが高いはずなのに何で頭がこんな痛いんだ!?」
零華は俺の頭を鷲掴みにしていた。
「私が破壊不能なのをお忘れなく。人間を直接攻撃すれば、壊れるのは人間の方よ?」
そう言って零華は手を離してくれた。
「そんな理不尽なチートはズルすぎる……っていうか、俺が支配してるはずなのに、何でHPが極端に減らない程度の攻撃は通るのか謎だ」
「支配にも色んな種類があるわ。あんたが反射したのは、私があんたの精神を安定しようと思って、かけた支配だったから軽めなのよ」
「そうだったのか……」
そんなことを話しながら俺たちは、ギルドの裏にある演習場に着いた。
少しそこで待つと、数十人ほどの冒険者とウォルツさんを含めたギルド職員2人も居た。
未だにギルドの職員って3人しか居ないんだよなぁ。なんとかしてあげたいけど、それはレインの仕事だろうな。
「俺以外は見学者だ。戦うのは俺と小僧だけ。いいよな? SSSランク様?」
そう言って見学者達はみんな笑い出した。
「それで構わない。ルールは?」
「ルールねぇ、降参するか気を失うまで。何をしてもいい。怪我をしても自己責任ってところだな」
「へぇ、優しいルールだ。降参して終了か」
「あん? 降参なしでやってもいいのか? 気を失うか死ぬまでになるが?」
「俺はどっちでもいい」
そう言うと男はニヤリと笑った。
随分と嫌な笑みを作るもんだな。
「じゃあ気を失うか死ぬまでだ。いいよな? ギルドマスター?」
「クリシュ様がそう仰るのなら構わん」
「へぇ、領主の息子だろ? いいのかよ?」
まぁ、ウォルツさんには時折Sランクの魔物の肉をうちで振舞ってるし、俺がSランク以上ってのは分かってるんだろうな。
上に報告してないのはかなり好感度が高い。
「構わないと言っておるじゃろう? では始めるぞ」
俺は相手の男のステータスを見たが、火魔法のスキルレベルが高い以外に特筆するものはないな。
「じゃあ先ずは魔法を見せてやるよ。テメェみたいなガキじゃ魔法を使えるかも怪しいからな 【我はーー」
「いや、詠唱は珍しいけど、見る必要はないな」
俺はそう言ってやつが出そうとしていた、ファイアーボールを無詠唱で作り出した。
500個ほど。
「!!?? なんだそれ!?」
「いや、お前が詠唱してたファイアーボールだろ。それを500個出しただけだぞ?」
「無詠唱だと……? いや今無詠唱かどうかなんて関係ない……その数はおかしいだろ?」
「何がおかしいのか分からないんだが、ファイアーボールだけじゃ不満か? じゃあ……」
俺はウォーターボール、エアーボール、サンダーボール、ダークボール、ロックボールと、全属性の初級魔法をそれぞれ500個ほどそらに漂わせた。
空が球体に埋め尽くされてるのは、ちょっと異常な光景だな。
「……」
「あれ? 黙っちゃった。どうしたんだ? 攻撃してこないと全部ぶつけるぞ?」
「ま、待ってくれ!! 降参だ! そんな数を出せるやつに勝てるわけないだろ!?」
「え? 降参? ナニソレ。ルールに降参なんてないよ?」
「!?」
「自分の言葉に責任を持とうな」
奴は俺がそう言うと、逃げ出そうとした。
俺はすぐにバインドして全身を固定させた。動かれると当てづらいんだよな。
「一応、バインドの中じゃ最上級だから、抜け出せないぞ。さーて、どの属性から味わいたい? とりあえず、ロックボールからいくか? 一瞬で気絶できるかもよ?」
「本当に待ってくれ!! 死んじまう!」
「死ねって言ってんだよ。俺はともかく、俺の仲間を笑ったんだ。死ぬ覚悟を持って笑え」
「クリシュ様……素敵です」
「ふ、ふんっ!礼は言わないわ!」
「お主らは何を照れておるんじゃ」
あの3人はマイペースだなぁ。
俺が殺しはしないって信じてるんだろうな。まぁ殺す気なんてないが。
「もう……終わりか……」
「じゃあやめてやる」
「え? いいのか!? もうあんた達をからかうことはしない! 約束する!」
「ん? あぁ、初級魔法はやめてやるって意味だ。お前が気絶するか死ぬまでは付き合ってやるからな?」
「なっ!?」
俺は全部の初級魔法を消した。
俺が初級魔法しか使えないって思われるのは嫌だからな。
「【出でよファイアードラゴン】【ウォータードラゴン】【アースドラゴン】【サンダードラゴン】【エアードラゴン】【ダークドラゴン】」
6体のドラゴンだ。実際の攻撃力はほぼない見かけだけの魔法だが、気を失わせるなら丁度いいだろう。
「いけ。奴の命を貪れ」
ちゃんと聞こえたかな?
「そこまで! もう気を失っておる! クリシュ様、止めてもらえますか!」
「あぁ、分かった」
なんだ、ソッコー気を失ったな。
「お疲れ様ですクリシュ様」
「いや、疲れてないでしょ? オークキングより弱かったわよね?」
「Aランクの魔物と比べるなよ。可哀想だろ?」
「ほんとに何者なんだ? あいつら」
「貴族? 冗談だろ? あんな魔法見たことないぞ?」
「だから言ったじゃないか……SSSランクだって……」
「マジなのか? そういや、今から更新するって言ってたな……」
「クリシュ様、ここで更新するのですかな? 一応持ってきてはいますが、更新されますと、冒険者ギルド全てにクリシュ様の情報が流れてしまいますが……」
「あぁ、更新する。今は俺たちの爵位が欲しいのと、こうやって絡まれるのを防ぎたいんだ」
「そうですか……分かりました。では、皆さま水晶に触れて貰えますかな?」
俺たちは水晶に触れた、もう引き返せないが、自分の身は守れるくらいには強くなった。使者たちよ、来るなら来い。
返り討ちにしてやる。




