零華3
「お、おいクリシュ? これはどういうことなんだ?」
「見ての通り、俺の新しい仲間になった零華だ。魔族だけど優しい奴だから危害はないよ。この家に住んでもいいかな?」
「ごめん、待って。整理させてくれ」
「レイン様、零華殿は温厚な魔族のようですし、ステータスもかなり強力なので、必ずやクリシュ様の助けになると思います」
マルティナには既に、朝俺を起こしに来た時に紹介してある。
HP∞については説明しようがなかったので、強力すぎてこうなった。と伝えたら驚きながらも、説得に協力してくれると言ってくれた。
「ねぇ、クリシュ。その子とどこで出会ったの?」
「森の中だよ。かなり深いところで暮らしてたんだ」
「いつ出会ったの? レベル1なのに森で暮らしてたの? 本当に危険はないの? どういうスキル持ってるかちゃんと聞いたの? 年齢はいくつなの? クリシュとどういう関係になりたいと思ってるか聞いてるの? その子は……」
「だぁぁぁ!! ちょっと待ってくれ母上! そんな一気に聞かれても分かんないよ! そういうのは本人に聞いてくれよ!!」
「ねぇ、クリシュ。あなた使者ってこと隠してるの? 使者だってちゃんと言わなきゃ、私のこと説明できないんじゃないの?」
「なっ!? お前何言ってんだ!!」
「クリシュ? 使者って何の話だ?」
「い、いや、その、使者ってのは、ほら! 森で暮らす魔女の弟子っていうか……なんていうか……」
「クリシュ様。私も零華さんの話はかなり色々と聞きたいですが、使者についての話をこれ以上隠すのは不可能では?」
「俺たちには言えないような話なのか?」
「アリスは知っているの? アリスには言えて私たちには言えない話なのかしら?」
「クリシュ様。私たちは絶対に口外しませんよ?」
「マルティナや私に言えないような話でしたら席を外しますが、レイン様やエル様に隠しごとはお2人がひどく傷つきますので、どうかお話になってもらえませんか?」
「ほら、もう限界ですよ?」
「ごめん、まさか家族にまで隠してるとは思ってなかったわ。でも信頼のおける人たちに伝えるのは色々と楽だと思うわよ?」
「分かった。家族のみんなには本当のことを話すよ。けど零華は以後こういうことがないように気をつけてくれ」
「分かってるわよ」
俺は、転生したこと。使者の願いはもう決まっていること。以外の全てを話した。
リリーとは生まれた時から、頭の中で話すことができるということにしてある。
自分の子供が転生したヤツだと知ったら、取り乱しかねないからだ。
「クリシュがリリー様の使者……英雄どころじゃないじゃないか」
「そういうわけで、俺は貢献ポイントを集めるために、魔物を倒したり、貴族になったりしたいと思うんだ」
「そういうことなら俺たちもできる限り協力しよう。貴族に関しては、成り上がるためのノウハウみたいなのも教えられるだろうしな」
「ありがとう父上。こういうことになるなら、もっと早く伝えておくべきだったかな」
「そうね、もっと早く知りたかったわ」
「ごめんね母上。みんなも、このことは内緒にしておいてほしい。俺が強くなるまで他の使者から狙われるのは避けたいからな」
「任せ(ろ)(て)((て下さい))」
「心強いよ。後、零華は元々妖刀だったんだ。今は俺の能力で擬人化を得て、封印前の姿に戻ってるけどな」
「そういうことでしたか、なら、殺します」
アリスが一瞬で零華との距離を詰め、首元にナイフを突きつけた。
ナイフは剥き出しの肌に吸い込まれていき、甲高い音を立てて折れた。
「いったぁぁぁぁぁ!! いきなり何するのよ!?」
どうやら、HPは∞でも痛みは感じるようだ。
「Sランクの魔物から作ったナイフだったのですが……これが魔王の力ですか……でも、クリシュ様を苦しめた罪を償ってもらわないといけません。死んで下さい」
「ちょ、やめてってば!」
アリスはメイド服から、どこに入れてたの? と疑問に思うほどのナイフを取り出し、零華に投げまくっていた。
アリスのメイド服は魔物から作った特別製で、そこらの鎧よりもよっぽど頑丈な作りになっている。
「アリス、零華は俺を心配して声を掛けていたようなんだ。そこらへんにしてやってくれないか?」
「クリシュ様がそうおっしゃるのなら」
「ちょっと! あんたもっと早く止めなさいよね!」
「俺が疲労を感じていたのは変わらないからな、これぐらいの報いは受けてもらわないと」
「支配して助けてあげようと思ってたのに!!」
「そう言うのなら、ちゃんと声かけろよな」
「鞘から出してくれなかったのはあんたじゃないの!」
「あなた、クリシュ様にその口の利き方はなんですか? クリシュ様の奴隷でしょう?」
「奴隷じゃないわよ! 支配されてるだけよ」
「同じ意味じゃないですか!」
「違うわよーー!」
どうやらこの2人は仲が悪いようだな。
「ほら、2人ともその辺にしよう。他のみんながついてこれてない」
「ふんっ」「はい」
全く、先が思いやられるぜ。
「で、零華をここに住まわせてもいいかな? 魔族に対して偏見を持ってる人って村の中にも居ると思うし、外に出すのは躊躇われるんだけど」
「それくらいなら全然大丈夫だぞ」
「ありがとう父上。他のみんなもいいかな?」
みんなは笑顔で頷いてくれた。
やっぱり俺の家族は最高だ。
その日は零華の歓迎会が開かれ、俺が狩ったSランク魔物の肉が振舞われた。
みんな笑顔で素敵な時間となった。
「そうだ父上、結局ダリルは何のために来たの?」
「ん? あぁ、あいつは国を滅ぼすために来たんだと思うぞ。この森に生息する魔物を使ってな。お前のおかげで未然に防げたけど」
「はぁ!? 国を滅ぼすって、何で!?」
「あいつは元々大公家の人間でな、魔法の才能があったために貴族としてじゃなく、国を守る騎士みたいな役目を持ってたんだ。どんどん実力を示していって、将来は国に多大な貢献をするだろうと言われていた。けど、あいつは大公家の人間というのにコンプレックスを持ってたらしくな、従兄弟たちはみんな王子なのに、自分は騎士。それが嫌で、国王になりたがってたのさ」
「それが魔物を使って国を滅ぼすのに、何の関係が?」
「国が滅亡しかけた時、その魔物を倒したら英雄だろ? そしたら国王になれるとでも思ってたんじゃないかな」
「馬鹿げてるな」
「違いない」
「でも何で父上は、ダリルについてそんな知ってるの?」
「ダリルは昔、俺の騎士団に居たことがあったんだよ。才能がありすぎて、すぐ昇格していったけどな」
「へぇ、そうだったんだ」
「まぁ、この国に俺より実力が高いやつなんてそうそういないから、こんなことはしばらく起きないだろ」
「しばらくってことは、いつかは起こるかもしれないってこと?」
「そうだなぁ、辺境って言ってもここは村規模だからな。町になったら、簡単には滅せないけど、村だったら実力があれば一瞬で滅ぼせるだろうしな」
「そっか、いつか町にしたいね」
「あぁ、今の俺の夢だよ。この村を町にするのがな」
「どうやったら町にできるの?」
「人が増えれば自然と町になると思うぞ。まぁ他にも色々条件は必要だが、この村は俺が作った村だからな。元々人数が少ない上に、冒険者なんて皆無だから、辺境としては最悪の条件だな。何かウリにできるものがあればいいが」
「難しい問題だね。特産品もないし」
「まぁ気長にやっていくしかないだろう」
村から町にするためには人が必要か……
あんなことがもう起きないために、町に発展させたかったが、中々難しそうだ。
ーー
「魔物狩りって初めての経験だからワクワクするわ!」
歓迎会から1日が経ち、俺たちは森の中に来ていた。
今日は零華のレベリングをするために、現時点での最強装備を全員が身につけていた。
アリスは金髪に良く映える、紺と白のメイド服に、聖王の杖。
零華は魔物から作った、白を基調とした盾と軽鎧にロングソード。
俺は鎧は着けておらず、魔物の繊維から作った青色の服とロングコートに、複製零華を身に着けていた。
零華の複製スキルは、昔から持っていたようで、魔王として会議をするのが面倒だった時に、身代わりとして置いていたりしたらしい。
命令しなければ喋ることや、動くこともできない、ただ自分の複製を作るゴミスキルと零華は言っていたが、俺はチートスキルだと思った。
複製した零華を刀の状態にすれば、破壊不能の神刀を使えるのだ。
零華が擬人化した時から、神刀を諦めていたが、まさか使えるとは思ってなかった。
破壊不能の刀なのだから、斬れ味は抜群どころの話じゃないはずだ。
「パーティ設定になってるから、Sランクの魔物を中心に狩ってパワーレベリングするぞ。零華は俺とアリスに、昨日ポイントで得た付与魔法をかけておいてくれ。それで勝手にレベル上がってくから」
「えぇ!? じゃあ私は魔物狩れないの!?」
「お前が魔物を狩ることになるのは当分先の話だ。MPも魔力もない今のお前じゃ、Sランクなんて狩れないからな。俺たちはさっさと強くならなきゃいけないから、Sランク以下は狩るつもりないし」
「じゃあいくつくらいのレベルになったら狩っていいわけ!?」
「うーーん、絶対とは言えないけど、最低レベル80だな」
「そんなの何年も先の話になるじゃないの……」
「そんなことはないと思いますよ? ね! クリシュ様!」
「あぁ、Sランク中心に狩ってくわけだから、俺たちだってレベルアップはするんだ。レベルが上がったら、SSランクにだって挑戦していくはずだから、より効率は高くなる。半年くらいで俺たちの水準まで来てもらうぞ」
「中々のハードスケジュールってわけね。でも小物を見つけたら私だって戦うわよ?」
「おう、頼むよ」
そうして、零華の効率レベル最大パワーレベリングが始まったのだった。
明日は主な登場人物と3章を投稿します!




