零華
「随分と急な方針転換だな。俺を支配するつもりじゃなかったのか?」
『そのつもりじゃったが、我が悲願は叶うことはないだろうからな。じゃったら我はマルコとルカの後継者を支援するわ』
「ちょっと待て、お前剣神と魔神の使者の顔見知りなのか?」
そう言うと、気配察知で後ろに人が居るのに気付いた。
「そいつはあいつらの友人だ」
孤高の魔女デイスだ。
また前任の代理人の関係者か。ちょくちょく出てくる名前だな。いつか調べておくか。
『ふむ、デイスか? 既にクリシュと顔見知りじゃったのか』
「私は最近この辺に住んでてな。しかしお前、その喋り方は何だ? 昔は違っただろ?」
『こっちの方が威厳でるじゃろ?』
「「いや別に」」
『ハモるな!!…… やめた方がいいじゃろうか?』
「気に入ってるならそのままでもいいんじゃないか?」
「私は昔の方がまだ喋りやすかったな」
『意見が別れたなぁ、んーー、まぁ気に入ってたわけじゃないし、昔の方にしとくわ』
妖刀の喋り方が変わり、かなりフランクになった。
うん、こっちのがいいかもな。
『さてと、どこから話すべきかな?』
「最初から話すべきだろうな、クリシュはお前が何者で、なぜあいつらと顔見知りで、今は刀に封印されているのか知らないからな」
『それもそうね。そうだ、デイスはこの封印解けちゃったりする?』
「私には無理だな。マルコは多分ユニークスキル使って封印したんだろうしな」
「マルコが封印したのか?仲間だったんじゃないのか?」
『その辺もちゃんと説明するわ。まずは私についてからね』
ーー
side妖刀
『私はね、魔族なのよ。魔族がどういう存在なのか知ってる?』
「ある程度は知っているが、最初から説明してくれると助かる」
『分かったわ。まずは見た目だけどね、人間の髪の色ってかなりカラフルでしょ? けどね、赤髪って存在しないのよ。血の色を表す赤髪はね、忌み嫌われる者の証明。魔族はみんな揃って赤髪なの』
「村にも赤髪は居なかったな。つまり魔族は見ただけで魔族って分かる風貌な訳か。でもそれ以外に見た目は人間と同じなんだろ? なんで嫌われる必要があるんだ?そもそもなんで魔族って呼ばれてるんだ?」
『ちゃんと説明するわよ。魔族っていう名前の由来はね、魔物を使役するって人間に思われているからなの。魔物ってテイムされたモンスター以外は基本人間を襲うでしょ? だからその魔物を使役している魔族は人間の敵ってことで嫌われているのよ』
「嫌われているというより、見つけたら殺せとまで言われているぞ」
「それは昔からなのか?」
『少なくとも私が生まれた時には既にそういう風に言われていたわね』
「そもそも魔物を使役する者達イコール魔族って意味だからな。魔族って名前が付けられた時にはもう嫌われていたのだろう」
『実際は使役するわけじゃないんだけどね』
「ん? どういうことだ?」
『私たちは魔物を使役するんじゃないのよ。魔物に襲われることがないだけなの』
「例えばな、村を魔物が襲ったとするだろう? みんなが魔物に襲われてる中、全く被害を受けない者が居たとすれば? そしてそれが毎回だとすれば?」
「そいつが魔物を使役して村を襲わせてると思う奴がいるだろうな」
『そういうことなのよ。簡単に言うと全ての魔物をテイムできるけど、使役はできないみたいなものよ』
「なるほどね、でもそう言えばいいじゃないか。自分達は使役できないってさ」
『言わなかったと思う?』
「信じてくれなかったってことか」
『そう言うことよ。で、私たち魔族は全大陸で嫌われて、色々な場所でひっそりと暮らしてるってわけ。私はそのひっそりと暮らす集落の1つの長で、魔王って言われてたのよ。魔族の王で魔王』
「お前のことは大体分かった。となると次は……」
『マルコ達との出会いの話ね、彼らとの出会いは……』
「ちょっと待て、その話は戦争が終わってからの方がいい」
「なぜだ? 俺にとっては重要な話なんだぞ?」
「クリシュが心優しい奴だった時に、目的が変わってしまう可能性があるからだ。私はお前をこの戦争に勝たせたい。でもそいつの話を聞いて第1優先事項を、戦争の勝利から変えてしまうなんてことになり得るから、今はその話を聞かない方が良い」
「俺はそんな簡単に目的を変える気なんてないが、それほどの話なのか?」
「ルカも同じことを言ってたよ。けどそいつの話を聞いて戦争の勝利なんざ目もくれず、違う目的の為に動いたんだ。だからお前は戦争に勝ってからそいつの話を聞け」
『そうね、私もそれが良いと思うわ。ルカは本当に優しい子だったから、あんな感じになっちゃったけど、あんたがそうならないとも限らないしね』
「俺は絶対勝たなきゃいけない理由があるから、戦争を離脱することなんてないとは思うけどな。まぁいつかは教えてくれ」
『分かったわ。マルコの封印も解けないだろうし、私が自由になるまではあんたに協力してやるわ』
「それはありがたい話だな。妖刀を使えるとは思ってなかったよ。それはそうと、何でお前は俺が使者って気付いたんだ? 俺はこの首飾りを付けてたんだぞ?」
そう言ってクリシュは首飾りを取った。
気付いてないのかしら?
『あんた気付いてないわけ? 私はあんたを支配しようとしたじゃない? それが反射されて逆に支配されちゃったのよ』
「なるほど、それでクリシュのステータスが見えるようになったということか」
『そういうことよ。でも剣神と魔神の使者ってのには驚いたわ。今回の特別ルールなわけ?』
「そういうわけじゃない。そうだな、お前たちには言っておくべきかもしれないな」
クリシュは私たちに彼が異世界から転生してきたことを説明した。
異世界で剣神と呼ばれるほどの剣の腕なら加護を持つことはあるんじゃないか? とクリシュは言ったが、それはありえないと思う。神ってそんなレベルじゃないから。
『ねぇ、クリシュってもしかして……』
「それも今はまだ言うべきでは無いと思うぞ。全ては戦争が終わってからにするべきだ」
『それもそうね、今伝えても混乱するだけだわ』
「何か知ってれば教えてほしいんだけどな。俺もそれなりに修行してまぁまぁ強くなってるわけだし」
「甘いぞクリシュ。使者のレベルやステータスは半端なものではない。剣神や破神の使者はともかく、他の奴らは徒党を組むことも十分にありえるからな」
『なら、あんたも協力してあげればいいじゃない』
「私は……」
「いや、大丈夫だよ。もう十分協力してもらってるから」
「クリシュ……」
「でも、これからもアドバイザーとして協力してくれるっていうのならこちらとしても是非お願いしたい」
「フッ、そうかそうか、それならお安い御用だ。私はいつでもあそこにいるから気軽に来いよ。転移で来てもいいからな。何なら風呂中に入って来ても私は気にしないぞ?」
「俺が気にするから遠慮しておく」
私たちはその後も談笑して楽しんだ。
久しぶりに人と喋って、笑い合った気がする。
悲願を達成するのは当分先のことになると思うけど、私はクリシュと共に戦い抜いていこうと決めた。
『そうだ。あんた私に名前つけてよ』
「ん? 名前くらい元々持ってただろう?」
『いいのよ、そんな古い名前。私は妖刀として生まれ変わったんだから、あんたが私に名前つけて!』
「クリシュ。できればつけてやってくれないか? 私からも頼むよ」
「そうか……わかった。けどなぁ、妖刀だし、日本風の名前にしたいんだけどいいか?」
『むしろ、どーんと来なさい! 日本って異世界よね? 異世界の名前ならこのラビリスだと唯一無二の名前になると思うわ』
「そっか、それじゃあ『零華』っていうのはどうだ? 俺が前世で愛用してた刀の名前なんだけど、こいつだけが愛刀って言えるほど信頼してた刀なんだ」
『零華ね……うん! いいわ! 私は今日から零華として生きるわ!』
「あぁ、よろしくな相棒」
『えぇ、よろしくね相棒』
私たちはお互いを相棒と認め合った。
私はクリシュと相棒として、これからずっと彼を救って、新たな人生を生き抜いてやるんだ!
「なぁ、2人共ちょっといいか」
『「うん?」』
「クリシュのユニークスキルが解放されてるんだよな。絶妙なタイミングでこんなスキルが解放されるか? ご都合主義すぎじゃないのか? って疑問になる感じで」
デイスがそう言ったので2人でステータスを確認する。
そこには、さっきまで『……』と表記してあったスキルが変わり
『神刀昇華』
・自分の持つ刀の中で最も信頼している刀を神刀に昇華する。
・神刀は破壊不能属性を持つと共に、ユニークスキルを2つ所有する。
・このスキルは1度使うと消滅する。
と書かれていた。




