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戦争代理人 神の使者で異世界へ  作者: ドラロー
1章 幼少期〜少年期
19/54

自分にできること

 sideアリス


 クリシュ様が意識を失って3日が経ちました。私はMPが尽きるまで回復魔法や解毒魔法をかけ続けました。


 しかしクリシュ様は一向に目を覚ます気配を見せません。


 刀を握り続けているのが原因なのかもしれないと思い、何度も刀を取り上げようとも思いました。


 私が触ろうとするたびに私は不可視の結界に阻まれて失敗し続けました。


 他のみんなはクリシュ様を治すために色々試していますが、なんの成果も得られていません。


 お母様やお父様は一睡もしていない私に休めと言ってきますが、クリシュ様が妖刀と戦っている中、私だけが休むなんて許されません。


 ーー


 1週間が経ち、クリシュ様がようやく目を覚ましてくれました。


 しかし様子がおかしいです。いつものように笑顔なのですが、時々すごい苦しそうな顔をします。


 クリシュ様の中で何が起こっているのでしょうか。


 ーー


 2週間が経ちました。


 クリシュ様は最近ずっと部屋に閉じこもっています。


 大好きな魔物狩りもせず、部屋の中でずっとぶつぶつ喋っています。『魔王が封印されている』刀を使ったからだということは分かっています。

 しかし私にできることは限られています。

 回復魔法は効かないし、私と喋ってる時、クリシュ様は笑顔を絶やさないので、私に悟られたくないと思っているのでしょう。


 クリシュ様は甘いですよね。私がいつもどれだけクリシュ様のことを見ているか知らないから油断するんです。無理してるって丸わかりなのに……

 私は魔王の支配に無理して耐えているクリシュ様を見ていることしかできません。


 ーー私は無力だ。


 主人が辛い目に遭ってる時に見ていることしかできないメイドなんていらない。


 私は無力でいらないメイドだ。

 けど!! けどけど!!私は最後まで諦めない!! クリシュ様だけは救ってみせる!!


 ーー


 sideクリシュ


 あの戦いから1ヶ月が経った。

 俺は目が覚めてから部屋に閉じこもっている。頭の中でずっとナニカが話しかけてくるんだ。


 でもなんて言ってるか分からない。


 昼夜問わずにずっと声を掛けてくるから寝不足気味になっている。


 こんな状態で狩りをしてもミスを起こしそうなので、俺は部屋に閉じこもって魔道具を作ったり、部屋の外に出た時は魔法の実験をしたりしていた。


 そういえば、2週間ぐらい前からアリスは俺の前に姿を見せなくなった。

 気になってマップで探してみたが、どうやら森の中に居るらしい。きっと魔女のところに行ってるのだろう。

 なにせ、1度も帰ってきてないのだから。



 また2週間経った。


 俺は魔法の実験を終了させた。

 魔法は魔力操作とイメージの掛け合わせで発生させられることに気付いたので、詠唱で定められた魔法を使うのではなく、イメージの力だけで魔法を使えるのではないかと思い、やってみたらできた。

 これで他の誰にも使えないオリジナルの魔法を使えるのだ。……目立つからできないけどな。


 アリスはまだ帰ってこないが大丈夫なのか? マルティナやトールは何も言わないから分からないが、レインやエルは明らかに気落ちしている。


 HPは常に満タンだがMPは常に半分以下だ。修行でもしているのだろうか。

 うーん、一度見に行ってみるか


「父上、母上、俺ちょっと森に行ってくるよ」


「もう体調はいいのか? 1人でいる時でさえぶつぶつ言ってただろう?」


「そうよ。アリスから聞いたわ。あなたの持つ剣が呪われていて、それがあなたを乗っ取ろうとしてるって。私たちには何もできることがないから、心配することしかできないのよ?」


「心配かけてごめんね。体調は万全なんだ。けど、どうすればいいのか分からなくてね。アリスがずっと森の中にいるみたいだから行ってくるよ」


「クリシュは聞いてなかったのか?」


「え? 何を?」


「アリスはね、クリシュを救おうと森の中に入っていったのよ? 高ランクモンスターをいっぱい狩ればクリシュのためになるからって。私たちは危ないことしちゃダメって言ったんだけど、マルティナもトールもそれが自分のやるべきことなら自由にしなさいって言っちゃったのよ。だから止められなかったの。言うのが遅くなっちゃってごめんね」


「なんだよそれ……」


 俺のために……?今までずっと森の中にいたのか? まさか、貢献ポイント稼ぎか? いやいや、そもそもアリスはそこまで戦闘系のスキルを持ってないんだぞ? しかも森の中で1ヶ月過ごすなんて、どうやって寝てるんだ? ご飯は? マップもないから迷ってるんじゃないのか? 助けを求めてるんじゃないのか?


 ここまで考えておれはすぐに転移した。するとそこには魔物に囲まれて、ぼろぼろの布を纏い、髪が乱れに乱れたアリスの姿があった。


「クリシュ様!? どうしてここに!?」


「待ってろ! 今助ける!!」


 俺は身につけたばっかりのイメージ魔法を使い、雷の剣を周りの魔物にぶっ刺しまくった。


「その魔法はいったい……いえ、そんなことよりクリシュ様!! お体は大丈夫ですか?」


「全然体は平気なんだよ。俺よりアリスのがひどい」


「あっ……ちょ、ちょっとクリシュ様は後ろ向いてて下さいね! いえ、見たかったら全然良いんですけど、みっともないところはやっぱり見せたくないので」


「見たくないって言えば嘘になるんだけど、今日のところは後ろ向いておくよ」


 俺のために、ぼろぼろになるまで魔物を狩ってくれた彼女の健気さを、とても愛おしいと思った。今だけではない。これまで俺は、この子の忠誠に、優しさに、頑張りに、何度も心を救われてきた。振り返ってみるとそのどれもが愛おしく、そしていじらしく思える。そうか、俺は、アリスのことーー


「お待たせしましたクリシュ様。遅くなりましたが助けて下さってありがとうございます!」


 彼女の恥ずかしそうに、はにかむ笑顔はまるで天使のようだった。


「そもそも俺のために魔物狩りをしてくれてたんだろ? なら俺の方こそお礼をを言うべきだ。ありがとうアリス」


 そう言って俺たちは笑い合った。

 久しぶりの幸せな時間だ。


「そうだ。アリスは大体どれくらいの魔物を狩ったんだ?」


「えっとですね、毎日Sランクは10体狩ってました。それ以下のランクの魔物はクリシュ様のマップがないと避けられないので出会ったらその都度倒してました。最初は食事も睡眠も取らなかったんですけど、何とか魔女さんのところに辿り着いて、事情を説明したら泊めてくれるようになったので、その周辺の魔物を狩ってましたね」


「それは……随分と壮絶な1ヶ月だったんだな……もう1度言わせてくれ、ありがとうアリス」


「私はクリシュ様のメイドですから、これぐらいしかやれることはなかったですが、お役に立てたなら嬉しいです」


「魔女にお礼を言って帰ろう。アリスのおかげで『状態異常無効』が取れるぐらいまで貢献ポイント貯まってるからすぐにでも試したい」


「はい! ポイント足りてたんですね!よかったで……」


 言いかけてアリスは寝てしまった。


 やっぱり相当疲れてたんだろうな。

 ステータスとんでもないことになってるし


 アリス

 lv 126

 ランクSS

 称号 『クリシュの専属メイド』

  『レベリングの鬼』

  『魔の森を闊歩する者』


 HP 19500

 MP 24000

 筋力 8200

 体力 7900

 敏捷力 10200

 魔力 17400

 魔法防御 10600

 知力 5000

 運 150


 スキル 『敏捷上昇Ⅹ』『短剣Ⅹ』『投擲Ⅹ』『礼儀作法Ⅹ』『身体強化Ⅹ』『治癒魔法Ⅹ』『付与魔法Ⅹ』『MP増加Ⅹ』『魔力増加Ⅹ』『無詠唱』『MP消費半減』『魔力制御Ⅹ』『聖女の加護』『鍛治Ⅹ』『調合Ⅹ』『気配察知Ⅹ』『危機察知Ⅹ』『錬成Ⅹ』『鑑定』『強運』『闘技Ⅴ』『忍び足Ⅴ』


 ユニークスキル 『猫耳聖女』


『魔の森を闊歩する者』

 ・森の中ではステータスが30%上昇



 その後俺は魔女にお礼を言って、アリスを背負いながら家に帰ってきた。


 家族のみんなは笑顔で出迎えてくれた。

 マルティナやトールはアリスが帰ってきたことで、泣きながらの笑顔だった。やっぱり心配でたまらなかったんだろうな。


 アリスをベッドに寝かし、俺は部屋に戻って妖刀を取り出した。


「さて、俺に話しかけていたのはお前でいいんだよな?」


『…………………、……………!!』


「やっぱり、何て言ってるのか分かんないけど、絶対喋ってるんだよな」


 俺はアリスの努力の結晶である貢献ポイントを使って『状態異常無効』を取得し、鞘から抜いてみた。


『やっと、鞘から抜いたな!! 呼びかけ続けた甲斐があったわ!! さぁ我に支配されるがよい!』


「なるほど、鞘から抜けって呼びかけてたのか。なんて言ってたのか分からなかったけどスッキリしたわ」


『そうなのじゃ、お主は全然鞘から抜かないから支配できなくて困ってたのじゃ。この前の戦闘では1分しか抜いてなかったからのぉ。ってそんなことはどうでも良いのじゃ!さっさと支配させんか!!』


「なるほど、だから完全に支配されなかったのか。ちなみにもうお前の支配効かないから、いくらやっても無駄だぞ?」


『ハッ、何を言い出すかと思えば! 我は魔族の王だぞ? 不可能などないわ!』


「バカが。他人のスキルを見ることもできない無能め。刀としては素晴らしいがそれ以外は全然ダメだな」


『ムッキーー!! そこまで言うなら見てやるわ!! …………』


「ん? 黙った? なんだお前、他人のスキル見れんのか?じゃあ魔女から貰った首飾り外してやるか。俺と一緒に居るなら知っておいた方がいいし」



『……ふむ、お主使者じゃったのか。しかも剣神と魔神か……よし、決めたのじゃ。我はこの身が砕けるまでとことんお主に協力しよう』

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