俺とネコミミ奴隷ちゃん
--- 1日目 ---
俺がこの異世界に転生……転移? してから今日で約一ヶ月。
チートを活かして冒険者をして、頑張って金を稼いでそれなりの金額が貯まった。
なので、以前からの目標だった美少女奴隷を買ってみた。
「よろしくお願いします、ご主人様」
今回買ったのは猫系獣人の女の子。獣人とはいってもケモ度は低く、人間に猫の耳としっぽがついている程度の違いしかない。
他に犬系獣人や狐系獣人が存在するのだが、そちらは値段が高いので諦めた。色々と理由はあるらしいが、猫系の子は安めらしい。
「あぁ、よろしく」
俺はそう答えつつ、彼女の頭をぽんぽんと撫でる。彼女を買った理由は主に二つで、メインの役割は性欲の発散。サブの役割は家事だ。
現在俺は冒険者をして生計を立てているが、この異世界は変なところでリアルで、女子供はほとんど戦力にならないのだ。
彼女を戦いの場に出したところでチート持ちの俺とは実力がかけ離れているし、足を引っ張るだけで役に立たないだろう。
彼女は現在あまり栄養状態がよろしくないようで、痩せ気味で胸も薄いけれどそれなりに美少女だ。それに何より、処女である。
せっかく奴隷を買うのなら中古よりは処女の方が良いよな。その方が俺としても愛着が湧くし。
ともあれそんなわけで、その日の晩早速俺は彼女の、奴隷ちゃんの処女をおいしくいただいた。
--- 2日目 ---
朝起きると、奴隷ちゃんの様子がおかしい。
俺の顔をずっと、じーっと見つめてくるのだ。
いやまぁ、買ったその日に直ぐさま食べてしまったのだから、気持ちがまったくわからないというわけでもないのだが……いや、まったくわからん。何かおかしくてもそれが自然だとは思うものの、彼女は一体今何を考えているのだろう。
「俺の顔に何かついてる?」
「いえ……そういうわけではないのですが」
「そうか」
今日は彼女と買い物だ。昨日も彼女の購入後に一緒に買い物したが、短い時間では買い切れなかったものが多いからな。
現在の住まいは借家だが、冒険者としての収入は十分あるし、家事は彼女が受け持ってくれるのだから生活の水準を徐々に引き上げたい。
実際彼女は特に文句を言わず、今朝の朝食も用意してくれた。夜の性行為も断らなかったし、それなりに協力的ではあるようだ。
今日見て回るものは彼女の服や身の回りの物が多い。それらを買う度に、彼女は同じ言葉を口にする。
「ご主人様、ありがとうございます」
「まあ、必要なものだからな」
女の子は基本着飾った方が可愛い。町を一緒に連れ回すにしても、一目で奴隷とわかるボロ布を着せるよりは普通の服を着させた方が良いからな。
一応彼女の首には奴隷ということが一目でわかるように革の首輪が巻かれているのだが、特にそのことで彼女を差別する店員はいない。
奴隷商で説明を受けた時もそうだったが、この国での奴隷の扱いはそれほど悪くないようだ。
実際周囲を見てみれば、うちの奴隷ちゃんと同じく首に革の首輪を巻いている女性がそれなりにいる。お店の女性店員でもそういった人は珍しくない。
一方、男の奴隷は一切見かけない。奴隷商でも売られていたのは女性だけだったし、男の奴隷は基本鉱山などで労働についているそうだ。だから街にはいないのだという。
ちなみにその首輪。単なる革のベルトであって、魔法的な効果は一切無い。奴隷の女性には着用が義務付けられているものの、それこそ奴隷ちゃん自身ですら簡単に取り外せてしまうものとなっている。
実際昨夜抱いた時には首輪を外していたしな。朝食を食べる時には再び身に着けてたけど。
この世界の奴隷制度はなんとも不思議だ。
--- 7日目 ---
奴隷ちゃんの顔に、段々と笑顔が増えてきた。
夜の生活にも慣れてきたようで、初め抱いた時は身を固くして痛がっていた様子だったのが今では少し気持ち良くなってきたようだ。
俺も少しは経験を積んで上手くなれた気がする。
彼女を買ってから三日間は冒険者稼業を休んでいたが、四日目からは仕事を再開した。俺が仕事に行っている間は奴隷ちゃんは町で留守番。主に掃除と買い出し、夕飯の準備をお願いしてある。
そうしたところ昨日から、俺に朝お弁当を作って渡してくれるようになった。
「行ってらっしゃいませ、ご主人様」
「ああ、頑張ってくる」
まだ表情の変化には乏しいが、気持ち笑顔でそんな台詞を言って彼女は俺を見送ってくれる。
まるで新婚夫婦のように思えるのは俺の気のせいだろうか。……うん、たぶん気のせいだよな。彼女はあくまで奴隷だし、奴隷と恋愛だとか心がすぐに手に入るだとか、笑わせる。
どれだけ自意識過剰なんだって話だよ。
そんな妄想よりも仕事だ、仕事。
--- 10日目 ---
奴隷ちゃんが生理が始まったとかで、今夜から当分夜のお相手が出来ませんと申し出てきた。
それじゃあどの程度待てば良いのかと質問したところ、このような答えが返ってくる。
「えっと……血が出るのは五日ほどで止まると思いますが、その後すぐお相手出来るかと言われたら、それもまた難しいと思うのですが」
「どうして?」
「どうして、って……ご主人様との間に、子供が出来てしまいますよ?」
「ふむ」
俺にそのあたりの知識は全然ないというかそもそも生理が五日も続くということすら知らなかったのだが……てっきり、一日で済むのかと思ってたよ。
「異種族同士でも普通に子供って出来るのか?」
「出来ちゃいます」
「避妊って出来ないのか? 魔法とかで」
「そんな魔法は聞いたことがありません」
どうにもそういうことらしい。
そして奴隷ちゃんいわく、子供が出来る可能性が低い日は一周期中せいぜい十日程度だそうだ。それ以外の日は危ないとのこと。
「もしよろしければ、他の方法でお手伝いしますが」
「……うん、じゃあそれで」
そんな流れで、安全日以外は主に口でしてもらうことになった。
--- 45日目 ---
奴隷ちゃんとの生活にも大分慣れてきた今日この頃。冒険者稼業が順調な為、今の奴隷ちゃんを二、三人買える程度のお金が貯まった。
これだけあればお値段の安かった猫耳の奴隷だけでなく、犬耳や狐耳の子も十分狙えそうだ。
そんなわけでそのことを先輩となる奴隷ちゃんに相談したところ、彼女は「えっ」と一声挙げた後にとても悲しそうな顔になった。
「えーっと……駄目なの?」
「駄目じゃ、ありませんけど」
「じゃあ、なにさ」
「駄目じゃ、ありませんけど……イヤです」
「嫌なのか」
そんな俺の言葉に、彼女はこくりと首を縦に振る。
「それなら俺にどうしろと」
「出来れば私以外の奴隷は買わないでくださると、嬉しいです。その分私が頑張りますから」
「嫌だと言ったら?」
「泣いちゃいます」
と言いながら既に泣いている我が家の奴隷ちゃん。お気に入りのハンカチで「ズビビーッ!」って鼻をかんでいる。
「なんでそこまで反対されるのかがわからない。売り飛ばされたいの?」
「イヤです、どうか売らないでください。お側に置いてください」
「ふむ……」
奴隷商から購入時に聞いた話だが、一度購入した奴隷は再び売ることが可能であるらしい。ただしお値段は購入時より大幅に安くなってしまうのだとか。
まぁ、うん。うちの奴隷ちゃん既に処女じゃないし、中古だしね。中古よりは処女がいいって、誰もが思うのだろう、きっと。
ちなみに奴隷商が同時に説明してくれたことだが、奴隷は売る以外にもその場で無料で解放することが可能だそうだ。
そもそも奴隷は国の財産、国民として扱われているそうで、奴隷のお値段、購入費用の大半は国に収入として納められているらしい。
購入時に払う費用のうちに、奴隷からの解放の費用が含まれているそうだ。戸籍に記録する必要があるから、無料であっても奴隷商で手続きしないといけないらしいけどね。というかそれらの話を聞く限り、奴隷商って公務員だったんだな。今更気付いたけどさ。
どうしたものかな。売り飛ばしても二束三文にしかならないだろうし、別に俺は今の奴隷ちゃんのことは嫌いじゃないしな。とりあえず保留でいいか。
「まぁいいや……とりあえずお腹減ってるから、夕飯の準備を進めてくれ」
「うー…………わかりました。すぐ準備します……」
奴隷ちゃんはだいぶ拗ねている様子だったが、それでも夜のお勤めをしっかり果たしてくれた。
--- 47日目 ---
先日の出来事から二日後の今日。仕事から帰ってきた俺が奴隷ちゃんと夕飯を一緒に食べていたところ、彼女が突然このようなことを提案してきた。
「ご主人様、ご主人様」
「うん、何? 今日の夕食も美味しいけれど、それはいつも褒めてるよね」
「あ、はい。ありがとうございます。ご主人様に喜んでいただけて、私もとても嬉しいです」
「うん、それで用件は?」
「用件は、ですね……その……えっと……あのですね……」
「…………」
奴隷ちゃんがこのようにどもるのはかなり珍しい。一昨日だって正々堂々と「イヤです」と意志表示したぐらいだ。だから珍しく思ってそのまま彼女の言葉を待ったのだが。
うちの可愛いネコミミさんは、一分ほど唸りに唸った果てに顔を真っ赤にしながら爆弾発言をした。
「わっ、わっ、私と、その……子作りせっくす、いたしませんかっ!?」
「――――は?」
奴隷ちゃんの鼻息が荒い。しかし俺の反応が薄いことにショックを受けたのか、段々としょんぼりした表情になり、そのままいじけてしまった。
「ぐすん」
ぐすん、って声に出していう人初めて見たよ、俺。
「どうして奴隷ちゃんがそんな発想に至ったのか、俺にはわからない」
「だって……――って、奴隷ちゃんてなんですか? 私、ご主人様の頭の中で、そんな呼ばれ方してたんですか?」
「え? あ、うん。実はそう」
「そんな、ひどい……ベッドの中では、ちゃんと名前で呼んでくださるのに」
「そりゃあね」
そういえばベッドの中では、奴隷ちゃんも俺のことを名前で呼ぶんだよな。
「それで? どうして突然そんな発想に至ったんだ?」
「どうしてって……至って普通の、自然な流れだと思うのですが」
「は?」
「いえ、ですから……私の発想がおかしいのではなく、この国では至って普通のことですよ」
「そうなの?」
「はい」
至って平然と答えるうちのネコミミ奴隷ちゃん。疑いたい気持ちは強いのだが、どうにも嘘を言っている様子は無い。
「ご主人様も街中で、私と同じく首輪をしている女性の方を頻繁に見かけますよね?」
「ああ、そうだな」
「あれはですね。既に実質夫婦となっている方が多いはずですが、税金が安いから身分を奴隷のままにしている方が多いだけなんですよ」
「そうなの?」
「はい」
この国では基本の税金として、十五歳以上の成人には等しく人頭税がかけられている。俺も冒険者ギルドに登録する際、報酬の中から人頭税分が徐々に天引きされるって教わったんだよな。
あとついでに奴隷の購入時にも、購入費用に三年分の人頭税が含まれているけれどもそれ以降は新たに税金がかかるから納めに来てねとお願いされている。奴隷のご主人様というのは、彼女達にかかる人頭税を肩代わりしている存在なのだ。
「なるほどね」
「ですから、その……お情けをいただけると、ありがたいのですが」
「それはつまり、俺の子供を産んで奥さんになりたいってこと?」
「えっと……はい、その通りです」
「ちょっと確認しておきたいんだけどさ。ミアってそんなに俺のこと好きなの?」
今更だがミアっていうのは奴隷ちゃんの名前だ。いかにも猫っぽくて何のひねりもないベタな名前だと思う。
俺の台詞に対し彼女は顔を赤らめると、こちらからやや目を逸らしながら消え入りそうな声でこのようなことを言う。
「……いじわるだったり、ひどいことは言われたりしますけど……」
「うん」
「……街でも噂になるぐらい随分とお強いみたいですし、毎日の稼ぎも悪くないようですし、見た目も悪くないといいますか、わりと私好みですし……」
「うん、それで?」
「……夜の生活も悪くないといいますか、むしろかなり良い方だと思いますし……」
「ふむふむ」
「……ですから、出来ればご主人様と子作りして、奥さんにしていただきたいです」
「そっか」
つまり、好きではあるのだけども打算の方が大きいってことかね。
「だが断る!」
「ええええ!?」
「だから今日も口で頼むな、ミア」
「はううぅ……はい、わかりました。ご主人様」
とりあえず保留にしておいた。
--- 75日目 ---
あれからまた大分時が経った。毎朝ミアから弁当を受け取って冒険者稼業を頑張ったところ、更に金が貯まったので家を買ってみた。
家といっても大分慎ましやかな家だ。立派なお屋敷を買えるような金がそう簡単に集まるはずもない。
家を買い、借家から引っ越しして、必要な家具も大体買い揃えて、掃除なども終えてようやく一息吐いた。
重い物を運ぶのはほとんど俺がやったが、掃除はほぼ全てミアにやらせた。まぁ当然のことだよな。なにしろミアは俺の奴隷ちゃんなのだから。
そんな感じに引っ越し記念で普段より豪華な食材を買い、ミアがそれをいつも通り調理して今夕食を終えたところだ。
「今日も美味しかったよ、ミア」
「はい、ありがとうございますご主人様」
「それじゃあ次は一緒に風呂でも入るか」
この世界では魔物を倒した時に得られる魔石を燃料に、魔道具を動かして風呂を沸かすことが出来る。便利だよな、魔石。だからこそ冒険者という職業で金を稼げるわけだが。
前の借家の風呂は狭くて一緒に入るのは難しかったが(不可能とは言っていない)、今回買った家は風呂が広いので二人でもゆっくり入れるだろう。
「あっ、あの! ご主人様!」
「うん? どうした、ミア」
「えっと、その……あのですね」
「うん」
「きょ、今日こそは……今日こそは、ご主人様に、私との子作りをお願いしたいのですがっ!」
「あー」
前回の危険日はスルーして毎日ミアに口で処理して貰った後、安全日に入ってからズコバコやっていたんだが。気持ちよさそうにはしていたものの、毎回拗ねてたんだよね。
それに最近のミアから俺に対するラブラブ光線が凄いというか、全力で俺を自分に惚れさせようと毎日頑張ってるなーとは感じている。
「そんなにも俺と子作りしたいのか?」
「はいっ!」
「……うん、まぁまた後でな。風呂の後で考えるわ」
「頑張ります!」
その後実際ミアはお風呂で頑張ってた。かなり頑張って俺を誘惑してきた。
そんなわけで俺はその日から、ミアを相手に連日子作りセックスを楽しんでみた。
--- 95日目 ---
その日うちのミアさんはとてもしょんぼりとしていた。どうやら生理が来たらしい。
「あんなにご主人様に愛してもらったのに駄目だったなんて、とても悲しいです」
「あー……また今度頑張ろうな、うん」
「はい……もうしばらくしたら、また是非ともお願いしますね、ご主人様」
「うん」
夕食の後にそんな会話を交わしつつ、俺はミアを見る。既に機嫌は直ったようで今日も素敵な笑顔だが、首にはいつも通り奴隷であることを示す首輪が巻かれていた。
「あー……あのさ、ミア」
「はい?」
「その首輪って、別にいらなくないか? 奴隷の方が税金が安くなるってのはわかるんだけども」
「……えっと」
ミアはそう言いながら、警戒するように、首輪を守るように腕で隠す。そんな彼女を見ながら俺は言葉を続ける。
「あー、なんだ……奴隷じゃなくなったら税金が上がって、ついでに納税義務が俺じゃなくミア本人になって、そんでミアは基本家事しかしてないっつうか専業主婦だし、自力で金を稼いで納税するのは無理だから、また奴隷に逆戻りしちゃうー、って話だったか」
「はい……その通り、なんですけど」
「……まぁ、うん。だから要するに、俺としっかり入籍してから解放したらいいんだろ?」
「それは……」
そのあたり、俺も軽く制度を調べた。人頭税の徴収は戸籍を元に行っているそうで、家族であればその家長、基本は男性、夫が妻や子供の分まで代表して負担するらしい。
そんで、人頭税がかかるのは十五歳の成人年齢からだから、収入の少ない世帯の子供は十五歳になると同時に奴隷として売られて、男はそのまま国の奴隷として鉱山労働か国の兵士かその他汚れ仕事の担当となり、女は奴隷商で売られてその多くは冒険者などに買われて専業主婦になるようだ。
ファンタジーとは違って女性は魔物と戦えない、基本非力だから勝てないみたいだしな。女性の冒険者もいるにはいるんだけど、上手くいってない人の割合が大きいみたいだ。
女性は男に養われる存在、飼われる存在、守られる存在ってわけだな。奴隷商は国営の、実質結婚斡旋所なわけだ。
とはいえ自由に好きなだけセックス出来るし、性行為に対する女奴隷側の拒否権は無いから、かなり男性側に有利な婚姻関係になっている。その分女性は専業主婦だし、外で出稼ぎとか一切してくれないんだけどもさ。
そのあたりもしかけがあって、女奴隷には家事労働の義務がある一方で、奴隷の購入者、ご主人様は、家事労働以外の労働、外での出稼ぎなどを強要することは出来ないっていう制約がついている。
女奴隷が自主的に外でバイトをしてお金を稼ぐのは良いらしいけど、主人から強制、強要は出来ないらしい。だから女奴隷は安心して、専業主婦を続けられるわけだな。
この国で女奴隷に対する扱いが悪くない理由も納得した。国によって権利が守られ保護された専業主婦という面が強いのだから、扱いが悪くなるはずがない。
実際そのあたり、他人の奴隷に手を出すとフリーの平民女性に手を出すより罰則が重いらしいのだ。女奴隷は主人を選べず性的に搾取される分、社会から保護されているのだ。良く出来た仕組みだと思うわ。
話をミアに戻そう。
「あのな、ミア」
「はい」
「俺としては奥さんが奴隷っていうよりは奴隷じゃない方が良いと思う。ただ――ミアを奴隷から解放したとして、そのまま逃げられたらかなりショックだろうな。死にたくなりそうだ」
「逃げません! 絶対そんな、逃げたりなんてしませんから」
「うん、まぁ……そんなわけだから。入籍してから解放するって形で、いいかな?」
「えっと……ご主人様が……あなたがいいのなら、それで。それで、私はかまいません」
「そっか」
どうやら俺の願いは――実質プロポーズは、ミアに通じたらしい。
「ありがとう、ミア」
--- 379日目 ---
その日、妻がようやく子供を産んだ。
「女の子かー」
「はい、あなた」
「小さくても、しっかり耳としっぽがついてるんだなぁ」
この世界では異種族同士でも子供が作れるが、男の子なら父親の種族、女の子なら母親の種族になるらしい。
なので、兄と妹、姉と弟で種族が違うなんてのは日常茶飯事のようだ。
「んー……」
「どうかしました?」
「いや、その……女の子が駄目だってわけじゃないんだが、男の子も欲しいかな、うん」
「あ、はい。別に謝らなくてもいいんですよ?」
「そっか」
「異種族婚ですと、男の子と女の子が両方生まれるまで頑張るのが普通ですから」
「なるほど」
そんな会話をしつつ生まれたての娘のしっぽを撫でる。なんというべきか、凄く短い。妻いわくじょじょに伸びていくそうだが、本当に大丈夫なのかと不安になってしまう。
「これからもよろしくな、ミア」
「任せてください」
「……とりあえず、夕飯を作って欲しい。ずっと任せきりだったから、久しぶりに一人で作ったら大失敗した」
「あはは……わかりました。頑張りますけど、今日は出来れば手伝ってくださいね」
「わかった」
そんな会話を交わした後、帰路を歩みながらふと考えたことがある。
この世界の奴隷制度が至って平和で恵まれていたからこそ俺と彼女は今の関係へと辿り着いたが、もし少しでも違っていたらどうなっていたのだろうかと。
「……まぁいいか」
考えても仕方のないことなので、俺はそのうちそのことについて考えるのを止めた。




