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朝だ!カーテン開けて!おおう!お星様!まだ夜明け前だった!!でもお腹空いたんだもん!
「ううん……」
アルギスさん起きろ!早起きは三文の徳だ!お腹空いたぞー!さあ!ご飯を食べよう!うりゃ!
「うわぁ!?何?……シルヴァン?びっくりした」
「オン!」
「もう朝?」
「オン!」
そうよー。ほら、早く起きて起きて!
「わぁ。綺麗な星空だねぇ。早起きは慣れてるけど、空に星が残る時間に起きるのは、流石に初めてな気がするな」
綺麗なお空でしょ!ほーら!朝ごはんきっと美味しいよ!魔女様起こして、食べに行こうよ!
「はぁ……良い日になりそうだね。魔女様起こして、朝の食事に行こうか。着替えるからちょっと待って」
「オン?」
皇子様だけど、お着替え、自分でするんだね。なんか訳ありっぽいなぁ。人質交換とかされちゃってるしなぁ。案外苦労人?お、偉い。ちゃんと寝巻き、たたんでしまうのねー。
「じっと見てどうしたの?何か気になるの?」
「ンーウォ」
なんでもない!じゃあ、魔女様起こすぞー。行くぜー!
「あ、シルヴァン。さっきみたいな起こし方を魔女様にしちゃ……」
とーりゃ!え?何?
「ぐえっ」
「ダメだよって言いたかったんだけどな。南の魔女様、おはようございます」
「オン!」
「ちょぉっとぉ、せっかくなんだからもう少し休ませてもらえないかしらぁ」
ありゃ、魔女はみんな遅起きな人が多いのかなぁ?美魔女のお姉さんも、朝、遅かったもんなぁ。許してー。お腹減ったの。ごはん食べて、早くお外行こうよー。
「ォン!」
「もぅ、あんたって子はぁ。お腹が空いたのぉ?」
うふふー、そこそこ!かいぐり大好き!
「!ベルン殿が鍛錬されてるかもしれませんよ!朝食を差し入れるのはどうでしょう?」
「ちょ!はやくゆって!すぐに用意するから!」
「……クゥ」
アルギスさん、鬼発言きた!生贄にされてるよ、シブメンおじちゃん。アルギスさん、あんたぁ、ワルじゃぁ。
「あははー」
笑ってごまかすってことは自覚あるのね?
おおぅ、化粧道具いっぱーい!魔女様化粧しっかりするのね。すっぴんの方が自然できれいなのになぁ。この世界はバッチリメイクなのかな?でも、しっかり化粧してるの魔女様だけだしなぁ?うーん?
「さ!できたわよ。食堂にいきましょ!」
「オン!」
食堂に行ったら、魔女様、お弁当交渉始めちゃった。料理人さんは朝の仕込みでもう起きてたんだ、よかった。支配人さんは、まだ寝てないのかな?これから寝るとこだった?お目々ちょっとショボショボしてるし。
「薄くスライスしたパン?それに挟む?」
料理人のダンディなおじさま、首傾げちゃってるよ。この世界って、サンドイッチがないのか、それとも貴族向けの食べ方がないだけなのか、どっちなんだろ?わぁ!風の魔法でパンがスライスできるんだ!これはわたしもできるようになったら、パン屋さんで働けそう!覚えるべし!
あ、ベーコン!美味しそう!端っこちょっとちょうだーい!
「……初めて見ました」
「そりゃあぁ、ここは高級な場所で、食べ物を手づかみで食べるなんて、しないってのはわかってるわよぉ。そこをこらえてほしいのぉ」
ここ、高級宿屋なんだ。どおりで、お部屋の絨毯の毛足がすんごい長いと思いました。帝国ホテル並みだったもんね。そっか、高いホテルって、いい絨毯してるんだ。掃除大変そう。あ!手間暇かけられるほどいい部屋ですっていうアピールなのか!なるほどなぁ。
「サンドイッチ?」
「このパンに具を挟んで食べるもののことよぉ」
「領都では一般的になってるとゲオルグ翁に伺ったのですが?」
「!それならゲオルグ様に伺わなくては!」
「支配人、アマーリエに聞けばいいと思いますよ。あの子はここの新しいパン屋ですし」
「あ、そう言えば新しいパン屋さんが到着したんでしたねぇ」
「色々旅の道中で目新しくて美味しいものをいただきました。作ったのはアマーリエですから、作った本人に聞くのが一番ですよ」
リエちゃん、巻き込まれちゃった。いいのかなぁ?お店の開店準備とかあるのに。
「それは確かに!あーでも、パン屋が落ち着いてからの方がいいですかね?支配人」
あ、ダンディな料理人さん気遣いの人やぁ。ええ人やなぁ。
「ああ、そうだな。パン屋が休みの日にでもこちらに招待して、色々話を聞こうじゃないか」
「なら、お二方がアマーリエに話を聞きたいと言っていたと伝えておきますよ」
「おお、申し訳ありませんが、お願いできますか?」
「ええ。任せてください」
「それでは、ご注文いただいたものをご用意しますね」
ダンディな料理人さん、すごく楽しそう。料理好きなんだなぁ。うふふ。美味しいの楽しみ!
「シルヴァン、行くわよぉ?」
はーい、魔女様。ほお、ここはロビーですか?お、すっとお茶が出てくるんですね。さすが高級ホテル!
「お待たせいたしました。こちらがご注文の品になります」
わあ、洒落た藤のバスケット。わたしも中見せてぇ!
「大丈夫です。シルヴァンも大丈夫だよ、ちゃんと君の分も入ってるから!さあ、冒険者ギルドに行こう」
「オン!」
冒険者ギルド!うおー!ファンタジーきたー!テンション上がるぜ!
「すっごい、はしゃいでるわねぇ」
「そうですね。何を期待してるんだろ?」
ファンタジーやゲームの中にしかない場所だもん!気になるでしょー!
「行ってらっしゃいませ」
行ってきますー!早く、早く!
「焦んないのよぉ」
「あはは。シルヴァン、元気いっぱいだな」
「シルヴァン、こっちよぉ」
はーい!わぁ、ここが目抜き通りかな?あれが冒険者ギルドかな?隣は魔法ギルド?向いの看板はあれ、フラスコかな?薬師のギルドかなぁ?ギルドばっかりなのかな?
「入るわよぅ」
あ、待って!おおー!これが冒険者ギルドかぁ。朝早くって、依頼を受ける冒険者がいっぱい居るんじゃないの?なんかがらんとしてるなぁ。あ、なんか食べ物の匂いがする!なんで?あっち側食堂なんだ。おおー。でも、あれ冒険者じゃなさそう?村の人かなぁ?
「久しぶりぃ!ミルフィリア!」
受付のお姉さん可愛い!お、目があった!あれ?怪訝な顔されちゃった。なんだろ?
「南の魔女様!お久しぶりです」
「ベルンたちは居るかしら?」
「多分、地下の鍛錬場だと思いますよ」
「ありがと!」
「いえ。あ!魔女様、魔力溜りの最新情報とかあったら、教えてください!」
「分かったわぁ。また時間のある時にねぇ」
魔女様、こっち?お、でっかいおっちゃんと虎耳のお姉さんと優男のおにーさんの匂いがする!まだ新しい!
「あら?匂いでわかったのかしらぁ?探索上手そうね、シルヴァン」
「オン!」
狼ですから!嗅覚自慢よ!ただ、匂いすぎて困ることもあるけどねぇ。魔女様、こっちよ!
「はいはい。地下は鍛錬場と倉庫だけだからぁ、迷わないわよぅ。ほぉら、ここよぉ」
おお!すっごい広い!れ?なんかお花の匂いする?なんで?壁かなぁ?誰かの魔力っぽい?鍛錬場だから、壊れないように壁を魔法で強化してるのかなぁ?
「おっはよう!ダリウスぅ。あぁら?ベルンはぁ?」
あ、でっかいおっちゃんビクってなったよ。
「あいつなら二日酔いと夢見が悪かったせいで部屋でくたばってますよ」
南の魔女様、しっかり夢渡りしたんだ。シブメンおじちゃん、ご愁傷様〜。
「んまぁ、大変!看病しなくっちゃぁ!はいこれ、朝食。皆で食べてね。ちょっとの間、アルギスさんとシルヴァンよろしく!ベ~ル~ン~今行くわよぉ~」
「いや、貴女、仕事は……」
あーあ、魔女様、恋する乙女モードだ。でっかいおじちゃん、止められないって、それ。アルギスさんの護衛は、代わりに私がするとです!
でっかいおじちゃん、そのバスケットは朝ご飯だから落とさないでね!
「アハハ、よろしくお願いします」
「ご飯!」
「ゥオン!(ご飯!)」
「神官殿……。ダフネにシルヴァンまで……。父親の立場としては腹をすかせた子供に飯の用意をするのは致し方ないか。はぁ、おりゃまだ独身だってのに……」
ありゃ、でっかいおじちゃん、いつパパンに昇格したんだろ?なんでも良いや、がんばれ、新米パパン!
「ああ、そうだ。シルヴァンをアマーリエのところに連れて行こうと思うんですが」
アルギスさん、そうなの?え?シブメンのおじちゃんの次は、リエちゃんが餌なの?
「ふむ、ベルンを残して、皆でこの朝食を持ってアマーリエのところに行くか」
お?お?シブメンおじちゃんを南の魔女様から助け出さないのね?馬に蹴られちゃうから。
「ファルとマリエッタを起こしてくるよ、お父さん・・・・!フッ」
優男のおにーさん、完全に面白がってるよ。
「頼んだぞ、真ん中長男」
「それやめて!」
ああ!銀の鷹の家族構成!でっかいおじちゃんが、パパン。シブメンおじちゃんがママン!美魔女なお姉さんが長女!あれ?虎耳のお姉さんとちっちゃ可愛い女の子はどっちが年上なんだろ?それで優男のおにーさんが真ん中長男?ん?ちょ、みんないくつよ!
「ご飯、ご飯」
あ、虎耳のお姉さん、バスケット開けちゃった。
「とりあえず、ここを片付けてからだ」
そだね、パパン、お片づけ大事。使ったものは元の場所に。私は、アルギスさんの護衛っと。
「さて、こんなもんか。お待たせしました。んじゃ、受付のあたりで待ってるか」
ハーイ!さ、行きましょ!ご飯ご飯〜。
「くくっ。シルヴァンのやつ、嬉しそうだな」
「朝食楽しみだもんな!」
「オン!」
あ、もうみんな集まってるー!シブメンおじちゃん、煤けてる〜。いろんな意味で頑張れー。美魔女なお姉さん、ちっちゃ可愛い女の子おはよー!さあ、リエちゃんとこ行くよ!うっふふん!シブメンおじちゃんの愚痴は聞こえないー。
ん?パンの焼ける匂いがする!プリンもだ!
「パンの匂い!……と変な気配?」
え、虎耳のお姉さん変な気配て何ぞ?なんか居た?居ないよ?
「……相変わらず食べ物にも鋭いな。って変な気配ってなんだ?」
「うーん。消えた。危ない感じはしなかった」
「お前がわからんなら、このメンバーじゃ探しようがないな。ダフネ、一応気に留めといてくれ」
「わかった。リエのところに急ごう!焼きたてのパン!」
「あの子も相変わらず早起きねぇ」
「パン屋ですから!だったな」
パン屋さん、仕込み作業がるから朝早いもんねぇ。
「シルヴァンの早起きもそのせいじゃないのか?」
え?お腹空いただけですから。
「主が起きてて従魔がぐーすかって話は聞かないわね」
え?え?そういう認識なの?まじですか!?
「アマーリエは従魔が寝てても気にしそうもないけどな」
「確かに!」
あ!雀の鳴き声がする!おー!異世界にも雀がいるんだ!感動!わぁ!朝日だぁ。きれいー。何やら虎耳のお姉さんが、南の魔女様を無意識にぶった斬った気がするけど気にしないー。君子危うきに近寄らず!
さー!リエちゃんっとこにレッツラゴー!えーっと、村役場の横道を入って行くと、あ!あれかな?パンの匂いが強くなった!煉瓦建てのお家!常緑樹の生垣があるんだー。
「着きましたよ、リエのパン屋」
「あらぁ、昔っから変わらないわねぇ、ここもぉ」
「そんなにかわらないんですか?」
「あたしが、駆出しの頃もこのままよぉ」
「それはいつとお伺いしたいところですが……まだ、死にたくないので聞きません」
「それは賢明な判断ねぇ、アルギスさん」
ふ、アルギスさん、ギリギリ地雷を踏まずに済んだね!でも、南の魔女様の駆け出しの頃って、いつなんだろ?はっ!?考えちゃダメ!
リエちゃん来たよー!はぅわぁ、いろんなパンの香りがするよ。え?あ?風の魔法でコーティングですか?こんな感じ?できてる?
「ウォン!」
出来てる!なんか周りがうるさいですが、私、今日からパン屋さんでお勤めしますからね!食っちゃ寝するだけの愛玩動物とは違うのですよ!えっへん!魔狼として、パン屋さん家の子として、なくてはならぬ存在になるのです!
そうすれば、心置きなく美味しいご飯と寝床が手に入るー!
ふっ、もらいっぱなしは、気が引けてしまう小市民なんです、私。
「生活魔法を使える魔物なんて……。できちゃうこの子も変よぉ」
「ォン?」
「もう、やだかわいい。あんた、ほんとにお利口さんねぇ」
私、頑張りますよ!もっと褒めて!周りがなんか言ってますが、変じゃないです!ご飯のために頑張ってるだけですからねー!
「ますますシルヴァンが欲しくなった」
え?アルギスさん何言ってんの?お兄ちゃんラブでしょ。リエちゃんー。
「うちの子ですからね」
「シルヴァン、うちの子にならないか?」
謹んでお断りします。リエちゃんの後ろに避難ー。
「……だめかぁ」
「シルヴァン、うちの子はどうだ?」
でっかいおじちゃんに遊んでもらうのは好きだけど、ご飯はやっぱりリエちゃん一択!
「胃袋ガッチリ掴まれてるみたいだよ」
「……力より食い物なのかテイムって?」
「料理を覚えたほうが早いのか?」
「……それこそシルヴァンだけだって思いたいんですけど」
「うーん、力で脅されるより美味いものでつられる方がいいな」
「……ダフネ」
失礼な、美味しいご飯は毎日の原動力です!それに虎耳のお姉さんのいうとおり!北風より太陽なのです!
何やら話が変な方に転がっていってるようですけど、そろそろご飯ー!もうお腹空きすぎてムーリー。
「はいはい、考え込まない。ご飯にしましょ」
美魔女なお姉さんに賛成!ご飯だー!
「シルヴァン、はい、お肉」
アルギスさん、別にお肉用意してくれたんだ!わーい!
「あ、どうも。シルヴァン、魔鳥のお肉仕入れるからそれまで塩揚げ鶏待ってね」
「オン!」
「食べていいよ」
いただきまーす!おお、この肉ジューシー!。焼き加減最高!さすが高級ホテルの料理長!
「あぁら、やっぱり芋っ娘がシルヴァンの主なのねぇ」
「ん~?何気に信頼してる人からは色々餌付けされてるよね、シルヴァン?」
「ウォン?」
え?え、餌付けはされてないよ?みんな、あれこれくれるから、断っちゃ悪いかなってだけだもんねー。それだけよー。決して食い意地が張ってるわけでは……。
「とぼけてもだめ。お前なんだかんだ皆からおやつせしめてるじゃない」
ぴ〜〜♪気のせい!
「ブッククク。ほんとに利口だな、シルヴァン」
「オン!」
みんなが貢いでくれるだけだもん!さ、遠慮せず今日も貢ぎたまえ!拒否なんかしないぞー!あ、そのクロワッサン私も欲しい!あーん!
「これか?しょうのないやつだな。ほら」
うふ!サクっとして美味しい!あ、それも一口!そっちも!毎日おいしい焼き立てのパン生活!はぁ、リエちゃんに拾われて、私、幸せー。
みんなも食事と会話で楽しそう。いいワーこの雰囲気。
「リエ、この後はどうするんだ?」
「商品のパンを焼き貯めておこうかなって。シルヴァン、明日、村の中を探索兼ねて一緒に散歩しようね。お前ちょっとお腹出てきた気がするんだよね」
「ゥウ?」
ウエェ?まじ?え、あ?最近ご飯お腹いっぱい食べてるけど、馬車に乗ってたし、アルギスさんごと南の魔女様に抱っこされてたし、動き回ったのってちょっぴりだったかも?うおー、やばい?
「シルヴァン、おいで」
でっかいおじちゃん何?
「うーん、確かに会った頃はもっと細かったな。ちょっとお腹タプタプしてるか?」
オゥフ、確かにお腹がタプタプしてるような?アウアウ。
「俺と一緒に訓練するか?」
「キュウキュウ(是非是非)」
イケメン魔狼目指すんでお願いします!ジャバ・ザ・ハットな魔狼は嫌だー。ちょ、ここで少し小走りする?みんなお話に夢中だし。でっかいおじちゃんの周りをグルグルグルー。あ!蝶々!待てー。あ!生垣に隙間発見!ズボっとな。うーん?お隣さんはいないのかなぁ?空き家かなぁ?お庭、草ぼうぼうだ。ってここの庭も枯れ草混じりの草ぼうぼうだけどね。
ん?ダンジョン行くの?リエちゃんが報酬出すの?え、興味ある!
「……なら俺もおやつにあんドーナツとクリームパン」
「私も欲しいです」
「……ダリウス、ファル」
「まっ、いいじゃないの。食べた分、何か見つけてくればいいのよ。どうせリエのことだから、美味しいものになる素材なら喜んで甘いパンぐらい山ほど出すでしょ」
「もちろんです」
「「「おー!」」」
「ウォン!」
私もおやつー!
「んまぁ、シルヴァンも参戦するのぉ?」
「オン!」
南の魔女様、やるともさ!
「……採集に気を取られてポカするなよ」
「「「はーい」」」
「オン!オン!」
ママン、気をつけます!わーい、おやつのパン!アゥ、私もアイテムバッグ欲しいなぁ。いつでもおやつが入ってるカバン、いいなぁ。
「さ、ギルドに戻りましょうか」
「おう。南の魔女様、神官様、リエ、朝早くからごちそうになりました」
あ、シブメンおじちゃんたち、もう帰っちゃうんだ。なんか寂しいな。
「どういたしましてぇ。皆で食べる食事はおいしいからぁ」
「ですね。ちょっとさっきまで一人で流石に寂しかったですから」
南の魔女様、リエちゃんそうだよねぇ。みんなとご飯楽しいもん。
「私もこんなに賑やかに食べられるのは、なかなかなかったからうれしいです。またご一緒しましょう」
「え、ええ。もちろん。それじゃぁ、俺達はこれで。バスケットは宿に返しておきますから」
アルギスさんの言葉にシブメンおじちゃんたら、顔引きつらせてやんの。まあ、アルギスさんには、漏れ無く南の魔女様が護衛で付いてくるもんね。
「あ、お願いします」
「寂しいわぁ」
「仕事を頑張ってる貴女は素敵です!」
「!頑張るわ!ベルン!」
お、シブメンおじちゃん、対処法を学んだのか。
「いいお家が見つかるといいですねー」
「おう」
シブメンおじちゃんたち、またねー。さあ、リエちゃんのお手伝い!って、アルギスさん、どんだけお兄ちゃんにパン送るの?え、タンスにアイテムボックス?髭面のハイジ?それ誰得?
なんだかんだ、みんないろんな人にパンを送るのねー。ふぅ、群れのみんな元気かな?
「ほらぁ、帰るわよぉ。芋っ娘はしっかりパン焼くのよ。シルヴァンは明日、魔道具屋でダンジョン用のアクセサリー見繕ってあげるからねぇ」
え、あ?もう魔女様たちも帰っちゃうの?いつの間にか、なんか買うことになってるよ。話を聞いてなかった。はう。
「「はーい」」
「オン!」
魔女様、アルギスさん、また明日ねー。
「さて。私はパンの在庫作んなきゃな。シルヴァンどうする?」
「オン!」
手伝えるかどうか見る!
「見るの?いいよ。さ、厨房に戻ろう」
「オンオン!」
……パン屋さんて、結構ハードでした。