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改稿作業の息抜きに。スミマセン、本編の方もう少々お待ちくださいませ。
リエちゃんはかっちょいいおじいちゃんと村の見回りに出かけちゃいました。お留守番の私は、でっかいおっちゃんと遊ぶ予定だったんですが……。
何故か美魔女なおねえさんとちっちゃ可愛い女の子の間に挟まれて、可愛いおばあちゃんから魔法の講義を受けています。
「うふふ、シルヴァンも魔法が上手なんですってね?見せてちょうだいな」
可愛いおばあちゃんに頼まれたら嫌とはいえません。まずは小手調べに生活魔法から!
『浄化魔法!』
「あらあら、これは!器用ねぇ」
美魔女のおねえさんの言動から察するに、私たちは可愛いおばあちゃんの暇つぶしにされてるようです。
でも、そろそろ飽きてきたし。でっかいおっちゃん、助けてプリーズ。
「東の魔女様、おじゃましますよ。南の魔女様から手紙が届いてます」
でっかいおっちゃんとシブメンおじちゃんだ!
「あら?どうしたのかしら。ちょっと休憩ね」
おっちゃんたちから後光が見えるぅ。
「私、ちょっと外の空気吸ってくるから」
美魔女なお姉さん、なんかオーラが煤けてますよ?
「いってらっしゃい」
『おっちゃん、おっちゃん、助かったよ〜』
「お?お?どうしたシルヴァン?甘ったれだなぁ」
でっかいおっちゃんに突撃かまして、抱っこしてもらいます。この安心感!ふぅ、落ち着くぅ。でっかいおっちゃんにべったりくっついて、撫で撫でしてもらえば癒やし効果満点です。
「ダリウスにこれほど懐くとは。シルヴァンはやっぱりちょっと他の魔狼と違うようだな」
「ベルン?何がいいたい?」
「いや、普通の魔狼でもお前と一対一で相対すれば、腰引け気味じゃないか」
「そりゃ、向こうが牙むくならこっちも威圧するしか無いだろう」
「……小さいものからしたら見上げなきゃいけないくらい大きいと言うのは威圧がなくても威圧を感じるものですよ。ダリウスさんだって竜に見下されたら相手が威圧してこなくたってビビりますでしょ?」
ちっちゃ可愛い女の子がでっかいおっちゃんを窘めてる。ま、たしかにちっちゃいもんね。
「むぅ」
「あらあら!南のも皇弟殿下を護衛してアルバン村に来るそうよ」
可愛いおばあちゃんの手元の紙からとってもいい香りがします。紙に香を焚きしめるなんてとっても古式ゆかしい方のようです。手紙の人ってどんな人なんだろ〜。女子力高そう!
「南の魔女様がくる?コウテイデンカ?」
可愛いおばあちゃんの言葉にシブメンおじちゃんが挙動不審に?
「帝国の神官をやってらっしゃるアルギスさんよ。皇帝陛下の弟君。だから皇弟殿下」
「なぜアルバンに?」
「んー。あそこも色々あるのよ」
片手を頬についてほっと困った顔で可愛いおばあちゃんがため息を吐いています。偉い人が来るのか〜。
「はぁ」
シブメンおじちゃん、なんか顔が青ざめてます。どしたの?
「ベルン。ダンジョンに潜っちまえばいい」
「そ、そうだよな」
なんか震えてない?そんなおっかない人が来るの?
「どうしたシルヴァン?」
思わずでっかいおじちゃんにしがみついちゃったよ。怖い人くるの?
「あはは。さてはベルンを見て、なんか怖いのが来ると思ったのか?大丈夫だ。ベルンが怯えてるだけだから。心配しないでいい」
『そなの?』
「ああ。根っこは優しい方だ。まわりへの気遣いも気を使われてる側に気が付かせずやるぐらい上手い」
『オオ〜。じゃなんで?』
「大人の事情というやつだ。馬に蹴られたくなければほっとけばいい」
あ!そういうことですか。了解であります〜。へーへー、シブメンのおっちゃんが怯えるような女の人ってどんなだろう?すんごい気になる〜。
「……シルヴァン」
『はい?』
「南の魔女様が来たら愛想振りまいて、相手をするんだ。いいな?」
『ハ〜イ』
よくわかんないけど、シブメンおじちゃん切実そうだから頷いとこっと。
「おい。あの人も俺と一緒で巨人族の相が濃い。小動物から避けられるんだぞ?シルヴァンも怖がらないか?」
え?なにそれ?どういうこと?
「大丈夫だ!シルヴァンはお前にこれだけなついてる変わりものだ。絶対あの魔女さまでも問題ないはず」
へ?そりゃちょっと普通の狼とは違いますけど。
「何だ、その根拠は!失礼だな!」
「サー、明後日には村を出るからな。村を出発する準備をしなきゃな。あー忙しい忙しい」
シブメンおじちゃんとっとこ村長のお家から出ていっちゃいました。
「なんだかなぁ。人の心はままならんもんだな」
『?』
なんだかんだでっかいおっちゃんにモフられました。ムフーもっと撫でてくだしゃい。
夜は村総出でごちそうだそうです。かっちょいいおじいちゃんのおごりだそうです。太っ腹〜。リエちゃんが陣頭指揮を取ってご飯を作るんだって。楽しみ〜。
側でおとなしく作業を見てたらチミっ子にフレンチトーストをあーんしてもらいました。その後は追いかけっこして遊びました。
夜はお眠になったチミっ子達の枕にされましたが、一応チミっ子達はお母さんやお父さんに引き取られていきました。お守りしてくれてありがとうって言われました!えっへん!
久しぶりのピザも美味しかった〜。
納屋に戻ると今日も誰がわたしと寝るのか決めるみたいでした。私、前世も合わせて空前のモテキ到来!?
「今日はわたしです。シルヴァン、よろしくお願いしますね」
『こちらこそ』
今晩はどうやらちっちゃ可愛い女の子と一緒のようです。潰しちゃわないように気をつけよっと。
「うふふ、シルヴァン温かいです」
「そりゃ、ナマの毛皮ですからね」
「……生ってあんた」
「確かに生きてますけどね」
リエちゃん、生って。表現が時々直截だよね、リエちゃん。
「はぁ、寝ましょ。おやすみなさい」
『おやすみなさ〜い』
ZZZZZ……フギャ!蹴られた。ぬォッ耳かじられた!安眠妨害過ぎる!これ以上は無理!でっかいおっちゃ〜ん。
「……ん?どうした?寝られないのか?」
起こしちゃってごめんなさい。そっちに入れてください。
「!!!俺のほうがいいのか!」
うごっ!くるぢい。ギブ!ギブ!
「あ、すまん。つい嬉しくて抱きしめちまった。大丈夫か?」
だいじょばないです。また、あの世が見えかけました。
「……何やってんですか?ダリウスさん」
「すまん、起こしちまったか。グレゴール。シルヴァンがこっちに来てな」
「ありゃ、ファルは寝相悪いから」
「なんでお前が知ってんだ?」
うわっ、でっかいおっちゃんの懐疑の眼に優男のおにーさん、顔ひきつった?
「前の雑魚寝のときに俺、蹴られましたから」
「ああ、あの時か」
何があったとですか?二人共顔色が悪いですよ!?
「ふっ、寝ましょうよ。明日もまた色々ありそうだし」
なんですか、優男のおにーさん!?その哀愁漂う笑みは!?本気で何があった!?
「だな。おやすみ、シルヴァン」
え〜!?気になって眠れないんですけど!でもぽんぽんされると眠くなる〜ZZZZZZ。
「あれ、シルヴァン。なんでダリウスさんのとこに?」
『あ、リエちゃんおはよ〜』
「おう、リエ。おはよう。色々あったんだ。な?シルヴァン」
『あい』
「おはようございます。そうですか。私、村の女衆に蕎麦粉のガレットの作り方教えますんで、もう共同炊事場に行きますね」
あ、私も行く〜。
「おいおい、いくら誘拐犯が捕まったとは言え、一人になるな。俺も行くからちょっと待て」
「はーい」
なんだかんだで、朝が早いメンバーで共同炊事場にいきました。虎耳のお姉さんとチミっ子たちと一緒に広場で朝の運動です。ほっほ〜捕まえてごらん♪
「なんだかんだ、馴染むのが早いよね。シルヴァン」
「……魔狼ですけどワンコですよねー」
「うちの実家の人懐こい子によく似てるよ。誰にでも愛想が良くてさ。村の頑固親父もこっそりうちの子撫でてはデレてたなぁ」
「お、俺はでれてないからな!」
「「はいはい」」
「ぶははははは」
「リエー。おなか空いたぞ!」
『お腹すいた!』
シブメンおじちゃん、朝は楽しそう。昨日は怯えてたけど大丈夫なのかな?
「そりゃ、起きてあんだけ走り回ったら、お腹もすきますよ。もうすぐ出来ますから、ファルさんとマリエッタさん起こしてきてくださいな」
「『わかった!』」
虎耳のお姉さん、競争よ!ウハハハ〜、風より疾く走るぞ〜。いえーい!
『うりゃ!』
「ぎゃぁ!」
うへへ〜、ちっちゃ可愛い女の子起きた!
「な、なにが?」
『ご飯よ〜』
「シルヴァンでしたか。おはようございます。もう少し優しく起こしてくれると嬉しいのですが」
『起きないでしょ?』
「ファルは、優しくしても起きないから無理だろ」
「うっ」
「シルヴァン、マリエッタも起こしてくれ」
『嫌です』
虎耳のお姉さん、それ無茶ぶりですから。私もまだ命は惜しいです。
「無理か」
『無理です』
こっくり深ーく、頷いときました。
「しょうがないな。マリエッター、起きろ。ご飯だぞ」
なんで虎耳のお姉さん、いつでも何かを避けられる姿勢で起こしにかかってるの?なんかやっぱり飛んできたりするの?
「ううーん。あともうちょっと」
「リエの美味しいご飯がなくなるぞ」
「うううう。起きるわよ」
「うん。今日はマシな方だな」
「たまに寝ぼけて攻撃魔法とんできますからね。反射神経のいいダフネさんにしか、マリエッタさんは起こせませんよ」
え?何それ?そんな命がけなこと、わたしやりませんからね!?
「たまにでしょ!たまに!それにいつもは自然に起きてるじゃないの」
「昼近くにな」
「ほら!朝ごはんに行くわよ!」
あ、形勢不利と見て話題変えたな、美魔女のおねえさん。
「シルヴァン?ご飯に行くわよ」
『イェッス!マァム!』
サー、ゴハンダ。ゴハン!
リエちゃんの今日の蕎麦粉のガレットは、じゃがいもと玉ネギとベーコンを炒めたのに半熟のポーチドエッグをのっけて粉チーズがかかってました、うま~でございます。




