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 ふぅ、虎のお姉さんの下から助け出してもらいました。

「ぬ?」

「あ、ダフネさんおはようございます。ちょっとシルヴァンが下敷きになってたんで引き抜きました」

「シルヴァンすまん。くわっ」

 虎耳のお姉さんは大あくびをして伸びをすると毛布からでてきました。

『なんとか無事です』

「シルヴァン、朝ごはんの前に運動するぞ」

「ダフネ、走るなら村の外にしろ。流石にシルヴァンを連れて村の中を走り回ったら騒動になるからな」

 シブメンおじちゃんに言われて、虎耳のお姉さんと村のお外を走ってくることになりました。リエちゃんは朝ごはんの支度に、優男のおにーさんはお馬さんたちの世話に行くそうです。美魔女のお姉さんとちっちゃ可愛い女の子はまだぐっすり眠ってます。でっかいおっちゃんとシブメンおじちゃんは村の炊事場近くの広場で鍛錬だそうです。

 虎耳のお姉さんと走ったり、鬼ごっこしたり、かくれんぼしたりした後、村に戻ってきました。なんかいっぱいスキル生えました。あとで確認しよーっと。

「シルヴァン、マリエッタとファルを起こしてご飯食べに行くぞ」

『は〜い』

 ダフネさんが美魔女なお姉さん起こすそうなので私はちっちゃ可愛い女の子を起こすことにしました。とりあえず最初は、呼びかけながら前足で揺すってみます。

『起きて〜。ご飯〜』

「うう〜ん。リエさん、もう食べられません……」

 夢の中で何か食べてるみたいですけど、朝起きて食べましょうね。

『お〜き〜て〜』

「ふにゅぅ」

 むむむ。これは最終手段?ボスンとな。

「ふぎゃっ!?」

 ちょっと勢いつけて乗っかってみましたよっと。

『おはよーございます』

「……シルヴァンでしたか。びっくりしました。もうご飯ですか?」

『そう!』

「わかりました。起きるからどいてください」

『は〜い』

 美魔女なお姉さんとちっちゃ可愛い女の子が身支度を整えるのを待って一緒に炊事場に向かいました。

 炊事場はには朝ごはんの支度をする村のお母さんたちや娘さんたちの姿がありました。男の人もちらほらいますが。

 リエちゃんはそんな村の女の人達となんやかんやお話しながら朝ごはんを作ってます。

 お、驚かれないかな?あ、子供と目があった!あ、お母さんが首根っこ捕まえて止めたぞ。ちょっと安全かどうか伺われてる感じ?尻尾振って愛想よくしとこ〜っと。私とっても無害ですから〜。

「どこで愛想の振りまき方を覚えたのかしら、この子?」

「なんか人懐こいですよね」

「強いものには従順だぞ、狼は」

 逆らってもガブッてされちゃいますもん。フッ、生き難かったぜ、群れ社会。

「はい、今日は昨日もらった蕎麦粉でガレットにしてみましたよ〜」

 じゅるり。そば粉で作ったクレープ状の生地にハムと目玉焼き、塩胡椒してバターで炒めたきのこと玉ねぎが乗ってます。私も〜。

「え、シルヴァンも同じの食べるの?ちょっと待って、すぐ焼くから」

「魔力なくていいのか?足りなくならないのか?」

 でっかいおっちゃんに心配そうに頭をを撫でられました。もっと撫でてー。

「やっぱり変な子よねぇ」

「リエさんにテイムされただけはありますね」

 美味しいもの食べたいじゃない!野生だと生肉なのよ!私なんて霞食ってるだけでもいいんですってよ!ヒマジンによると!長生きするのにそんな寂しい食生活いやじゃない!

「玉ねぎ大丈夫なのかい?」

 優男のおにーさんの心配そうな様子に自分が狼だったことを思い出しました!アハハ〜すっかり忘れてたし。ネギとかチョコレートとかダメなんだっけ?でも、今は魔狼で魔力があればいいみたいなんだけど。食べてみたらわかるか!なんかあったら回復魔法使えばいいんだし!

『多分!』

「とりあえず玉ねぎ無しで作っときます」

『えー』

 リエちゃん、玉ねぎは美味しさの秘訣なんです!

「不満そうだよ?」

「あげてみたら?ファルも居るんだし」

「何かあったら私が回復しますよ」

 おお!ちっちゃ可愛い女の子は回復魔法使えるんだ!お手本にさせてもらおう!

「そうですか?じゃあ、シルヴァン調子悪くなったら言うんだよ?」

『は〜い』

 わーいヤッター!みんなと同じご飯!リエちゃんは手早くフライパンでガレットを作ってお皿に乗っけて置いてくれました。皆で頂きますをして食べ始めます。

「ん!美味い。ソバも粉にすると食べやすいな」

「半熟の目玉焼きに塩胡椒の効いたきのこが美味しいです」

「ソバなのに贅沢な食べ方ねぇ」

「まあ、普通は他に食べるものがない状況で食べる穀物ですからねぇ。余裕があれば、なんでも美味しく食べられるんですよ。あ、おかわりできますんで言ってくださいね」

『は〜い』

「わかった!」

「ブクク、ダフネとシルヴァンは食べる前からおかわりする気満々だ」

 美味しいものは先に確保なのですよ、優男のおにーさん。あとからでは手遅れなんです。

「ダフネさんの分はもう先に焼いてあるから。シルヴァンも要るのね?」

『もちろん!』

「俺もおかわり」

 リエちゃんは自分の分を食べるとせっせとおかわりを作ってくれました。味を変えようかと言ってチーズをすりおろしてかけてくれました。コクが出て美味しかったです。

『はぁ、満足!』

 御飯の後は皆さんお茶を飲んで一服のようです。私はミルクを出してもらいました。何のお乳だろ?

「ブフフ、シルヴァン口の周りが白い髭になってるよ」

 ぬ、優男のおにーさんに笑われてしまった!口の周りをなめまわしときましたこれでどうよ?

「とれたとれた。なんというか、お前はちっとも怖くないね」

 そう言って、優男のおにーさんは優しく撫でてくれました。

「さて、ファルとダリウスは村の中を見回るがリエはどうする?」

「一緒について行って、見て回っていいですか?温泉計画の補完に必要ですし」

「なら、シルヴァン。お前リエの護衛な」

『は〜い』

「あら、シルヴァンが村の中歩き回って大丈夫なの?」

「朝の村の女衆の様子から大丈夫そうだと思う。大人しくしてたの見てたからだろう、いい意味で気になってたみたいだしな」

「まあ、愛想は振ってたわね」

『愛嬌は大事です〜』

「シルヴァン、ただし村の子の突撃には気をつけろよ。たまーに遠慮のないのが寄ってくるからな。避けるなり、諦めて抱きつかれるなりしろ。絶対に吠えるな、かぶりつくな。いいな?」

『はい!』

 シブメンおじちゃん、お母さんみたい。

「マリエッタは村用の護符づくりで、俺とグレゴールとダフネは騎士達と近辺の見回りに行ってくる。よし!それじゃあ、解散!」

 シブメンおじちゃんの言葉で皆それぞれに動き始めます。私はリエちゃんのそばを離れないようにしつつ、村の悪戯っ子に突撃を受けないよう気配察知を展開します。

「わたしは、まずは神殿と薬師の家を訪ねたいです。その後村の各家を訪ねて、村の人の健康や薬の不足がないか確認していきたいのですが」

「俺は同時にちょっとした大工仕事や力仕事があれば引き受ける。リエはどうする?」

「村の人から村の様子を聞いたり、村の食糧事情の詳細と村の畑や村の近辺の食料になりそうな物や特産品になりそうなもの探しですかね」

「わかった。じゃ、村の中心から外に向かうよう螺旋状に移動するか」

「ええ、そうしましょう」

「わかりました」

 リエちゃんはちっちゃ可愛い女の子が村の人の健康診断するのをメモを取ったり、摂取が不足しがちな食べ物を教えたりしています。私の方は触りたそうな人に遠慮なく触っていただきましたとも。癒されるがいい!ちっちゃい子は可愛かったぞ!よだれつけられたけどな!浄化魔法できれいにしてやったわ!

「う〜ん、やはり不足しがちな食物が多いですね。海産物は特に。村で共同購入できる仕組みができないか考えたほうがいいですねぇ」

「共同購入ですか?」

「ええ。個人じゃ運ぶ量も買える量もたかが知れてますけど、共同で買えば売る方にも買う方にもありがたいですからね」

「それは確かに」

「温泉ができて人が集まるようになれば、自ずと商人も集まりそうですけどね」

「共同購入の形ができれば他の村でも応用できますよね?」

「ええ、ご領主様、村役場に転送陣設置してますし、うちの領地は流通の形もすぐにでも整いそうです」

「バルシュテインでうまく行けば王国内でも広がりそうですし、王国でうまく行けば他の国にも応用されます!」

「まあ、小さな共同体ならうまくいく形でしょうね。ただ、街ぐらい人が多くなってしまうと機能しないでしょうね」

「?」

「人が多すぎて、共同体の単位を適切な大きさに分ける必要性が出るでしょうね。でもそうするとそれぞれの柵が出るでしょうからなかなか上手く分けられなくなるっていうね。結局、大きくなればいいのかっていうとそういうものでもないんですよね」

「最良の大きさがあると?」

「ええ、なんにでも適正と言うもんがあるってことです」

 リエちゃん達が難しいお話をしてる間、でっかいおっちゃんのお仕事のお手伝いをしたり子どもたちと遊んだりしてました。

「じゃあ、畑や雑木林の方に行くぞ」

 でっかいおっちゃんのお仕事が一段落すると村の外の畑や雑木林を見て回ることになりました。このあたりはあんまり平らなところが多くないみたいで畑も整地されず取れる形で作ってあるので作業効率が悪そうです。それでも小麦畑だけはそれなりに整地され作付けが良くなるようになってるみたいです。リエちゃんの話によれば、ですが。日本の棚田のように段々畑になってます。村のおじちゃんやおばちゃん達が畑を耕したり、じゃがいもの種芋を植えたりしてました。

 お次は雑木林です。

「結構色んな種類の樹が生えてるな。これサトウカエデだな。もうちょっと早くこの村に着いてたらメープルシロップ取れたかも。来年、頼んで取ってもらおうかな」

 リエちゃん本当ですか!メープルシロップ!

『ホットケーキ食べたいです!』

 あ、つい念話でホットケーキの画像送っちゃったしー。

「あ?ああ、シルヴァン。ホットケーキね。良いよ。おやつに焼こうか?」

『やった!』

「「ホットケーキ?」」

「ああ、甘いパンケーキです。炭酸水があるからできますよ」

「甘いんですか!」

「甘いのか!?」

「ええ、甘いんです。ユグの村で分けてもらったベリー類でジャム作りましたし、今日はそれでおやつにしましょうか」

 ひゃっほ〜!今日も甘いもの食べられるぅ!でっかいおじちゃんとちっちゃ可愛い女の子と一緒にはしゃいじゃいました。

「白樺もあるし、これは甜菜か?」

 白樺の樹の下にしゃがんだリエちゃんの傍に行きます。結構おっきな葉っぱをですね。てんさい?ビートのこと?

「甜菜糖もいけるかも?栗に針槐、養蜂したら蜂蜜もいけそうだし。甘い物の特産品ができそうな予感!」

 おお!甘いものいっぱいですね!

「甜菜がうまく行ったら精製の過程でモラセスができるからホワイトリカーもつくれるな。お酒も特産品!」

「酒もできるのか?」

「ええ、お酒もできるんですよ。まあ、かなり酒精の高いお酒が出来ますけどね。道具も作んなきゃですが」

「きつい酒か」

「ええ。でもそのお酒に果物を漬けて甘くて飲みやすい果実酒を作れますし、温泉を冷やした炭酸水で割ってもいけますよ」

 も、もしや梅酒ができるんでしょうか!かりん酒とか?わーいわーい、出来たら私も飲ませておくれ〜。

「色々、酒の好きなやつが喜びそうな話だなって、シルヴァンお前飲む気なのか?」

『もちろん!』

「……酔っぱらいの魔狼ですか」

「あはは。飲ませたらヤバそうなので監視が居るときだけね、シルヴァン。よっし!この村でも色々できそうなことがあるので、計画に盛り込んで大隠居様にお願いして事業拡大してもらいます」

「ダールさんも大変そうだな」

「あー、人手が足りないって嘆かれそうだなぁ。人手が集まってからかなぁ?まあ、お酒に税金かけられるだろうから領地の収入も上がるだろうし、なんとかなるでしょ」

 リエちゃんは結構思いついたことをできそうな人に放り投げるタイプのようです。放り投げられた人は大変そうだなぁ。

 村に着いたらパン屋の小僧になるとは思ってもいませんでした、この時の私……。

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