2−11
お、鐘が鳴り始めた!さて、程よく気合を入れて!
「えーっと、外にこの営業中の板を出せばいいんだよね?」
「アリッサさん、お願いー」
一番目のお客さんは誰かな?
あ!ベルンさんたちだ!
「いらっしゃいませ~」
スマイル0シリングですね!ベルンさん、ダリウスさん、取って食ったりしないからどうぞー。
ダリウスさーん!いらっしゃい!何買うの?何買うの?用意するよ!
「シルヴァン、おはよう。店の手伝いか?偉いなぁ、ほら、干し肉あるぞ」
ジャーキー!はっ。今食ったらぷっくりオオカミ一直線!?小腹減った時用?ぬぅ。でも食べる!うまー。
「……白の日にりんごのお菓子を作るんで良かったら遊びに来てくださいよ」
「やった!」
「「それは聞き捨てならない」」
「「同じく」」
え?なになに?りんごのお菓子?
「いや、あんた達。ダフネは一応りんごを差し入れたわけでしょ?それにただ乗りするのはどうなのよ」
マリ姉、ど正論。
「何か食材見繕って持っていきます!」
ファルちゃん、お菓子大好きだもんね。
「うちの料理に使える種や草花持ってくるよ」
ブリギッテさん、おうちの薬草園から持ってくるの?
「美味しいお茶があるから持ってく!」
美味しいお茶は大事だね、アリッサさん。
「ふむ、俺は近くの森のベリー類やきのこでも採集してくるか」
あ!ダリウスさん、一緒に探す!連れてって!
「あはは、ありがとうございます。よかったら白の日にお茶しに来てくださいな」
「「「「やった~」」」」
わーい!お茶会だ!
「それで皆さん、冷やかしに来たわけじゃないんですよね?」
あ、今パン屋の小僧でした、私。セールスしなきゃ!
「ないない。ちゃんと朝ご飯買いに来たから」
グレにーちゃん、サンドイッチ美味しいよ!いっぱい買ってって!
「今日はタマゴサンドとハムチーズサンドのセットになります」
「ねぇ、アマーリエ。スープの持ち帰りとか出来ないの?あの保温マグとか使って」
今神殿でお留守番中だっけ、グレにーちゃんたち。ご飯ずっと外食なのかな?
けど、食べられるとこなんて冒険者ギルドの食堂か、商業ギルドの宿の食堂ぐらいしかないもんね?
テイクアウトは、リエちゃんのパン屋ぐらい?
「あ、それいいですね。かぼちゃのスープならありますよ。外に机と椅子もあるから食べていきますか?それなら普通に木の器で出せますし」
「「「「「「そうする」」」」」」
あ、みなさん、すごい嬉しそう。やっぱ食生活大事よね。
「んじゃあ、トレーにサンドイッチ必要なだけ、ブリギッテとアリッサに取ってもらって、ソニアさんにお会計してもらってください。私、奥からスープ持ってきますよ」
「アマーリエさんスープの値段は?」
「二百シリングでお願いします」
ありゃ、イートインになっちゃった。はいはい、みなさん並んで並んでー。順番に注文よろしく!ふぉお、ダフねぇ、どんだけ買うの?トレーに山盛り!
「リエ、お肉のサンドイッチもな」
「はいはい」
あ、ダフねぇ、運ぶの手伝いますよー。
「ちょ、ダフネ買いすぎじゃ?」
「お昼の分!」
「さようで……」
グレにぃ、ダフネェの食費ってすごいけど、食費って個人なの?今度ベルンさんに確認しよ。
「シルヴァン、ありがとう」
「オンオン(どういたしまして)」
「シルヴァンは、パン屋の見習いもするんだな」
「オン!(そうだよ!)」
「魔狼がパン屋か……」
ベルンさん、そんなにしみじみ言わなくたって。
「いいじゃないの。シルヴァンの方がリエより長生きなんだから。色々できれば、それだけシルヴァンの選択肢が増えるってことよ」
「マリエッタは柔軟だな」
「リエとシルヴァンに関しては、常識を捨てることにしたの」
マリ姉、ちゃんと常識教えてくださいね。おかしなことして追いかけ回されたら、嫌だし。
「それが、心の安寧に繋がりますね」
えー、ファルちゃん、私の毛皮で癒されてるくせにー!
「まあ、なんにせよ、シルヴァンは、今日パン屋の仕事頑張れよ」
「オン!(はーい!)」
それじゃ、みなさんごゆっくり。さて、お店に戻るぞ!あ、アーロンさんだ!いらっしゃい!
「ほほ、おはよう。シルヴァンは、パン屋の小僧さんかい?なかなかいいの!店の護衛にもなるし、シルヴァンは愛嬌もあるから、シルヴァン見たさに客も集まるじゃろうな、ふむ……」
あれ、アーロンさん、パン買わないの?なんか考え事始めちゃったよ。そこにいると危ないから、こっち端に引っ張ってと。
「ブリギッテ!来たわよ」
「母さん!」
「うふふ、アリッサ、ちゃんと仕事してる?」
「お母さん!」
「「二人で来たの?」」
「違うわよ、表で会ったの」
「明日のパンを買いに来たのよ」
わー、二人のお母さんかぁ。初めましてー。
「「あらあらあら」」
「母さん達、これが、シルヴァンよ。可愛いでしょ」
「ほんとねぇ。シルヴァン、よろしくね?」
「オン!(こちらこそ!ブリギッテママ)」
「うふふ、かわいい。シルヴァン、よろしくね」
「オン!(こちらこそ!アリッサママ)」
「はいはい、二人とも、何買うの?どれも美味しわよ?」
「ブリギッテ、オススメはどれかしら?」
「庭で、食べていけるけど、今日は無理でしょ?お母さん」
「あら、そうなの?少し庭を見てから帰るわ」
「母さん、選べないなら、アリッサのところと半分ずつ買っていったら?」
「あ、それいいね。お母さん、ブリギッテのところと半分づつにしようよ」
「「シルヴァンが、パンを切ってくれるよ」」
「「あらあら。ならお願いしようかしら」」
はい!ただいま!どういう風にお切りしますか?
「まずは半分ね」
ホイホイ。
「あとどうしよ?」
スライスもできますぜ。
「指の幅ぐらいにスライスできる?」
「オン!(いいよ)」
ほい!
「「「「「おお!」」」」」
じゃあ、袋に詰めますねー。お会計どうぞー。
「これは助かるわ」
「ほんとに」
「「「「お買い上げありがとうございました!」」」」
「オン!(毎度あり!)」
「「さ、庭を見ましょ!」」
「「「「いらっしゃいませ!」」」」
おお、新しいお客さんだ!あ、そろそろアーロンさんを起動させなきゃ。アーロンさん、パン買わないの?
「わふっ(起きて!)」
「お、おお。朝のパンを買いに来たんじゃった。サンドイッチがあるんじゃの」
「スープもありますよ。お庭で食べていけます」
「ほおほお。ならそうしようかの」
「そうなのか!なら俺も食べていくとしよう」
「スープ二つね、用意する」
はい、二名さま、イートインで!
「「「いらっしゃいませ!」」」
うぉう、新しいお客さんきた!
「庭で食べられるのかい?わしも食べてっていいかの?」
「どうぞー、アマーリエさん、スープひとつ追加で!」
「はいよー」
「「「いらっしゃいませ!」」」
「はい、スープ三つ。ああ、ジュブワさん、いらっしゃい。そちらは奥さんですか?」
「おはよう、家内だよ」
「初めまして、おはよう、パン屋さん!盛況だね!」
「初めまして!おはようございます。お陰様で、助かってます」
「うちから開店祝い、持ってきたのよ!」
「「「「はい?」」」」
「いや、うちのが折り畳みの机と椅子をぜひ持ってけってな」
「ほら、あんた!庭に並べるよ!」
「お、おう。並べ終えたら、パン買うから!」
「はぁ」
「え?どういうこと」
ふわぁ、お庭に椅子とテーブルが増えたよ。すげー。開店祝いってことはタダなの?
「やるねぇ!さすが女将さん!」
太っ腹な女将さんだよね、ブリギッテさん。
「あの人はやり手なんだよ、シルヴァン」
ほうほう。
「いらっしゃいませ!みんな、次のお客さんきてるよ!」
「「!いらっしゃいませ」」
あわあわ。
「おはよう!ブリギッテ、アリッサ!今日からここで働くって?がんばんなよ」
「「あはは、いらっしゃい!」」
「外で食べられるんだね!今度うちの亭主とくるよ!色々あるね?何がオススメだい?」
「試食のパンがあるよ」
「そりゃいいね!」
「いらしゃいませ」
うわー、なんか次々お客さんが!?朝のパン買いに来たのかな?え、はい、切るんですね?
「私、スープ追加してくるよ」
「うん、それがいいよ」
思った以上に、イートイン、盛況なんですけど。あ、ベルンさん達帰るんだ。
「客も増えて、忙しそうだから、帰るな」
「シルヴァン、またな」
「オンオン(はい。トレーと器預かるよ)」
「お、任せた、じゃあな」
ベルンさん達、浄化魔法使ってくれたから、トレーも器も元に戻せば大丈夫っと。
「「「「ありがとうございましたー」」」」
「銀の鷹の皆さん、いい宣伝になってたね」
「そうだね」
「シルヴァン、パンのカットお願い!」
「オン!(はい、ソニアさん、ただいま!)」
「ほぉ!魔狼がパンを切ってくれるのかい?」
「ふふふ、うちだけですよ!」
「じゃあ、私のとこのパンもお願いしようかね」
はいはい、パンのカットは、お任せください!
「アマーリエさん、サンドイッチの追加、お願いします」
「了解!」
わぁ、いつの間に!?
「珍しいのと、すぐ食べられるのとで、サンドイッチ買う人が多いわね」
「村のお母さんやお婆さん達は、パンと一緒に買ってるけどね」
「おじさん達は、朝と昼の食事だよね」
「「うんうん」」
「ちょっと、想定以上かも。シルヴァン、今から追加作るよ」
村の人千人ちょいで、サンドイッチ一人二つづつ買う想定で、余ってもいいように作ったのにね。それ以上だもんねぇ。甘かったねぇ。
「オン!(了解!)」
ふおー、がんばるぜ!魔道具屋さんでサンドイッチ作る魔道具とか無理かな?
「いやいや、いきなり工業化はやめてね」
ん?なんか空耳が?忙しいからかな。
「シルヴァン、サンドイッチのカットお願い」
「オン!(了解!)」
「アマーリエさん!スープ五つお願い!」
「はいー!スープの追加できたよ!鍋に、鍋に状態維持の魔法陣欲しい!」
「アマーリエさん、ホワイトローフの追加お願いします」
「了解!シルヴァン、ハムとチーズのカットお願い!あとバターの攪拌も!」
「オン!(了解!)」
「はい、これ追加!シルヴァン、ありがとう」
リエちゃん、パンにバター塗って!具材挟むのやってみる!
「わかった!」
リエちゃんすごいスピードでバター塗り始めたし!えっと、具材を風魔法で浮かせて置いて、パン置いて、耳をカットして、さらに半分。よし、いけそう!
「ありがとう、シルヴァン。私は、その間に卵茹でるよ」
この忙しさは、きっと今日だけ、今日だけのはず!物珍しさのせい!
「どうかなー?人間て美味しいものに弱いからねぇ」
あー、聞こえない聞こえない。
「シルヴァン!お客さんのパンカットできる?」
「オンオン!(今行きます!)」
「カンパーニュ、八枚にスライスお願い」
「オン!(アイサー!)」
「「おお!すごいね」」
「お利口さんね!」
嬉しいんだけど!褒められても、喜ぶ心の余裕が、全くないんですがっ!!サンドイッチー。
「うげっ、スープの器が足りない!?」
あ、ほんとだ!棚にスープ皿がない!?
「パン屋さん!初めまして!木の器持ってきたよ!」
「「!」」
え、それなんてタイミング?
「さすがー、ウッディさん!冴えてるー!」
ブリギッテさん、元からアルバン村の住人て、どんだけ察しがいいのか、情報収取能力が高いのか?どこから情報回るわけ?怖いわ!
「アマーリエさん、こちら木工職人のウッディさん。今なら開店祝いで安くしてくれるよね?」
アリッサさんたら、ちゃっかりしてるー。なるほど、これぐらいできなきゃ、村の住人やれないわけね。
「いいぞ!幾つ必要だい?」
「えっと、この際だからスープ皿が……」
あ、この間にサンドイッチの生産しなきゃ!ぼーっと見てる場合じゃない。へい、乗せて挟んで切って、切って、乗せて挟んで切って、切って……。
「みなさん、おはようございます。盛況だって聞いたから、早めにきたわ」
「「「「ナターシャさん、最高か!」」」」
「えっ!?」
「ブリギッテさん、今の間に、早いけど、お昼休憩に入って!」
「了解!」
「私が、ナターシャさんに教えるね」
「アリッサさん、お願い!」
「ナターシャさん、最初は見て覚えて、それから、ソニアさんの横でパンの袋詰めやってみてね」
「わかったわ。ねえ、庭の机と椅子が増えてるのは、なぜ?」
「あーそれね、実は……」
「シルヴァン、ブリギッテさんを二階に案内して。ブリギッテさん、これ賄いね」
「オンオン!(了解!)」
「わぁ!いい匂い。ありがとう!お腹減ってるのに、今、気がついたよ。緊張してたんだ、私」
「お疲れ様。気持ちが急くかもしれないけど、ゆっくりお昼食べてね」
「うん、わかった」
「ワフワフ(ブリギッテさんこっちー)」
「あ、今行くよ。シルヴァン。パン屋さんの二階って、こんななんだー」
えーっと暖炉の火は強くしたほうがいいかな、ちょっと部屋の中寒いよね。薪を足して、少し風入れてっと。お、火が強くなった!
「シルヴァン、器用だねぇ」
「ワフ(えへ)オンオン!(ごゆっくり!)」
さて、お仕事お仕事。




