2−9
新年 明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
ういっぷ。お腹いっぱいー。
いやぁ、つい調子に乗って大量の薄切り豚肉の山を作っちゃったけど、ダフねぇも一緒に食べたから、晩の分のニラ豚はなくなった!
「はぁ、うまかったな、シルヴァン」
「オン!(最高!)」
「ふぅ、この敷物、気持ちいいな。アフッ……」
あれ?ダフねぇ、お昼寝?じゃあ、私もー!
うふふ、鍋でご飯が炊けるようになったから、いつでもご飯食べられるし!
いっぱい、リエちゃんにもダフねぇにも褒めてもらったし、幸せだぁ、ZZZZZZZZ……。
むにゃ、幸せの匂いがする〜。
ん、なんかあったか、気持ちいい……ZZZZZZZZ……。
ムーン?女の子の声がする?
「……ん?ここは……アマーリエの家か。うーん、久しぶりに昼寝なのに深く寝た気がするな。ん?シルヴァンは、仰向けで寝てるのか?無防備だな。アマーリエの家だから安心しきってるのか?」
……うにゅ?ダフネェが起きた?
「……ワフッ」
なんかスッキリした。あれ、毛布?
リエちゃん、かけてくれたのか。
「シルヴァンも起きるか?」
「オン!(起きる!)」
「シルヴァン、毛布たたむぞ」
「オン!(了解!)」
「そっちの端を……」
咥えるより、風魔法で持ち上げられるかな?えい!ありゃ!?
「ブハッ」
あ、見事に、毛布お化けになっちゃったよ。ダフねぇ、ごめん。咥えるわ。えいしょ!これでどう?
「うん。そのままな」
ふぅ、たためた!はぁ、手が使えるって偉大!はやく人化したいなぁ。
あ、リエちゃん、上がってきた!
「オンオン!(リエちゃん!)」
「毛布ありがとう、アマーリエ。誰か来てたのか?」
「お店の手伝いを頼んだ人が来るんですよ。今から開店の準備です」
「私も何か手伝うことあるか?」
「なら、居間の木の長椅子を下ろすの手伝ってもらっていいですか」
「いいぞ。あれなら私一人で持てる」
「あ、そのほうが安全ですね。下手に私が一緒に持つより」
「ああ。階段が危ないからな」
オオゥ、ダフねぇ、力持ちだァー!今度こそ、ちゃんとお手伝い!風魔法で、気持ち軽くなるように持ち上げる!
「オン!(えいや!)」
「ぬ?軽くなったぞ?」
「風魔法で浮き上がらせたのかも」
「凄いな!シルヴァン!」
「オンオン!(今度は成功!)」
「それなら大丈夫ですね。シルヴァンにもお願いがあるんだけど」
「オン?(なに?)」
「庭の草を風魔法で刈り取ったりとかできそう?」
「オンオン!(それは問題ない!)」
「お!任せた、シルヴァン!じゃあ、下に降りるか」
ウェーイ!庭仕事ー。
うはは、草が元気いっぱいだ!
「シルヴァン、草丈をこの位にして刈れちゃう?」
「オンオン!(了解!)」
では!かまいたち!そこからの〜、集積!ドヤッ!ぱなしはしないよー!
「「凄いな~」」
「シルヴァンちゃん凄い!」
でしょ、でしょ!あ、お客さんだ!
「アマーリエさん!」
「はい」
「その刈った草ください!肥料にしますから!」
「いいですよ~。うちも助かります」
「あ、どうやって持って帰ろう?」
「アイテムトート・バッグの予備があるからそれに詰めましょうか?シルヴァン、机の横に引っ掛けてあるトート・バッグ持ってきてくれる?」
「オン!(はい!)」
生成色のちょっと大きなやつね!ただいま!
これね!風で浮かせて、ほいっ!そのまま〜運ぶー!
はい、どうぞ!
「あ、ありがと、シルヴァン。ブリギッテこれ使って」
「ありがとう~。シルヴァンもありがとうね。じゃあ、私はあの草の山片付けてくるよ」
どういたしまして!
「私も手伝うわ」
草の片付け手伝ったほうがいいのかな?でも南の魔女様には、リエちゃんのそばって言われてるしな。
とりあえず、待機かな?
それでおじさんは、だれ?キャンプ道具屋さんなの?こっちの世界も折りたたみの椅子や机があるんだ!
リエちゃん、お庭カフェするんだね。
ダフねぇは、おじさんとダンジョン話!へー、アルバンダンジョンって、まだまだ攻略が進んでないんだね。
「……。決めた!椅子と机買います!」
「いいぞ!どこに運ぶ?」
「どうしよ。庭に置くつもりなんですけど、今日から白の日まで天気の具合どうですかねぇ」
「外に出しっぱなしか?白の日まで天気は崩れないだろうな。うちの婆さんは自分の骨の具合で天気を当てるんだが、この所調子がいいって言ってたから、しばらく雨はないだろ」
「お父さんもしばらく晴れが続くって言ってたわよ」
「しばらく晴れてるぞ。毛並みで分かるんだ」
え!?何それ?ダフねぇ、私も自分の毛並みで天気がわかるようになりたいぞ!って、みんな、椅子と机を運びだしたよ、あわわ。
リ、リエちゃんはどこ?おう、いつの間にお茶の準備!?
おじさんはもう帰るのね、バイバイ。
おお、美人さんが2人きた!
お茶会!お茶会!私もおやつ!
ラスクうまっ!
うひひ、みんなの周りを回れば、みんなくれるし!オオカミ最高!
「君、魔狼だから!食べなくていいんだからね?本当は」
いいだろ〜、ヒマジン!霞を食うだけが狼生じゃないんだい!
あれ?
お姉さんどこいくの?
「あ」
「意外にナターシャさん行動派だったね」
「うん」
そうね。おしとやかな感じに見えたのに、意外に行動派ね。あ、ダフねぇ、そのラスクください。あーん!
「ほい、シルヴァン」
うまうま。
「シルヴァン、鼻の上に乗っけるぞ?」
はい?載せるんですか?いいですけど。
「「「「?」」」」
「よし!」
では!あらよっ!パクっとな!
「「「「おお〜」」」」
ふふふ、これぐらいはできるんです!
「シルヴァンちゃん、おいでおいで!」
なんですかー?
「私もいい?鼻に置くよ?」
「オン!(いいよ!)」
「よし!」
へい!パクっとな!うまうま〜。
「おお!私でもできた!」
「「「「おお〜」」」」
ほほほほほ!あ、なんか、生垣の向こうから、ドアがこっちにやってくる!
「「「「あ!ナターシャさんだ」」」」
「アマーリエさん、夫のイワンと同じ店に務めるダンよ」
「お二人とも急な話なのにありがとうございます」
「いや、全然訳がわかってないんだがな」
「うんうん。うちの店で余ってる扉を持ってきたぞ」
「とりあえず店の中に」
「ああ」
「わかった」
???今からドアつけるの?どこに?
「壁どうするんだろうね?」
「アマーリエさんて壁壊せるの?」
「いや、壁は作ってたが、壊せるかはわからないぞ」
「「「「は?」」」」
ああ!河原の露天風呂の岩屋ね!はいはい、確かにリエちゃん作ってたわ。でも、あれ魔石使ってなかったっけ?
リエちゃんあんまり魔力ないよね?
うぉ、壁が光った!眩しいー。ふぉぅ、目が、目がぁ。なんっちゃって。
「……君たちってさぁ、なんっちゃってごっこ遊び好きだよね?」
うるさい、ヒマジン。機会は逃しません!最早仕様です!ネットで滅びの呪文唱えてサーバー落とすこともありますけど、それが何か?
「ここの世界で滅びの呪文は唱えないでね。洒落になんないから!」
ヘーイ。魔法の世界だもんねー。あれ?みんなでとなえたら滅ぼせるぐらい、こっちに来てる日本人多いの?あれ?あれ?少子化の原因お前か!?
「それは企業機密だから!」
地球の神様、こいつですー!
「ちゃんと許可もらってるよ!」
え、共犯なの?
「「「「わぁ!」」」」
なに?なになに?
「お、すごいな。戸口ができたぞ」
わあ!階段ある!張り出しのアーチもある!リエちゃん、すごい!あ。やばい、リエちゃん、魔力ギリギリ!あわわわ。
「君、魔力回復もできるから、助けてあげたら?」
ヒマジン!MP回復できちゃうの!?まじか!リエちゃーん!
「はぁ。流石にきつかった」
「オン!(でりゃ!)」
「りゃ、シルヴァン凄い!魔力回復の魔法もあるの!?」
うほほほ。リエちゃんモフモフ上手〜。ふふふ、これでダンジョン攻略もバッチリや!
「パン屋さん!終わったよ」
あ、ドアがついた!
私も開けられるかなぁ?ヨイショ。ノブはこっち回しかなぁ?お!開けられた!
「おいおい、魔狼っていうのは扉が開けられるもんなのか?俺、村に来た従魔はよく見るけど、こんなの見たことないぞ」
「ダンさん、私も初めて見たよ。ダフネさん?」
え?なに?まずかった?うちの実家のわんこ、普通にドア開けてたんだけどなぁ?閉めるのはしなかったけどさ。
「シルヴァンだけじゃないか?シルヴァン、脱走するんじゃないぞ?」
「オンオン!(しないよ!)」
「まあ、こいつだとあんまり害はなさそうだなぁ。なんつうか……ほのぼの?」
「シルヴァンちゃんて、魔狼の怖さがないよね」
「「それな」」
「オン!(怖くないよ!)」
「おい、ダン!戻るぞ」
「お、おう」
「いやー何か、化かされた気分だ」
「確かに。夢見てるみたいだったな」
お兄さんたちまたね!今度はお客さんで来てねー!
「アマーリエ、私はシルヴァンと外でのんびりしてるから」
「わかりました。おやつ食べすぎないでくださいよ」
大丈夫ー。ちゃんと運動もするからー。
ダフねぇ、なにして遊ぶー?
「シルヴァン、じゃあラスク隠すから、それ見つけるのな!探知の練習だ」
「オン!(了解!)」
「じゃあ、壁向いて、よしっていうまで伏せ」
「オン(ほい)」
「あんまり数が多いとアマーリエに、おやつ食べさせすぎって叱られるな。よし!いいぞ」
「オン!(はーい)」
チーズのラスクはすぐわかる!お砂糖のはバターの香りー、ふんふん。
「オン!(あった!)」
「食べていいぞ」
はやく全部見つけて食べねば!ありんこに負けちゃう!こっち!あった!次こっち!
「オン?(これで全部?)」
「すごいな!早くて正確だ!」
アリンコには負けません!
「次は身体能力の確認か?ここの生垣、飛び越せそうか?」
「オン?(どうだろ?)」
「微妙そうだな」
「オン」
念話!
「風の魔法を使うのか?うーん?まずは、自分の筋力でどれぐらいできるか、確認しておいた方がいいぞ。魔力が切れたら逃げられなくなる」
「クーン(それもそうか)」
「まずは、ここの椅子を使って飛び越せるか、少しずつ確認だな」
「オン(なるほど)」
タイヤの馬跳びの応用ね!
「店を開ける前と店が終わった後に練習な」
「オン!(了解!)」
「ここの生け垣が飛び越せるようになったら、森の中の逃げ方も変わってくるから」
「オン!(なるへそ)」
「シルヴァンちゃーん」
「オン!」
「アマーリエさん。シルヴァンちゃん、撫でてもいい?」
「シルヴァン?」
「オン!(いいよ!)」
うひひ、モテ期きたー!
「アマーリエ、準備はもういいのか?」
「とりあえずは。まあ、明日の様子を見ながら、臨機応変で」
「なるほど」
「ダフネさんもお話ししましょうよ!冒険の話、聞かせて下さい!」
「いいぞ、ブリギッテ」
わーい、おしゃべりおしゃべり!
いやぁ、女同士のおしゃべりって時間経つのが早い。
「そろそろ帰らないと」
「そうね」
「あ、よかったらラスク持って帰って下さいよ」
「「「「ありがとう!」」」」
お姉さんたち、明日もよろしくねー!
「シルヴァンちゃん、また明日ねー!」
「オンオン!(またねー!)」
はぁ、モテモテって素晴らしい!これは、早く人化して、もっとモテモテにならねば!狼の獣人がイケメンなのは、定番だもんね!
「シルヴァン?」
「オン?(なんでしょう?)」
「ご機嫌だね?」
「オン!(ええ!)」
「まあ、いっぱい遊んでもらってたもんね……」
リエちゃん、その疑惑のまなこはなんですか?私、ちっとも悪い事考えてませんよ。
ふんふん。あれ?この香り?
「ダフネ!探したぞ!」
「あ、ベルン!」
おかんが来たー。
「わるい、リエ。明日開店だろ?ダフネが邪魔しなかったか?」
「いろいろ手伝ってもらって助かりましたから。シルヴァンも遊んでもらったもんね?」
「オン!(あそんだ!)」
「そうか」
「ベルン、お菓子をもらったぞ。ファルも喜ぶ」
「リエ、ありがとうな。明日、絶対店に買いに行くから」
「いっぱい買ってってくださいよー!」
「ああ、もちろんだ。明日頑張れよ!」
「はい」
「シルヴァンも、しっかり手伝うんだぞ」
「オン!(任せて!)」
「「じゃあ、明日な!」」
「はい、また明日!」
「オンオン!(また明日!)」
ふぅ、明日はいよいよ、パン屋さんがオープンするぞ!