2−7
お久しぶりです!
こちら梅雨明けして、完全夏空、アホみたいに暑いです。
空が、目に染みるほど青いよ!
皆様も、なるべくご無理なさらず、程よく休憩入れつつ、お過ごしくださいませ!
さあ!今日も素晴らしい朝だ!
朝ごはんは万頭に柑橘のジャム、タマネギと卵の鶏ガラスープでした!うまうま!
「リエ!シルヴァン!おはよう!」
ん?虎耳のお姉さん?おはよう!
「ダフネさん、おはようございます。どうしたんですか?」
「シルヴァンを訓練に誘いにきた!ダンジョンに潜るんだろ?」
「オン!(もちろん!)」
「ああ。訓練て、丸一日ですか?」
「日暮れには、ちゃんと送り届けるぞ」
おおー、本格的か?
「なら、昼食の用意しますね、ちょっと待ってください」
お弁当!私のお弁当!わー、リエちゃん作ったサンドイッチの具、すごい勢いでサンドイッチにしてる。
すげー。さすがパン屋さん。え、アイテムバッグにどんどん詰めてるけど、売る分大丈夫なのかな?
「うーん?スープどうしよ?シルヴァン用の魔法マグや魔法瓶も、早くあつらえないといけないねぇ」
「オンオン!(マイボトル!)」
「時間に余裕ができたら、なる早で行こうか。ヨハンソンさんとこに」
「オン!(いく!)」
「ダフネさん。サンドイッチを詰めときましたんで、お昼に皆さんでどうぞ」
「おお!ありがとう、リエ!」
お〜う、リエちゃんが、虎耳のお姉さんに抱き締め上げられてる。
リエちゃん、息してる?お、タップした!やっぱギブだよね!
「ゲフッ。いえ、シルヴァンをよろしくお願いしますね」
「任せとけ!」
「オンオン!(頑張る!)」
「よし!行こうか。シルヴァン!」
「オン!」
「行ってらっしゃい!怪我しないようにね!」
「オーン!(行ってきまーす)」
今日から、私は冒険者見習い!がんばるぞー!
「シルヴァン、反対反対。こっちに行くんだよ」
「ワウ?(冒険者ギルド、コッチじゃなかったっけ?)」
「神殿の留守居役を引き受けたから、神殿に行くんだよ。あ、リエに伝えるの忘れてた」
「オーン」
「まあ、夕方でも良いか。さ、神殿まで競争だ!」
「わぅ!?」
ちょっ!?虎耳のお姉さん、待って!あ、足、早すぎー!今までは本気じゃなかったのかー!
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
心臓バックバク!息苦しい!全力疾走させないでー。負けましたよ!四つ足なのに!もう虎の威を借る狼でいいや!
「大丈夫か?シルヴァン。よく来たな。おはよう」
で、でっかいおじちゃん、モフるの、ちょ、ちょっと待って。息がまだ整わないー。ああ、そんなしょんぼりしないでぇ。
「ブフッ、シルヴァンに拒否られてやんの」
「ダリウスさん、シルヴァンから両頬抑えられてる!いつもと逆だね!」
あ、でっかいおじちゃん、ヒョットコ顔にしちゃった、ごめんよー。
「笑うな、ベルン!グレゴール、羨ましいだろ!ダフネ、何した?」
「パン屋の前から競争したんだ」
「ふむ。ならまず、シルヴァンは、逃げ切る体力をつけるところからだな」
え?でっかいおじちゃん、それどういう訓練ですかー?今日1日走り回るとか?まじで?今、バッハのトッカータとフーガが頭に響いたんですけど!
「ティラリー♪鼻から牛乳〜♫だっけ?」
げ、出た。ヒマジン!それどこ情報だよ!
「そりゃ、君たちの世界の管理者に決まってるだろ」
……ひまか?ひまなのか!?
「ダリウス。シルヴァンが、呆然としてるぞ」
「シルヴァン?どうした?」
「キュウキュウ(一日走り回るのは絶対いや!)」
どうしたもこうしたも、シブメンおじちゃん、でっかいおじちゃんをとめて!
「何、甘えてるんだ、シルヴァン?俺は、お菓子は持ってないぞ?」
「リエが昼食とおやつを持たせてくれたぞ。このアイテムバッグに入ってる」
お菓子は、ちゃんとリエちゃんが用意してくれたし!
「ダフネさん!そうなんですか!」
「ファル落ち着け、さっき食ったばっかりだろ!ゴホン。訓練の前に、これからは一緒にダンジョンに潜るんだ。シルヴァンは思ってる以上に、状況の把握や認識をしてる様だから、きっちりこちらも自己紹介しとこう」
「「「「「ベルン?」」」」」
ご挨拶、そう言えば正式にはまだでしたね。
「オン!オンオン!(シルヴァンです!よろしくお願いします!)」
「ああ、よろしくな。クランもパーティ名も銀の鷹。そのまとめ役のベルン。前衛で剣士だ。得物は片手剣」
シブメンおじちゃん改め、ベルンさん!よろしくね!
「オン!」
「俺はダリウス。クランとパーティーの中じゃ、ベルンの補佐をする感じだな。戦闘の時は、前衛でタンク。得物は大盾、戦斧だ」
でっかいおじちゃん改め、ダリウスさんね。また抱っこしてね!
「私はマリエッタよ。魔法全般を受け持っているわ。後衛で魔法士。戦闘中は、もっぱら攻撃魔法が主で、魔力を増幅するために、杖を使うわ」
ういっす!美魔女なおねーさんは、マリエッタさん。マリ姉に決めたー!
「私は、ファルです。シルヴァン、改めてよろしくね。私は、帝国に所属する神官ですが、特定の神殿に籍は置かず、今は修行のため銀の鷹に所属し、各国を回っています。後衛で回復と補助魔法の担当で、戦闘中は、触媒に樫の杖を使っています」
ちっちゃ可愛い女の子は、ファルちゃん!お菓子分けっこしようね!
「俺は、グレゴール。旅やダンジョンの中では、もっぱらダフネと一緒に哨戒任務にあたる。リルとハルの世話もする。ファルと一緒に、食事の準備なんかもしてるぞ。戦闘では中・後衛で、弓士だ。使うのはコンポジットボウだな」
ほうほう、優男のおにーさんは何でも屋なグレゴールさんと。グレにーちゃんな!
「最後に、私はダフネだ。虎人族と人族のハーフでもっぱら遊撃だ。得物は大剣だ」
「???(ダフねぇ?)」
え?大剣て、どんな大きさなんだ?遊撃で使えるような大きさなの?両手剣で、チーム攻撃するのなら基本固定位置なんじゃないの?リーチの長い人が暴れまわったら、味方も危ないじゃん?槍なら馬上からだったり、攻撃の仕方が基本、突きだから直線で、ゲームみたいな振り回すような大技、リアルでやんないでしょ?
「「「「「どうしたんだ、シルヴァン。首傾げて?」」」」」
「ワフワフ(どう説明すりゃいいんだ?」
えーっと、現状、言葉はわかるんだけど、実は勝手に翻訳されてる感じで、こっちの言葉って発音も文字もわからんのよねー。リエちゃんとは日本語で念話か、実物わかってるものはそのまんま画像だけど、わかんないことは、ざっくりビジョンで会話なんだよねー。やばい、言葉、覚えなきゃいけなくない?
「言葉覚えるの?翻訳機能のオンオフつけようか?」
『!ヒマジン、神か!文字と言葉、全部頭に入れ込んでよ!』
「一応神だよ。あのさ、知恵熱どころじゃなくなるよ?ベースは狼で、言語野まだ発達途中だし、言語スキルが取れて、レベルがあがんなきゃ、無理だよ。この世界は、そういう仕様なんだから」
『ガーン』
「じゃあ、とりあえず言語スキルつけて、翻訳がオンオフ出来るようにしとくね」
感謝してやんよ!こんチクショウ!
私の子どもの落書きレベルのイメージを読解してくれるリエちゃんは、ヒマジンより、まじ神じゃないか!
「え、ちょっとそのざっくりメージなるものを思い浮かべてみてよ。解読して見せるから!」
『まだ居たのか!もういいよ!仕事しろ!』
うーん、とりあえず、皆さんに、ざっくりイメージを念話してみるべし。ヒマジンは勝手にみろや!
「あーっと、大剣の大きさが知りたいのか?」
そうそう、ダリウスさん、そのとおり。わーい、通じた!
「えー、なんでそれがわかったの?でっかい十字とちっさい十字じゃん!」
『黙れ、ヒマジン。勝手に混ざるな!』
「いやいや。君にしか聞こえてないからさ」
私の中で会話が混ざるんですー!聞きづらいからやめてー。
「いいぞ!見せるぞ!」
ダフねぇ、今、持ってないよね?
「見てろ!」
お!おおおぅ!なんで身長より長い剣、しかもめちゃ幅もあるのを、手甲から出せんの!?モノホンのクレイモアより大剣やん!しかも片手持ち!?おかしいぞ!いろいろおかしすぎるぞ!
「ハハハ。驚くよねぇ、シルヴァン」
ええ!グレにーちゃん!驚きましたとも!いろんな意味でな!ダリウスさんなら、片手で持てる?
「なんだ、シルヴァン?俺が使えるか知りたいのか?」
うんうん。
「持つのと基本動作ぐらいはな。けど戦闘に耐えうる技量かってきかれたら、無理だ。俺は盾持ちだからな。シルヴァン、口が開いたままになってるぞ」
あ、お口閉じます。
「シルヴァン。このクラスの大剣持ちは、普通は両手持ちで、前衛固定、動き回るのは稀だ。ダフネは切り込んでいくから、動き回る。だから絶対、戦闘の時はダフネに近寄るなよ。耳か尻尾がちょんぎられるぞ。良くてだ。下手したら胴体、真っ二つだからな」
「ヒュウ」
ベルンさん、それマジで言ってますよね?お顔、真顔なんですけどー。
「ベルン、あんまり脅すなよ。けど、シルヴァン。戦闘中は、ダフネの側、禁止な」
ダリウスさん、それ全然フォローになってない。
わたし、後衛で魔法使うもんね!
狼でスピード重視の機動型、遊撃ポジションだと思ってましたが、現実が理想を駆逐しましたね!
ふぅ、ポジションのザックリイメージ、念話っと。
「ふむ、そうだな。最初はマリエッタやファルのそばで、魔法を使う方が安心かもな。お互いに。ちゃんと戦闘位置も把握できてるみたいだな」
「オン!」
「うん、わたしもその方が全力で戦えるな!」
ダフねぇ、もっと得物に見合ったチームプレイしようよー。それか、双剣とかに変えない?念話っと。
「まあ、遊撃なら、普通は短剣系統だものな。お前が言いたいことはわかるぞ、シルヴァン。だがな」
「「「「「ダフネに器用さは求めるな」」」」」
みなさん、そんな真顔で声揃えていう?でも大きな剣振り回すのって、膂力も要るけど、器用さも絶対要るよね?
「大剣以上に危ないんだ」
「剣が飛んでくるからさ、うっかりで」
短剣だとすっぽ抜けるんですか、軽過ぎて。
ベルンさん、グレにーちゃん……そんな遠い目で。
試した後でしたか。そうでしたか。そりゃ、すいませんね。大人しく後衛しますわ。
ゴッホン!それで、今日は、お互いをよく知り合う日なんですよね!
いろいろ聞いちゃうぞ!もちろん聞いたらあの世の扉が開くようなことは、聞いたりしませんよ?
ええ、わたし勇者じゃないんで、ヴァレーリオ神殿長みたいな怖いことできゃしません。
「シルヴァン?」
「オン?(マリ姉、何?)」
「そらっとぼけた顔が、リエに似てきたんじゃないかしら?」
きーのーせーいー!
では!
「オン!オン!(ベルンさんいくつから冒険者始めたの?)」
「ん?……大人の俺?矢印が反対向き?んー、俺がいつから冒険者なのかってことか?」
「おかしい。なんで通じるの?」
うるさいよ、ヒマジン。まだ居たの?
「オン!(そのとおり!)」
「俺の場合は、親が冒険者だったからなぁ。物心ついた時には冒険者見習い気取りだったな」
ダリウスさんは?
「俺の親も冒険者で、ベルンの親と組んでたからな。見習い前から、ベルンと村の外に出てたな」
ほうほう、二人は幼なじみ?
「血の繋がらない兄弟みたいなもんだな」
「ああ」
じゃあ、子供の頃のあーんな話やこーんな話は、お互いによく知ってるわけだ。
「「……まあな(何故二人してねしょんべんして叱られてる絵なんだ?)」」
ワクワク。
「「聞くなよ?」」
「ぷひ(チェッ)」
「「「ちぇっ」」」
「お前ら、ついでに聞こうとすんな!」
「話戻すぞ?小さい頃から冒険者ギルドに出入りしてて、見習いの歳には、もうCランクだったんだ、俺らは」
「「「ほー」」」
「成人するまでは、親の知り合いのパーティーに修行に出されてな」
「親じゃ、甘くなるか厳しくなり過ぎるか、近過ぎるせいで良くないっていうのが冒険者の共通認識なんだ。職人の場合は、親子の相性を見た上で外に出したり、家で育てたりいろいろなんだがな」
「ワフー」
「ここの御領地の騎士見習いは、寮に集められて学ぶみたいですね。なんでも集団戦の練度を上げるのと、一度に皆で教えて、おたがいに切磋琢磨して、考え学ぶことを身につけるためとかと、バルシュティンの冒険者ギルドの噂話でお伺いしたことがあります。冒険者ギルドも真似をして、見習いまでの冒険者をまとめて教育する施設を作る、というお話が出てましたね」
へーへー、冒険者の学校かぁ。ファルちゃん、色々知ってるんだね。
「ベルンとダリウスは、ギルドから指導に来ないかって、誘われてなかった?」
「ああ。けど、まだ隠居する気がないから、今まで通り、ギルド依頼で冒険者のランクの見極めするぐらいだぞ。そういうマリエッタは、まだ弟子を取らないのか?」
「私は、教えるのに向いてる気がしないのよね」
マリ姉ちゃん、魔法士はどうやってなるの??
「何?えーっと、話の脈絡と、普段着っぽい私から矢印が出て魔法士装備っぽい私……。魔法士にはどうやってなるのかって聞きたいのかしら?」
「オン!(正解!)」
「生活魔法は、家や近所の人、得意な人に教わるんだけどね。魔法士になるには、魔力量が一定よりも多い子どもが、近くの魔法ギルドで魔法の基礎を習うのよ。まずは、魔力を制御できるようにね。そのあと、魔力を使ってみたい子が、魔法士、魔道具士なんかの専門に別れるわ。そして、師匠と弟子の契約を結ぶのよ。教え方に合う、合わないがあるから、師匠を変える人もいれば、同じ師匠の元にずっといたりするわよ。ただ、視点を変えるために他の師匠のところに預けられたりもするわね」
「ワフ(なるほど)」
「魔法ギルドが近くにない場合は、近くに住む魔法士もしくは魔法師に直に弟子入りもあるし、あえて遠くのギルドに行くこともあるの」
ほうほう。
「見習いから正式な魔法士に認定されると、研究会にも所属するようになるのよ」
えーっと、こないだみたいに食べ物でバフがつく場合の研究とか?
「ん?塩揚げドリ?ああ!そうそう。ああいうのを調べるのよ。探求すべき課題が山ほどあるわね」
え、じゃあ、なんでマリ姉は、冒険者?
「現場主義で実践主義なのよ、私は」
フィールドワークなんですね!あれ、なんでベルンさんとダリウスさん、よそ向いて笑いを堪えてんの?
「何かしら?」
「「ゴホン、なんでもないぞ」」
あ、今ここで聞いちゃいけないことなんですね。わかりました。後でダリウスさんに聞ーこうっと。
「はは、シルヴァンは偉いなぁ、ちゃんと空気読んで」
グレにーちゃん、生き延びるコツです。
「オン!」
「魔法士装備のシルヴァン?魔法士になれるかってこと?」
「オン!」
「また、前例のないこと聞いてくるわね。あんたがやってみたいのなら、南の魔女様なり、東の魔女様に頼んでみたら?素質はあるんだし、あの二人なら、面白がって、弟子にはしてくれると思うわよ」
「オーン(なるほど)」
「ちょ、マリエッタ?」
ベルンさん、止めないでね!私、魔法使いの星になる!
「ベルン、どこにも魔狼が魔法士になっちゃダメとも、なれないとも、書いてないわよ」
マリ姉、魔法に関しては常識まるっと無視するんだな。
ふむ、魔女っ子シルヴァン目指してみようかな?あのリボンは嫌だけど!遊撃アタッカーのつもりだったんだけどなぁ。後衛魔法職になっちゃったしさー。
「シルヴァン!回復魔法も治癒魔法も使えるんですから、私と一緒に神官しませんか!」
わ、宗教勧誘きた?ファルちゃん?
「神官は誰でもなれるんですよ」
「ワフ」
「神殿の一番の使命は、皆さんが、恙無く暮らせるよう補佐をすることなんです」
「?」
「お薬を作ったり、健康面なんかの補佐ですね。魔法に関しては、使える方は治癒や回復、支援の魔法に特化していたりします。悩みもお聞きします。祝詞をあげて心の安寧をはかったりとかですね。神殿に常駐する人と神殿から神殿を巡回する人が居るんですよ」
「ワフ」
神官さんて、お医者さんの代わりなんだね。神様はどういう位置なの?信仰の対象なんだよね?
「人ではどうにもならない時、祈り、力をお借りする感じですね。滅多にありませんが、神託が降りることもあれば、なんらかの形で祈りに応えて頂けることもあります。多くは加護が一時的につく感じです」
「ワフー」
神頼みは最後なんだね。
「そうだね。何でもかんでも僕たちに頼まれたところで、因果律や世界の仕様ってもんがあるから、手出しできるとは限らないんだよね」
いや、ヒマジン、アンタ口出しすぎ。
「世界に大した影響ないからね、君との会話は」
さよか。本当にただの暇つぶしだったでござる。
「どうした、シルヴァン?渋い顔して」
「オン(なんでもないよー)」
「で、どうでしょう?」
狼怖がられない?退治されたりしない?
「神官服を着て勤めを果たしていれば、よほど悪いことをしない限り、人から退治なんてされませんよ。アルギスさんに頼めば、神官服ぐらいあつらえて頂けると思いますよ」
「「「「ファル!」」」」
ファルちゃん、何気に権力者使う気満々やなぁ。
ま、他に仕事先が見つからなかったら、神官も考えときます。長生きするらしいから、仕事の選択肢は増やしとこ。
「ええ、選択肢は多い方がいいですね」
「へー君が神官かぁ。面白そう」
けどヒマジン!貴様は私の信仰対象じゃねぇよ!この世界の神様をもっと知ってから考えるもんね!
「そう?あ、呼ばれた。行かなきゃ。ま、この世界楽しんで」
とっとと行け!
グレにーちゃんは、どういう経緯で銀の鷹に入ったの?
「何々?ベルンさんとダリウスさんの方向に矢印、矢印の始点は俺……。俺が、ベルンさんとダリウスさんの仲に割って入ってるのかって!?」
「オン!?(そうなの!?)」
え、え、ここもやはり腐界なんですか!?腐女子や貴腐人もいるんですか!
「貴腐神もいるよ」
ヒマジン、まだ居たのか!呼ばれてるんだから、早くいけ!
「はいはい、今行きます!面白そうなのになー」
……貴腐神までいんのか。きっと布教しやがった奴がいるんだろうな。
はぁ、前世もそうだった。文化侵食の早さに慄いたもんよ。
「いや、違うだろ。お前が、いつ、俺らのパーティーに入ったか?とか、そういうこと聞きたかたんだろ?」
「オン(そうっすねー)」
「あ、なんだそうか。そうだよね!あはははは」
「シルヴァン。ちなみに俺たちのパーティーは、俺たち二人の他に先輩が三人ほどいてな、魔法士の人が弟子をとるからって抜けて、マリエッタが入ったんだ」
「オン(ほう)」
「その後、神官と弓士が抜けて、ファルがその神官の紹介で、グレゴールは弓士の紹介で入ったんだ」
「そうなんだよ。二人は結婚してね、俺が住んでた村に居を構えたんだ」
「ワフー」
「ちなみに、わたしは、母の紹介で銀の鷹に入ったんだ」
「オン!」
ダフねぇのお母さんてどんな人?
「うちの母か?虎人族の族長の子で、一族の中で一番強い人だぞ」
「そうだな。若い頃に、娘が冒険者になることを止める族長をぶっ倒して、冒険者になったって聞いたなぁ。実際、俺が会ったことのある物理職の中では、名を挙げれば片手の指に入るほど強い人だ」
「虎人族で一番の美人なんだそうだ。白虎で綺麗な青い瞳の美人だぞ」
「ワフー」
「母は別の冒険者パーティーに居てな。大抵は獣人族の多い国を回ってるぞ」
「ワフ?(お父さんは?)」
「父か?直人族だぞ。虎人族の里で、魔法師をして子どもたちに魔法を教えてる」
「ワフ(なるほど)」
「私は父譲りなのか、獣人族の中では魔力も高い方なんだが、魔力具現化力が母譲りで低い。もっぱら身体強化に魔力を使ってるんだ」
「ワフ?」
魔力具現化力ってなんぞ?
「攻撃魔法や治癒魔法、支援魔法なんかの、自分以外に魔力を行使するための能力だと考えればいいわ」
「オン!」
「まあ、魔力具現化力を補ったりするのが、魔法陣なんだけどね」
「ワフー」
「あら、シルヴァンは実践だけじゃなく、理論もいけそうね。教えがいがあるわ」
え、マリ姉?私、マリ姉の弟子になっていいの?
「うーん?どこまで教えていいのかしら?弟子と言うなら基本もしっかり教えたいけど」
「おい、マリエッタ。シルヴァンは、リエんちのこだからな?うちの子じゃないぞ?一時預かりみたいなもんなんだからな」
「あ」
「魔女様方に任せるんだろ?」
「そうだったわ。つい、物覚えがいいから、いろいろ教え込みたくなっちゃうのよね」
「ワフー」
「様子見ながら考えましょ」
「ワウ」
「なあ、ベルン。腹が減ってきた。リエから、昼も預かってきたし、食事にしよう」
おう、正午の鐘も鳴った!ダフねぇ、腹時計正確だね!
「そうなのか?」
「シルヴァンの訓練を見るから、そのお礼みたいなもんだって」
「なるほど。じゃあ、遠慮なくいただくか」
「ああ」
「オン!(ご飯ー!)」
と言うわけで、お昼ご飯の後もあれこれ、ベルンさんたちにお話を聞いて、今日は終了!イエーイ!走らずに済んだぜ!
アマーリエが必死でパンを焼いている頃、シルヴァンは銀の鷹にインタビューしてましたとさ。




