(6)
「全然分かんないんだけど」
結局は分からない。今までもそうだが、一度たりとも小枝の推測にちゃんと行き着けた事がない。
正直な私の気持ちに、小枝は口を開いた。
「アイドルってとこがね、結構みそな気がするんだよね。なんかある種警告というか」
「警告?」
「まあいいや。それは一旦置こう。とりあえず、この話で得られた結果というのは有加という一人のアイドルがおそらくとてつもない生理的嫌悪感および恐怖を与えられたんじゃないかって事だよね」
「うん」
「彼女が今後、アイドル活動というものを続けていけるかどうか。私はこれ結構キツイんじゃないかなと思うね」
「まあ、そうだね」
自分が有加さんの立場だったらと考えただけで背筋がぞっとして身震いした。
「ただの熱狂的なファンのアピール。でもそう考えた時ね、なかなか難しいんじゃないかなと思ったのよ」
「難しいって何がよ?」
「有加の部屋に入る事がよ」
「まあ、簡単じゃないだろうけどさ。合鍵とかを作ったんじゃないの?」
「そのチャンスがまず難しいと思ったの。この男がどうやって鍵を手に入れる、もしくは合鍵を作成できるのか。少なくとも有加はこの男が部屋に入った事をDVDで見るまで認識していない。つまり、男はちゃんと部屋に入って熱烈ダンシングをかました後、ちゃんと部屋に鍵をかけて出ていってるはずなのよね。開けるだけならまだしも、閉めるのなら少なくとも鍵はないといけないでしょ。この男にそのチャンスはあったのかなって」
「んーそう言われると……でも実際入ってるじゃない」
「そこ。そこそこ。そこなの。なんで入れたのかって話。そこで最初から遡って考えたの。まず一人じゃ無理なんじゃないかって疑問を持ちながらね」
「え、待って一人じゃ無理って……」
そこでようやく流華は小枝の推測に手が触れた気がした。
DVDの男。部屋への侵入。女の子の為。アイドル。競争社会。
「ちょっと見えてきた?」
にやりと笑う小枝。流華は頷いて見せる。
「これってもしかして」
多分、そういう事なのかなと思う。細かい部分の推測には行き着いていない。
あくまでざっくりとした答え。
「有加さん以外、全員グル、とか?」
小枝が親指をたて、人差し指をこちらにむける
「ばっきゅーん」
どうやら、間違いではないらしい。




