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「うーわーまたまた後味の悪い……」

「毎度安定の苦い口当たりでございます」


 げーっと舌を出しながら苦い顔を決める小枝は、まるで渋い抹茶を飲んだ後のような表情を見せる。

 かと思えば、すんとその表情を切り替えポテトをむしゃむしゃ頬張りドリンクをストローでぢゅーとはしたなく音をたててすすって見せて、っぷはとおっさんよろしく息を漏らす。


「まあでも」


 一息ついた小枝の顔は流華が見ても分かるほどにつまらなそうで、流華はなかなかに驚いたと同時に、自分の話のチョイスがまずかったのではないかと不安になった。


「ちょっと私的にはつまんないかな」


 一刀両断でございます。


「そんなにはっきり言われると落ち込む間もないわ」

「いや、るーが悪いわけじゃないからね」

「うん、分かってるけど割り切れないわ」

「だよねー」


 なかなか辛辣なコメントが返ってきてしまったが、まずそもそも小枝がこの話を知らないという所が何より重要な所だ。


 おそらくだがこの話、世間的にも割と有名な話だとは思う。

 一見滑稽で不可思議で意図が見えない話だが、最後の最後で強烈な一撃が待ち構えているこの話は、語り手として改めて話に触れた時、短いながらもよく出来た話だなと感心する。

 緩急のついたこの話は、実際に起きた話であるようにも思えるが、話として完成されすぎている所から創作とも思われる。

どちらにしても、流華はこの話が好きだ。しかしどうやら小枝のお口には合わなかったようだ。


「でも、正直に言う。この話はなんというか、そのまんますぎる。だからつまんない」


 小枝にとってこの話が合わなかった理由。それはこの部活の心臓部に直結する。

 さっきも言ったが、小枝はこの話を知らない。この話だけではない。巷にはびこる誰でも一度は耳にしたことのあるような有名な都市伝説の類を、小枝は一切知らない。

 

 都市伝説オンチ。そのオンチな存在がこの部活を始めるきっかけとなった。

 だからこの部活はどこでも出来る。語り手と、小枝という聞き手がいる限り。そして小枝がこの話をつまらない評価した理由。それは小枝にとってこの話が、表面的なものではなく、違う角度、はたまたより深くに入り込んで見ようとするからだ。

 つまり、小枝にとってこの話は深みもない、角度もない話に見えているという事だ。


「どういう事さ」


 小枝のオンチという感覚が、流華達が考えた事のなかった一面を見せてくれる。

 流華にはまだこの話が、一人のファンがアイドルの部屋に忍び込んで猛烈なアピールをするという熱狂的が故に起きた気持ちの悪い話程度にしか映っていない。


「どういう事も何も、全部そろってるじゃん」


 出た。またこのやり方だ。小枝だけが分かっていて、流華には分からないこの状態。

 でも小枝は鬼ではない。


「じゃあ、ちょっと考えていこうか」


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