更なるクレイジー
ココに案内され、俺はグレ何とか国の村に着いた。深い森を抜けてきた俺は、すでに身なりがボロボロだった。もともと大した身なりの男ではないが、衣服は破れ髪には枝やら葉が絡み付いているような身なりではなかった。さらに先程気が付いたのだが、雷に打たれたのが原因なのか…。髪の毛はよくアニメに出てくる実験に失敗した科学者のようにボンバーときた。森の中でやたら枝やら葉が絡み付いてくるなと思ったが、まさかボンバーだったからとは。まぁ、そんなことは大したことではない。いや、普通の状態ならば大したことなのだろうが、今の俺はもっと大したことと対立していた。
「…。何度も言うが、俺は勇者になるつもりはない!」
「何を言う!お前は勇者にふさわしい男だ!お前以外にありえんっ!」
「俺にはお前の発言!いや、もう何か全てがありえんっっ!そもそも、一番弱い男が勇者にふさわしいって、どんな展開なんだよっ!」
村に着いた俺は、この村の仙人とやらの家に案内された。村長とかじゃなく仙人の時点で気が付けば良かったのだが時すでに遅し。訳の分からない展開となっていた。
「ゴッホン!」
仙人は軽く咳払いをして俺の目を真剣な目で見つめる。
「あぁ…。やっと話が通じたのか。長かった…一時間ぐらいかかったか。」
俺はやっと解放されるのだと、ほっと溜息をついた。
「……。」
仙人はじっと俺を見つめたまま黙っている。勇者になる、ならないの押し問答でスルーしていたが、グレリア国は魔物のボスに占拠されてしまい人が存在するのはもうこの村のみということらしい。この村が魔物に占拠されるのは時間の問題ということだ。仙人はじめ村人達の最後の望みは、俺だったのだろう。そう考えると返す言葉が見当たらず、俺も黙ってしまった。申し訳ないな…。そんなことも頭によぎる。
「あのさ、仙人…。勇者にはなれないけど、何か手伝…っ。」
「お前さん、名は何という?さっきから考えているのじゃが、忘れてしまってな、はっはっは!」
「…は?」
「何じゃったかのぅ。」
仙人は何がそんなに楽しいのか、豪快に笑い出す。
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