65話 現状
「さて・・・どこから話していくか。俺の事についてはとりあえず置いておくぞ。」
「ああ。」
「異変に気付いたのはここ2、3ヶ月だ。今、人族と魔族が戦争をするという話は知っているな。」
「知ってるが、なぜそうなったんだ?」
「・・・人族の国の者が魔族を殺したんだ。元々、お互いの国には手出しはしないという暗黙のルールがあったんだが、それを破った奴がいた。」
「それがきっかけか。」
「ああ。しかもそれが王の命令との事でな・・・どうもそこが引っ掛かるんだ。」
「王の命令か・・・魔族は強いと聞くが、殺した奴は相当な腕前なんだな。」
「そうだ、そいつの名前は"ルニアス・キアル"・・・俺と同じ神使だ。」
「どんな奴なんだ?」
「そいつは魔法も身体能力もずば抜けてる奴でな・・・本気で戦っても多分俺でも勝てないだろう。」
リレイズは苦い顔をしながら笑った。
「魔法も接近戦も得意とする人族か・・・。」
「ああ。だが俺はあいつの事を信用しちゃいねえ。何かが怪しいんだ。」
「どういう事だ?」
「俺の本能があいつを警戒してる。確証はないが、危険な人物だ。」
「本能、か。」
「おかしいのはそれだけじゃ無い、王の様子も変わってるんだ。今までそんな命令も出した事は無かったしいつも民の事を思ってる優しい方だったんだが・・・。」
「裏で何かが動いている、と考えているのか?」
「そうだ。いきなり民から金を要求したり、それを侮辱したりすると監獄に放り出される様になった・・・。下手したら死刑だ。」
「その変わり様はたしかに怪しいな・・・。」
流歌は一つ、心当たりがある。
"黒の種族"が動いているのではないか、と思っているのだ。
「そして、王の部隊も何人か知らない顔の奴らも増えた。影に隠れて、俺はその異変に何かを感じて探り始めたんだ。」
「そして、この家が拠点って事か?」
「ああ。仕入れた情報だと、この森のどこかに洞窟があるらしい。そこを探しているんだ。」
「その情報はどこから?」
「王がいない隙に、部屋に入ったことがある。そしてその部屋で見つけたのが、これだ。」
リレイズは懐から一枚の紙を出した。
地図だ。
「・・・これは?」
「これがどんな物で何を表しているのか、それは俺にも分からない。だが、ここを見ろ。」
指を置いた場所には、黒い×マークが入っていた。
そしてそのマークの横には"黒神"と書いてある。
「"黒神"?」
「・・・多分、この異変には"黒の種族"が絡んでいる、と俺は考えている。」
驚く事に、リレイズと流歌の憶測は一致していた。




