63話 謎の男
朝になり、流歌が目を覚ます。
警戒はしていたが、魔物なども現れる事なく夜を迎えられたようだ。
身支度を終えて今日もリグス大陸に向かって歩き出した。
(さて、夜までにはこの長い森を抜けたいな・・・。)
流歌は森の中に入る事に決めた。
食料などは全て"女神の指輪"にしまってある為困ることはない。
しかし、魔物との戦闘は極力避けていきたいと思っている。
今日もしばらく歩いたが、まだまだ森を抜けられそうには無かった。
しかし最初にこの森を入った時と比べて景色が変わっている。
・・・まるで誰かに整理されたような綺麗な道が出来ていたり、木々も整理されているような感じだった。
そしてまた歩いていくと、小さめの家が見えた。
この頃には辺りも暗くなっている。
(家・・・?しかも灯りがついてるな。)
警戒を強めつつ、その家へと近づいていく。
見たところ誰か住んでいる様だが・・・そんな事を思っていると、その家の扉が開いた。
(あれは・・・人か。)
出てきた人物は獣族でも魔族でも無く・・・人間の男だった。
腰には刀を携えている。
(・・・あいつ、俺の方を見ていないか?)
そんな疑問を一気に吹き飛ばす事が起きた。
(なにっ!?)
一瞬にしてその男は刀を抜き、凄まじい速さで向かってきた。
流歌も反射的にサレから譲り受けた刀・・・"雪守"で対抗する。
「ほぅ・・・、この速さに反応するとはな。」
「いきなり何しやがる!?」
流歌は男の刀を弾き返すと、距離を置いた。
「中々やるようだが、そんな太刀筋じゃ俺を切ることはできないぞ?」
この男の構えに一切の隙は無かった。
(こいつ・・・強い!!)
ジリジリと間合いを男が詰めていく。
「そちらから来ないのであれば、こっちから行かせてもらうぞ・・・"一閃"!」
まだ少し距離が離れている状態からだが、男は抜刀した。
その剣先から何かが放たれているのが見えた。
猛スピードで迫ってくるそれを、流歌は刀で受ける事はせず、身を低くし避ける事にした。
(一体なんなんだこいつは・・・なっ!?)
流歌の背後からドスン、ドスンと音が聞こえ・・・振り返ってみると・・・
そこには立派な木々が綺麗に切られ、地面に落ちていく光景があった。
「今のも避けるとは並の人間じゃないみたいだな・・・一体何者だ?」
「俺はただの旅人だ・・・お前を敵対する理由は無い。」
「旅人・・・、この森を荒らしにきた訳ではないのだな?」
この光景を見るに、荒らしているのはどっちだよ・・・とツッコミを入れたくなった流歌だが、それを我慢した。
「ああ。別にこの森をどうこうするつもりはない。俺はただリグス大陸まで行きたいだけだからな。」
「・・・そうか、すまなかったな。ついここを荒らしに来た奴らかと思ってしまった。詫びがしたい、家まで来てくれ。」
そう言って、その男は先に家に戻っていった。
怪しいとは思ったがその男の目が悪意に満ちていない事から、流歌もその後を追うのであった。




