47話 親バカ
カイルの爆弾発言により周囲の者は混乱と狂気に満ち溢れていた。
物凄い量の殺気が流歌に向けられる。
(おいおい、なんだよこの殺気・・・というか婚約って・・・。)
流歌も同じく混乱していた。
「お前程の強さを持つ者になら我が娘であるアリシアを嫁に出そうではないか。」
「あんた・・・この状況で本気で言っているのか?」
「もちろんだ。アリシアは可愛いぞ。」
そこで広間にある一つの扉が開いた。
そこから出てきた人物・・・凛とした顔立ちに白い獣耳、腰まである白く綺麗な髪。
(あれが・・・こいつの娘か?)
「おぉ・・・アリシア様!!」
「今日もお美しい・・・。」
周りの兵士達からの憧れの視線が送られる。
流歌の思った人物と一致していた。
この女性こそがアリシア・ギルシュ・・・獣王の娘である。
「ちょっと!お父様!」
「ハッハッハ!!良いではないか!お前もあの"ケルベロスに勝利した者"を一目見てみたいと言ったではなかろう!」
「で、ですが・・・この者は獣族では無く人族ですよ!?」
「ギルの命の恩人であり、ケルベロスを倒した男・・・この男にはその資格があるではないか!」
(おいおい、こいつ何勝手に決めてるんだ?)
流歌は呆れたように溜息をついてカイルに申し立てた。
「おい、勝手に俺の嫁を決めるなよ。」
「人族の者・・・いや、ルカと言ったな?」
「そうだ。」
「我が娘は可愛いだろう!ハッハッハ!!」
豪快な笑い声で自分の娘を自慢する父親。
(はぁ・・・こいつは親バカってやつだな・・・。)
流歌はもう一度アリシアの方に視線を向けた。
そして再びカイルに視線を戻した。
「・・・たしかに可愛いとは思う。は、それでも俺は断るぞ。」
その言葉に兵士達の殺気が膨れ上がる。
「おぉ・・・なんという事だ!!」
「これは無礼極まりない!!」
「カイル様!!今すぐこの人族の処刑を!」
さっきまで"我らが姫君を渡さん!!"なんて思ってただろうに、婚約を断ると逆に怒り出した。
そんな中、流歌の口から確かに可愛いと言われた事にこのアリシアは頬を紅く染めて
(か、かかか可愛いなんて・・・し、しかも目を見つめられて・・・。)とくねくねとよく分からない動きをしているのであった。
(よく分からん奴らだな・・・獣族ってのは。)
そんな状況をみて、流歌はそう思った。
「ふむ・・・まぁたしかにいきなりだったからな。だが悪い話では無かろう?」
「・・・お前の狙いは娘と俺を結婚させて、この力を獣族の為に使うようにしてもらいたいんだろ?」」
「っふ、お見通しか。やはりただの人族ではないようだな。」
「ならば俺はすぐにこの大陸から出る事にする。俺には目的もあるんでな。どちらにしろ、ここでゆっくりは出来ない。」
「まぁ待て、婚約は後日に回してもう少し見ていかないか?」
「それは、もう少しここにいても良いって事か?」
「そうだ、この獣王個人としてもお前の力は気になっているのでな。」
「別に俺の力については何も教えないぞ?親バカ。」
「・・・この獣王にそんな口答えをする者がいるとはな!ハッハッハ!気に入ったぞルカよ!!」
そんなやり取りをして、結局流歌はこの獣族の大陸にもう少し世話になることが決まった。




