3話 長耳族
長耳族の女性が笛を鳴らし、少し経った時
森の奥から4つの灯りが見えた。
(あの笛は仲間を呼ぶ為の物か・・・まぁたしかに自分の判断で住む場所に連れて行くというのは無用心ではあるな。)
4つの灯りが徐々に近付いてきた。
同じような格好をした女一人に男が三人・・・全員がエルフ特有の尖った耳をしていた。
(・・・まぁ、ここが住む場所って事は全員がその「長耳族」っていうのは予想はしていたが・・・実際に見てみると凄いな・・・。)
「・・・リン、どうした?」
「あーうん、見回りをしていたら人族の男らしき者がいてね、話を聞いた限りだと記憶喪失みたい。」
「怪しいな・・・。」
どうやら最初に会ったこの女性はリン、という名前らしい。
もしかしたら愛称かもしれないが。
それと、怪しいというのは間違いないだろう。
今の格好はここに合っていない。
ジーンズに黒のTシャツ、その上に黒のジャケット・・・・。
「お前は何者だ?見たところ人族のようだが、記憶喪失と言っているそうだな。」
「ああ、なぜ俺がこの場所にいるのか分からない。」
「・・・ふむ。とりあえずお前には我らが住む場所へと来てもらう。」
「・・・わかった。」
(多分、尋問とかそう言うのだろうな・・・というかそれしか思い浮かばない。)
俺を入れて合計六人で森の中を歩いていく。
男のエルフ、女のエルフが一人ずつ前を歩き、その後ろに俺、さらにその後ろにはリンと呼ばれていた奴と男が二人。
多分逃げさせない為にこの陣形なんだろうな・・・。
別に逃げた所でどうしようも無いのに・・・まぁ当たり前か・・・。
「着いたぞ。」
目の前の光景に俺は言葉を失った。
広場があり、そこには何人ものエルフが歩いていた。
そして広場の中央には噴水があり、とても綺麗だ。
「まずお前には長老の場所に行ってもらおう、そこで色々と聞きたいことがあるしな。」
「それには俺も同感だ、こっちも色々と聞きたい事がある。」
広場から少し歩くと、周りの物より大きめの建物があった。
「ここに長耳族の長老がいる、しばし待たれよ。」
そう言って一人の男はその建物の中に入っていった。
「・・・まずは自己紹介をしておくわ、あなたが何者かよく分からない状況であれだけど・・・私の名前はリン・レイシスよ。」
「俺の名前は・・・すまない、思い出せないんだ。」
「・・・そう、それは残念だわ。」
俺は今記憶喪失という事にしている。
ここで名前を言ってしまったらそれがバレてしまう可能性が出てくる、その為このリンという女性には嘘をつく。
・・・若干、罪悪感はあるが。
「待たせたな、入れ。」
そうこうしているうちに、長老に事情を説明しに行っていた男は戻ってきた。
ふーっと息を吐き、少しばかり緊張している心を落ち着かせる。
そして、扉を開けた。