2話 森の中での出会い
「・・・寝れないな・・・。」
なかなか眠りに付けない。
ここがどこか分からない状態で、スヤスヤと眠れる程の能天気な男では無い。
「まったく、本当にここはどこなんだよ・・・。」
この言葉だけが頭の中を過ぎっていく。
ガサッ
「!?」
森の中から、音がした。
音がした方向をみると灯りを持った何者かが見えた。
(・・・人か・・・?)
木の影に隠れようとしたとき、落ちていた枝を踏んでしまいパキッと音がしてしまった。
(おいおい、ありがちなミスじゃねーか!)
そんな自分自身に心の中でツッコミを入れる。
「・・・誰か、いるの?」
その何者かが発した言葉はなぜか理解できた。
聞いた事の無い言語だったのに・・・頭の中に言葉の意味が勝手に入ってくるのだ。
(言葉は理解できた・・・聞いた事のない言語だったんだけどな。)
さて、どうするか・・・。
だけど歩いてきた理由として、誰かに会うため。
(・・よし、とりあえず試してみるか。)
そう思い、流歌は声を出すことにした。
「・・・ああ。」
「あなたは、誰?」
「最初に、俺が言っている言葉は理解できるか?」
「ええ、理解できるわ。」
(日本語で伝えたが、俺と同じで向こうも言葉が理解できる様子だな・・・これは不幸中の幸いだ。)
「もう一度聞く、あなたは誰?」
声からして女性のようだ。
透き通る様な綺麗な声。
そして・・・その者は徐々に近づいてきた。
「何て言ったらいいか分からないが、目が覚めたらここにいたんだ。ここがどこか知りたい、教えてくれない・・・・か?」
俺は自分の目を疑った。
アニメや漫画で見るような女性だった。
白い肌、長く尖った耳・・・エルフだ。
「ここは長耳族の大陸【アルデイン大陸】、あなたはどこの大陸なの?見たところ人族の者のようだけど。」
「アルデイン大陸・・・?聞いた事が無いな。」
望月流歌は学力はある。
基本的に頭が良く、中学・高校と毎回学年順位のTOP3には入っているくらいだ。
大学には通っているものの特に目指すべきものも無く時間を過ごしている。
もちろん単位等問題無い様子だが。
「・・・記憶喪失・・・?」
(俺が思っている事を言ったらどうなるか分からないな・・・異世界から来た、とか・・・多分相当怪しい奴に見られるだろうな。)
そう思い、一つ嘘をつく。
「ああ、そうだ。なぜ俺がこんな場所にいるのか、全く分からない。」
「・・・長耳族の大陸で人族の男がいるのは少し引っかかるわ。あなたがどういった者なのかも分からないし・・・それに、記憶を失うなんて事は本当に稀よ。」
(これは、まずかったか・・・?)
「まぁいいわ。とりあえずあなたには私達の住む場所まで来てもらうわ。」
そう言って彼女は懐から笛を取り出し鳴らした。
ピイィィィィィィィ
この暗い森の中にその音が響いた。