1話 冒険の始まり
ドラゴンは、流歌の頭上を通り過ぎていった。
「・・・・。」
驚きのあまり、つい無言になってしまう。
異世界なんて夢物語だと思っていたからだ。
そして巨大なドラゴンに圧倒されたというのもあるが。
「・・・いや、でもまだそんな確証なんて無い・・。これはリアルな夢かもしれないし・・。」
そう、きっとこれは夢である。
頭の中ではこんな事が起こるはずが無いんだ、と思っている。
よくアニメや漫画や小説でみるような異世界に召喚されたり、ゲームの中に入ったりあるが・・・そんな非現実的な事が起こるはずがない。
「しかし・・・さっきのドラゴンといい、この場所といい・・リアル感がありすぎるんだよな・・。」
もしかして、ここは本当に異世界なのか?
いやいやでも・・・。
そんな考えばかりが頭に浮かんでくる。
そして、流歌がたどり着いた答えは・・・
「とりあえず誰かに事情を話してここは一体どこなのか聞いてみるべき、か。」
そう思い、この見渡す限りの草原を抜けてどこか街や人のいる場所に行こうと決心する事にした。
歩きながら、ここはどこなのか。
なぜ俺はこんな場所にいるのか。
その事ばかりを考えていた。
しかし全く見当が付かない。
・・・どれだけの時間歩いていたのか自分にはよく分からない。
だけど、段々と太陽の色がオレンジ色に変わっていくところをみると
結構な時間こうやって歩いている。
この広大な草原だ。
一体どれくらいの距離を進んでいるのか見当がつかないが、歩く速度を考えるとあまり進んでないように見える。
「暗くなる前に人がいる場所に行きたいが、全然それらしきものは見当たらないな・・・。」
先程みたドラゴンといい、もしここが異世界だとしたら襲ってくるようなやつらがいるかもしれない。
野宿だけは避けて通りたい。
しかし、残酷にも時間は進み辺りは暗くなっていく。
流歌自身、疲労が溜まりもうまともに今日は歩く事は出来なさそうだ。
「・・・ハァ・・・仕方ない・・・今日はここで寝よう。」
そう思った場所は、木々で生い茂る大きな森の入口。
なにがいるか分からない森の中を、辺りが暗い状態で歩くのは危険だと判断した結果、入口で寝る事にした。