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【完結済】異世界薬局(EP4)/【連載中】世界薬局(EP4.1)  作者: 高山 理図
Chapitre final 愚者の実験 Expérience d'ignorance(1152年)
137/151

9章4話 定時株主総会にて

途中の図は2回クリックすると高解像度版になります。

 1152年7月1日。 

 この日のファルマは正装し、少し緊張した面持ちで帝都のオペラハウス、オペラ・ガレニーの舞台袖にいた。

 オペラハウスを借り切り、異世界薬局グループ定時株主総会を主催するためだ。

 異世界薬局とその関連店舗は三年前、様々な方面から要請を受け、グループ会社としてサン・フルーヴ市場へ上場した。

 総会会場はすでに満員で、招集通知を受けとり全世界から集まった投資家たちが熱い視線を送っている。MEDIQUEの石鹸セットのお土産もありだ。


「株主の皆様、本日は会場にお越しいただき、誠にありがとうございます。最高経営責任者 (DG) ファルマ・ド・メディシスと申します。これより、異世界薬局グループ、第4期定時株主総会を開催します。本日は取締役、監査役、執行役員全員が出席しております。事業報告ののち、質問を頂戴いたします」


 ファルマはオペラハウスの舞台の中央でスポットライトを浴びながら挨拶に立ち、前もって配布した、招集通知と呼ばれるレジュメを示しながら話す。


「本日の総会における議決権の状況をご説明します。株主の皆様が行使可能な議決権の数は……」


 異世界薬局グループは急速な成長を遂げ、その一挙一投足に注目が集まっていた。

 レジュメには企業概要や店舗の展開状況、決算などの情報が掲載されている。


会社概要

Le groupe DIVERSIS MUNDI PHARMACY(異世界薬局グループ)

代表者/創立者: ファルマ・ド・メディシス(Falma De Médicis)

資本金: 4.5 Milliard Frune (4.5億フルン)

営業利益: 6.3 Milliard Frune (6.3億フルン)

総資産: 420 Milliard Frune (420億フルン)

単体従業員数: 214 employés (214名)

連結従業員数: 1538 employés (1538名)

発行済み株式: 3400万株

株主: 12536名

主要株主: Falma De Médicis(35 %)

      Elisabeth I (33 %)


 8名の監査役から、監査結果に間違いがなく適正であり、指摘事項がないことを通知される。

 連結計算書類の監査を受けたファルマは報告事項を告げる。


「事業の進捗と成果についてご報告します。異世界薬局グループは1145年にエリザベート二世皇帝陛下御勅許のもと、公私合同企業として創立しました。創立以来、地域の保健医療を担う公共性の高い事業として店舗展開を進め、現在、世界各国の地域の皆様のご要望の声に支えられ、当期までの事業規模は国内直轄7店舗、ヘルスケア部門4店舗、国内業務支援819店舗、国外パートナーシップを結んでいるのは136店舗にのぼります」


 上場以来、株価は常に高騰し続け、世界最大規模の製薬会社となった。

 医薬品部門においては他社の追随を許さず、世界市場の寡占状態となったため、他国では独占禁止法に類する法律で排除措置命令を下されたこともある。

 競合他社がなく、患者や顧客にほかの製薬会社から薬を買う選択肢がないことは、ファルマにとっても歓迎できる状況ではなかった。

 帝国医薬大の教え子たちが独立して競合他社にでもなってくれないかな、などと考えていたりもするが、薬師たちはこぞって異世界薬局関連会社に就職したがっているため、他社が育つのは暫く時間がかかりそうだ。


「現在は、中期成長戦略1150~1155に基づき、継続的事業拡大と、企業価値の向上、個別事業課題の克服を当面の重点課題と位置づけ取り組んでいます。医薬品事業は、各工場の稼働にともなう輸送費の縮小によって大幅に原価を押し下げ、薬価に反映することができました」


 これほどの事業急拡大をみせたのは、異世界薬局の薬や、専属薬師らが提供する医療が、人々の健康を守り、かつてこの世界で不治であった病、例えば黒死病や結核、天然痘から、確実に人々を解放しているからだ。

 世界中の人々が、まぐれ当たりではなく再現性のとれた薬の効果を実感し、質の高い医療の提供と医薬品の供給が続くことに期待を寄せているからだ。

 そのためなら、王侯貴族はよろこんで財を投じ、庶民は評判を広めた。

 異世界薬局か関連店舗に薬を求めに行けば、治癒を期待できるようになった。

 世界中どの薬局薬店も異世界薬局の薬を店に置きたがり、なければ患者は店主に詰め寄り、入れてくれと懇願する。

 もはや異世界薬局の薬がなければ、どの国も立ち行かないところまできていた。

 異世界薬局は国内外の医療インフラの中枢を担っているため、利益のほとんどを設備再投資と研究開発、人材育成に回している。帝国の薬剤生産拠点として、マーセイル工場に加え、私費を投入してオクタシニー工場を建設し稼働させている。

 その他、企業、個人を問わず献金としてファルマのもとに集まる莫大な資金は、ほとんど手元に残しておかない。

 投資家や投機家にではなく患者に目を向け、患者に還元している。

 それがまた、更なる評判を呼んでいた。

 それでも純利益は前期比26倍増、過去最高を記録している。

 ファルマの言葉に、陶酔に浸っているかのような表情で、人々が耳を傾けている。


「グループが大きくなっても、私たちの姿勢は変わるべきではありません。常に患者様のニーズとご満足を中心に置き、安全で質の高い医療と医薬品、一般用医薬品をお届けするべく、お客様本位の視点での品質の向上を目指してまいります。そしてもちろん、グループの持続的運営のためには、グループ構成員のBien-être(Wellbeing)の実現にも取り組んでまいります」


挿絵(By みてみん)


 その後は事業別の概況を説明する。

 異世界薬局総本店の職員にも入れ替わりがあった。

 現在の職員は、9名。

 宮廷薬師(管理薬師) ファルマ・ド・メディシス(Falma De Médicis)

 一級薬師(主任薬師) エレオノール・ボヌフォワ(Eleonora Bonnefoy)

 一級薬師 アメリ(Amélie)

 一級薬師 ラルフ・シェルテル(Ralf Schärtel)

 一般従事者 法務・事務 セドリック・リュノー(Cédric Luneau)

 一般従事者 庶務 ルネ(Renée)

 一般従事者 庶務(非常勤) シャルロット・ソレル(Charlotte Soller)

 連絡人 トム(Tom)


 新たな薬師に加わったのは平民一級薬師アメリと、プロセン王国出身の一級薬師ラルフ・シェルテルだ。

 彼、彼女らは帝国医薬大総合医薬学部卒のファルマの教え子であり、正規の教育を受け、サン・フルーヴ帝国の一級薬師の資格を持っている。

 異世界薬局での就職を希望し、135倍にも上った採用試験の狭き門を突破して雇用された優秀な薬師たちだ。

 22歳のアメリは完全記憶能力を持っており、卒業試験も筆記や実技では満点で優秀、人当たりもよく理想的な薬師だ。

 金髪紫眼でスレンダー体形の美人なためか、常連客にも人気がある。

 誰もが憧れる完璧人間と思いきや、一週間に一度はランダムで寝坊、遅刻する癖があり、時間に厳しい帝都内の薬局薬店の面接を受けられず、あるいは試用期間中に軒並み落ちたという逸話を持つ。

 このため、本人の自己肯定感はすこぶる低い。

 ファルマは「フレックスタイム制で雇うから、起きてから来てくれたら」と言って構わず採用した。

 異世界薬局以外の就職は難しそうだったが、午後のシフトに回すことで今のところはつらつと就労している。エレンも彼女の遅刻癖についてはあまり気にしていない。


 23歳のラルフはおっとりとした眼鏡の好青年で、紫髪紫眼で高身長のためか女性ファンも多い。

 彼は成人してから患ったギラン・バレー症候群の後遺症で重いものが持てない。

 ギラン・バレー症候群とは炎症性多発神経障害で、発症後8週間までに神経障害が起き、筋力低下、重症者では重度の呼吸麻痺、生命を脅かすほどの自律神経機能不全が生じる。

 8割は治療もせず自然治癒で回復するが、2割程度は後遺症から回復しない場合がある。

 彼はその2割のほうで、弛緩性筋力低下がまだ残っている。

 ファルマも治療を試みたがまだ回復には至っていない。

 日常業務でそんなに重いものをもつことはないから、ということで採用した。

 ファルマは、優秀でさえあれば、就労に困難を抱えた薬師を優先して採用することにしている。

 庶務のルネは、16歳。異世界薬局の近所で飴やウェハースを納入している菓子店の経理をしていたが、店主が高齢で店をたたむため路頭に迷いそうと言っていたので採用した。

 ルネが常勤になったので、宮廷画家として多忙を極めていたロッテが、画業に本腰を入れるために異世界薬局では非常勤になった。

 セドリックはアガタから人工関節の手術を受け、ついに変形性膝関節症から解放された。

 最近はリアルテニスとも呼ばれるジュ・ド・ポームにはまっていて、週末になるといそいそとコートに出かけてゆく。

 遠征を通じてポーム仲間もできたらしく、夜遅くまでお茶をして帰ってくるのがいつものコースだ。仕事もますます充実しており、異世界薬局グループの経理責任者として薬局の収支を統括している。相変わらずの堅実な仕事ぶりに、ファルマも頼もしく思っている。


 ロジェ、セルスト、レベッカはそれぞれ異世界薬局直営店の店主としてのれん分けのような形で新店舗を持って繁盛させている。

 直営店はファルマから直接教育を受け、認定試験に合格した一級薬師の営む店で、屋号は本店と同じ「異世界薬局」が用いられる。


 異世界薬局13区マーレ支店店主 ロジェ・デ・バッケル(Roger de Bakker) 従業員3名。

 異世界薬局14区モンスーリ支店店主 セルスト・バイヤール(Céleste Baillard) 従業員4名。

 異世界薬局18区レオン支店店主 レベッカ・デュトワ(Rébecca du Toit) 従業員3名。


 異世界薬局のグループ企業としては、4つのブランドを持っている。

 各ブランドの店主たちも株主総会ではかしこまった様子で前列の席に参集し、経営状況を説明するファルマの話を食い入るように聞いていた。


 化粧品ブランド:メディーク(MEDIQUE) 

 店主はキトリー・アルシェ(Quitterie Arche)、貴族出身の一級薬師。

 出産を機に前雇用主から契約を切られた既婚薬師らを束ね、肌に優しい薬用化粧品の開発を行っている。メディークは帝都の化粧品の35%のシェアを誇っている。


 オーラルケアブランド:8020(Quatre-vinghts vingt)

 店主 テランス(Térence)はファルマと出会う前から帝都で歯科専門の平民医師として開業していた青年で、抜歯や口腔外科手術を得意としていた。

 ファルマと出会ってからはすぐに抜歯する方針を改め、詰め物での虫歯治療や、歯科予防を中心に行うようになった。


 スポーツ・介護用品ブランド:ヴェティメンツ(Vêtements)。

 店主はノエミ(Noémi)、もとはサン・フルーヴ・クチュール組合に在籍し、オートクチュールを手掛けていた人気のデザイナーだ。前衛的でかつ機能的なデザインを次々と生み出し、スポーツ用品に革命を起こしている。


 下着ブランド:リヴィエレ・ドゥ・マタン(Rivière du matin)

 下着ブランドは、現在帝国内に14店舗を展開し、男性部門と女性部門に店舗ごと分かれている。

女性下着部門責任者デボラ(Déborah)は平民デザイナーで、高級下着から庶民の普段使いの下着まで、幅広く取り揃えている。

 これまでにこの世界には存在しなかった生理用下着に加え、生理用ナプキンなどの生理用品を扱っている。


 男性下着部門責任者 エタン(Ethan)はデボラの弟の服職人で、ファルマの意見をもとにそれまでシャツと一体化していた男性下着を独立させ、より付け心地のよいものへと改良した。

 綿のインナーとボクサーパンツのような形状のものは売れに売れて、生産が追い付かないほどだ。鎧の下に着用できるアンダーウェアでヒットを飛ばしている。


 異世界薬局本店と業務提携をしているのは、帝国医師ギルド、帝国調剤薬局ギルド、帝国薬師ギルドだ。

 帝国医師ギルドのギルド長はアガタ・メランション(Agathe Mélenchon)。

 84歳の外科医アガタは80歳で白内障を克服してからというもの、消化器、腫瘍外科を中心に年間平均50例の外科手術を行っており、その成功率の高さから、アガタのバラ屋敷には長蛇の列ができ、手術も半年待ちだ。

 名実ともに帝都一の町医者として繁盛し、年齢による衰えを感じさせない。

 彼女の周りには以前のように弟子たちが集まり、卓越した手技の継承を受けている。


 帝国調剤薬局ギルドのギルド長は夜明け薬局のピエール(Pierre)。

 ピエールは順調に調剤薬局ギルド長としてのキャリアを積んでおり、帝都のドラッグストアの支援や医薬品流通の管理を行っている。

 他国の薬師ギルドからも意見を求められたり、顧問のような役割を果たしている。

 異世界薬局には週に二回ほど、ファルマの出勤日に現れ、ファルマと話し込んでは安心したように帰ってゆく。人生の恩人と言ってはばからないファルマに対しては恩義を感じているらしく、その忠誠心はギルドのどの薬師より高い。


 帝国薬師ギルドのギルド長はジュリエット(Juliette)。

 彼女は異世界薬局グループのパートナーの中でも異色の経歴を持つ。

 前ギルド長ベロンの一番弟子で、トゥルーズに店舗を持っていた。

 ギルドの幹部らが黒死病に感染して亡くなったとき、帝都にいなかったために死を免れ、ギルド再建のために帝都に戻ってきた。

 ジュリエットが帝都に戻ってみると、薬師ギルドから異世界薬局への人材流出が相次ぎ、残った店も皇帝の勅令や神殿からの取り締まりで扱える生薬や伝統薬が激減していた。

 売上は散々で、困窮から錬金術師へ転身した者も少なくなく、一時ギルドは存亡の危機に立たされていた。伝統あるギルドをつぶすぐらいならと、ジュリエットは異世界薬局の傘下に下る決断をした。ところが、店主ファルマは生薬や伝統薬の存続を望んでおり、有害な原料を廃止し、レシピを整理して効果のあるポーションなどの開発に協力した。

 今では、昔ながらの伝統薬を愛用する人々の愛顧に支えられ、市民に必要とされる伝統薬店ギルドに生まれ変わっている。

 薬師ギルドの紋章の一部には、異世界薬局と提携した証である紋章モチーフが存在する。

 異世界薬局の提携店であることを確認して、安心して店に入ってくる客も少なくない。

 ジュリエットは今、新作ハーブティーの開発に力を入れている。


 各事業の説明を終えた後、大喝采の中、彼らの興奮のただなかに、ファルマは重大決議を総会にはかった。


「続きまして、決議事項をご報告します。私、ファルマ・ド・メディシスは本日をもちまして最高経営責任者を退き、後任として現CCO、エレオノール・ボヌフォワが最高経営責任者に就く人事案を報告し、決議を行いたいと思います」


 ファルマの発表に拍手喝采を送っていた株主たちは突然、奈落の底にたたき落された。

 何故だ、やめるな、困る、ふざけるな、殺す気か、などと怒号が飛び交う。

 ファルマは押しも押されもせぬ、医薬業界のカリスマ経営者でもある。

 ファルマがDGを退けば、ファルマとエリザベスが市場に出回る発行株式全体の6割を売らなかったとしても、株価は暴落、経営破綻、異世界薬局グループの株券は紙くずと化す可能性もある。

 株主たちが承認するわけがない。


「私も引き続きCOOとして取締役にとどまり、新DGのバックアップをいたしますので」


 人事案は反対多数ではあったが、ファルマが株式を35%取得し、賛成に回った聖帝エリザベスの代理人が33%を保有していたため、難なく可決された。聖帝にはあらかじめ根回しをしていたのだ。

 怒号に交じって、悲痛な声で質問が飛ぶ。


「なぜ、いま、おやめになるのですか!」

「私にとって大切な、ほかのことに集中したいからです。それは一時的なものなので、今後また状況が許せば復帰するかもしれません」


 ファルマはそうとしか言えない。


「そんな無責任な!」

「かもしれないでは困ります。それは、異世界薬局の運営、ひいては世界の保健医療よりも大切なことなんですか」

「はい」


 ファルマは大批判も覚悟で頷く。

 それでも会衆は納得せず、株主総会は大混乱の解散となった。

 退任の話はグループ幹部にはすでに伝えていたことで、幹部は全員が納得している。

 カーテンが下がったあと、ピエールが舞台袖に下がってきたファルマに声をかける。

 重苦しい雰囲気が漂っていた。


「案の定の大反対でしたが、私は支持しています。カリスマ経営者はすぐれた後継者を育てられない場合が多いのです。組織の安定化を図るなら、むしろ絶頂期のうちに後進を育てておくことは間違っていないと思います。私もギルド長に居座るのではなく、そのようにしようと思いました」

 

 ピエールの目には涙が浮かんでいる。


「大丈夫かしら……」


 新DGに就任したエレンはあまりの騒動を目の当たりにして青ざめている。

 エレンは身の危険すら感じるであろう、株主たちの混乱ぶりだった。

 ファルマは鳥肌がやまないエレンを落ち着かせるように声をかける。


「数日もたてば落ち着くよ。俺の予想なら、明後日には」

「あなたは責任感が強いから敢えて報告したのだろうけど、今日集まった人たちにはこの世の終わりのように聞こえたでしょうね」

「そうだろうね」

「復帰してくれることを信じているからね」

「そうだね。胸を張って戻ってくるよ」


 ファルマはエレンの目を見て決意を伝えた。

 エレンも深く頷いてその言葉にこたえる。


「では、それまでは任せて。みんなでしっかり守っておくから」


 ファルマは交代の理由をエレン達にはっきり伝えたわけではない。

 それでも、エレンは理由を聞かなかった。


 最大限に楽観したとしても、身支度だけは整えておかなけばならなかった。

 どんな順番であれ、最後は全員いなくなる。

 終わりに備えておくことは、決して悲しいことではない。

 もしファルマが急にいなくなったら、せっかく築き上げたものが瓦解してしまいかねない。

 だからこそ手続きは必要だ。


「今日、ファルマ様は頑張ったので、皆さんで打ち上げ行きませんか?」

 

 ロッテが少し空気を読まない風の、その実空気を読みまくった提案をした。


「いいね。甘いものが食べたいな」

「賛成です! お忍びがバレないように覆面していきましょ」

「怪しすぎるでしょ」


 翌日、異世界薬局グループの株価は創業者退任の速報を受け一時30%近く暴落し、関連株も軒並み下落し、サン・フルーヴ市場の恐怖指数は跳ね上がり、全面安となってサーキットブレイカーが発動する事態となり、暗黒の一日として帝都新聞の一面を飾った。

挿絵(By みてみん)

 ファルマのもとには殺害予告も届いたが、ファルマは気にしなかった。

 翌日までにはファルマの目論見通り、エレンが最高経営責任者に就任する人事案が大きく報道され、押し目買いをされて株価は元の価格に戻り、高値で引けた。

DG…directeur general, 最高経営責任者。CEOと同意。


【謝辞】

北極28号様、株価の値動きにつきましての間違いを御指摘、修正案いただきありがとうございました。


【追記】2021/12/13

・Elisabeth IはIIではと複数の方から誤字指摘をいただいていますが、サン・フルーヴ帝国皇帝時代はエリザベート二世で現在は神聖国大神官も兼ねた聖帝エリザベス一世ですのでこれであっています。スペルは同じです。

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