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【完結済】異世界薬局(EP4)/【連載中】世界薬局(EP4.1)  作者: 高山 理図
Chapitre 1 異世界薬局創業記 Depuis 1145 (1145年)
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序話 異世界転生 ~頑張りすぎはほどほどに~

【読者様へ】

・タイトルのための有償購入した写真素材と、作中説明のための模式図などが挿入されています。

・書籍版はかなり加筆されているので、書籍版と比較するとウェブ版は淡白な印象を受けるかと思います(序盤も違います)。悪しからずご了承ください。


【専門家の方へ】

筆者は医学系研究職で医学博士(Ph.D.)ですが、医師ではなく臨床医学・薬学には精通していませんので、薬学描写で違和感、差し支えがあれば教えてください。

医師、薬剤師、技師その他専門家の方は、査読、考証していただいた場合、ウェブ版、書籍版の謝辞にお名前を掲載させていただきます。DMにてご連絡ください。


※本作は、下図のシリーズのEP4です。

挿絵(By みてみん)

 果てなき深宇宙の次元の狭間。

 そこに、かつて生命であった存在が辿り着く、生者の知らない場所がある。

 無限の広がりを持つ墓地は名前のない墓守に守られ、死者たちが時間のない眠りについている。

 ある日、墓守はまどろむ死者の中から、ひとつの墓を選び出した。


 墓守は記憶の核を墓標から引き抜き、宙へと投げ放つ。

 それは遥かな宇宙を駆け、さる惑星世界の落雷事故によって死亡した少年に突き刺さった。


 少年の心臓は再び拍動をはじめた。

 墓守は死者が大切にしていた遺品も、すぐ傍らに贈った。


 受肉した死者の核は、まだ死を受容できない少年の肉体に根をおろし、意識の接続が始まった。

 強く湿った風が、土埃を含んで彼の肌の上を吹き抜けてゆく。

 遠雷がおどろおどろしく鳴り響いていた。


(俺は……どうなったんだ?)


 …━━…━━…━━…



 彼は西暦20XX年の日本を生きる、若き薬学者であった。

 彼は実の妹を幼い頃に脳腫瘍で亡くしてからというもの、薬学の道を志し、やがて優秀な研究者となった彼は、日夜大学の研究室に泊まり込み研究に明け暮れた。

 冴えた頭脳と熱心な性格、精力的な研究が結実し、次々に難病の新薬を世に打ち出した。

 その成果が世界中に知れ渡り、世界中の人々は彼の活躍に期待を寄せた。


 若くして名を成した彼は、生き急ぐ。

 時間が足りない、誰も病気で苦しむことのない、病気によって人々が死に別れることのない世界を造りたい。

 もっと、もっと、もっと人を癒したいと。

 猪突猛進型の若き薬学者は、理想に燃えた。


 一日一秒でも早く、新しい薬を届け、彼の造った薬で地球上からありとあらゆる疫病や疾患をなくしたい。

 それは、彼にとっての人生を賭けた闘争だった。


 しかし志半ばにして、彼の闘争はあっけなく終焉を迎える。

 不眠不休で研究に没頭しすぎたため、肉体が限界を迎えたのだ。

 死因は急性心筋梗塞、典型的な過労死だった。


 そして彼は、死の記憶も曖昧なまま今に至る。


 彼の今生の生は、嵐の過ぎ去った喧騒の中で、無様に倒れ臥したこの時から始まろうとしていた。

 ――ファルマ・ド・メディシス(Falma de Médicis)、宮廷薬師見習いの少年として。


 これは、前世に日本で過労死した仕事人間のもと薬学者が、生き急がず、頑張りすぎずほどほどに、

 第二の人生を異世界の薬師として生きる物語である。


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