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Sweetness?  作者: 春隣 豆吉
短編など
8/12

昨日の天敵、明日の恋人?後編

 同期の吉野のことを周囲の人たちは“仕事はできるし優しいし、まあまあのイケメン”という。

 仕事・・・確かにできる。そこは認めてやる。まあまあのイケメン・・・それは人の好みだからとやかく言わない。

 さっぱりした性格で姑息な嫌がらせをしない男だけど、優しい人という周囲の評価は、私に対して小馬鹿にする感じの物言いをするので大いに疑問だ。

 その吉野がなぜ私の趣味を知っているのかと言うと、話は簡単だ。とある日の飲み会でスマホの生徒会長様の待ち受けを見られたのだ。それに気づいた私は吉野が何か言う前に開き直ってキャラへの愛を語ったしだい・・・ああ、酔っ払った私のバカ。でも吉野は馬鹿にもせず、周囲に暴露することもなかった。


 世の中、偶然にも程があるというものだ。だけど、この偶然は場を和やかにするものだったらしく、さっきまでちょっと緊張気味だった場がぐっと気楽になったのは間違いない。

 吉野はさっきの私のように細野さんから真理乃を紹介されて、周囲の人たちが評する“優しい”態度で挨拶をしていた。

 それにしても、私の隠れた趣味を内緒にしてくれた理由がなんとなく分かった。そりゃ私の趣味を馬鹿にしたら友人のことを悪くいうようなものだものね~。そうかそうか意外に友達思いだな、吉野。

 その優しさを少しはこっちにふりまいたらどうだ。いや、ふりまかれても困るな。今までの態度と違う、ということで噂になるほうが迷惑だ。

 挨拶を終えて、当然のように私の隣に吉野が座ったのを見て、真理乃と細野さんはうなずきあうと、細野さんが私たちへの「頼み事」を口にした。

「人前式の立会人、ですか?」

「互いに一番の友人に頼もうって決めたんだ。お願いできるかな」

 真理乃は親友だし協力できることは手助けしようと思っていたけど、その声で“お願いできるかな”と言われたら断るなんて選択肢が私にあるわけないじゃないですか。

 ああ、顔がゆるみそう・・・と、ここで隣からさりげなく肘をぶつけられた。はっ!!いけないっ!!細野さんの仕事を知らない設定じゃないの。吉野、ナイス!!

「はい、喜んで引き受けます。真理乃、本当におめでとう」

「香恵、ありがとう」

 そう言って微笑んだ真理乃はもう幸せ満載って感じで、なんだか前より美人さんになった気がする。きっと隣の細野さんといい恋愛してんだろーなー。

 吉野のほうも細野さんに了解の返事をし、その後は細野さんがそろそろ仕事の時間だからということでお開きになった。

 真理乃は細野さんが送っていくとことなので(彼のシチュCDで溺愛彼氏とドライブデートというのがあるけど、あんな感じなんだろうか)、ホテルのティールームには私と吉野が残った。


「吉野、さっき肘でつついてくれてありがとう。細野さんの仕事を知らなかったふりをしてたから助かったよ」

「は?なんでそんなふりを」

「細野さんの名前聞いてすぐにピンとこなくてさ・・・ついつい知らないふりを」

「お前なあ・・・もしかして彼女は後藤の乙女ゲーム好きを知らないのか?」

「知るわけないじゃん。真理乃には知られたくないわ~。特に今後はぜったいにっ」

「・・・せいぜいばれないように頑張れよ。でも後藤はいいのか?」

「なにが?」

 私がそう言うと、なぜか吉野はぽりぽりと顔をかいた。

「後藤は彼女が翔一と結婚していいのか?その・・・すごく翔一のこと語ってただろ」

「細野さんと真理乃はお似合いだよ。それにねー、あのとき語っていたのは彼が声を担当していたキャラだよ」

「え。そうなのか?俺様なのに繊細で一途なところがいいって言ってたから、俺の知ってる翔一とは違うけど後藤にはそう見えてるのかと思ってた」

 うわあ自分でもあんまり覚えていない酔っ払い発言を詳しく再現されるって、とんでもなく恥ずかしいのですが!!でもよく覚えてるなあ、吉野。

「・・・吉野、よく覚えてるんだね」

「まあな。親友がライバルなのかってちょっと落ち込んだから。近くにいる俺は遠くの声に負けるのかって」

「親友がライバル?!え、ちょっと吉野。それって・・・これまで人のことさんざん小馬鹿にしてきたくせに」

「俺はお前を小馬鹿になんかしてない!そ、その・・・あれだ、か、かわいいとは・・・思ってるけど」

 隣に座っている吉野がそっぽを向く。でも耳まで真っ赤だ。なんかゲームに出てくるツンデレ幼なじみのようだ。

「吉野、そういうセリフはちゃんとこっちを見て言ってよ」

 私は吉野の腕にそっとふれた。

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