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Sweetness?  作者: 春隣 豆吉
竹野内 碧様主催「恋愛糖分過多企画」参加作品
2/12

居眠り伯爵にご用心:後編

 嘘でしょう?!・・・私は後ろを意識しないように歩調を速めた。今日はクラリスさんや職場の皆と食事をしてみんなと一緒に店を出たんだけど、途中から一人になった。そこで私は後ろの足音に気づいたのだ。

 私が止まると足音が止まる。小走りをすると早歩きをしている足音がする。

 もう少し行けば、親友のダニエルの家だ。私の部屋はそこから程近いけど事情を話せば、あの家の誰かが送ってくれるのは間違いないし・・・よし、ダニエルの家まで走ろう!思い切って後ろを見れば、暗いけど人の気配はなさそう・・・だけど、私が駆け出そうとしたそのとき目の前に黒い影が現れて立ちふさがった。

「きゃああああ!!」

「動くな。おとなしくしろ」

 そう言うと男は私の首を絞めた。く、苦しい・・・・私がうめき声をあげると男は楽しそうに笑い「これで5人目・・・」とつぶやくと、ますます締め上げてくる。

 涙がにじんでくる・・・私、このまま死んじゃうのかな・・・せっかく自活の道を見つけて仕事も楽しいのに・・・自分が死んじゃうって分かってたら、もう少し伯爵様に優しく応対しておけばよかったかな・・・ああ、なんか目の前が暗い・・・・息もできないし・・・

 だけど、男はなぜか、そのまま震え始めた。首もとの手がゆるんだので目をなんとか開けると誰かが男の首筋に剣の切先らしきものをあてていた。その声は、普段は壁際で聞いている声とよく似てる。まさか?


「首を飛ばされたくなかったら、その汚い手を彼女から離せ。」

「・・・ひっ」

 私の喉を絞めていた手の感触が急になくなり、ピーという笛の音ともに、さらに大勢の人が集まってくる音が聞こえる。怒号が飛び交っているなか、咳き込む私の背中を優しくさすってくれる手と「イーディ」と呼ぶ甘い声。

「げほっ・・・・は、はくしゃくさま、ど、どうしてここに・・・げほっ」

「私は警護部の長なんだよ。知らなかった?」

「ぜ、ぜんぜん」

 てっきり伯爵家の放蕩当主かと思ってた・・・。

「・・もしかして、伯爵家の放蕩当主とでも思ってた?」

「・・・・」

 私の無言を肯定と受け取ったらしい伯爵様は「ひどいな」と言って笑った。その笑い顔は、普段ご婦人方の隣で笑っているような感じではなく、普通っぽい・・・とにかく、私は初めて伯爵様を見て心臓が跳ねたのだった。



(一週間後)

 書棚に本を並べて終えると、背後からいつもの声が聞こえてきた。

「やあイーディ。もう仕事に出てきて大丈夫なのかい?」

「こんにちは伯爵様。ええ、もう大丈夫です。ダニエルの家から自分の部屋に戻りましたし」

「・・・ダニエル?」

 なぜか伯爵様の顔が険しくなる。

「はい。ダニエルは王都に住んでいる私の友人です。事件を知って駆けつけてきた彼女に問答無用で家に連れて行かれました」

 私が苦笑いをすると、伯爵様は「ああ、女性なのか」と明らかにほっとしていた。

「伯爵様。あのときは、ありがとうございました。改めて御礼を言わせてください」

「当然のことをしたまでだよ。でも、私に恩義を感じているなら、ちょっとした願いを聞いてもらえるかな」

「はい。・・・私にできることでしたら」

 私がそう答えたとき、伯爵様がやけに嬉しそうな顔をした・・・なんだろう、もしかして貞操の危機ってやつ?!

「まず、私をサイラスと呼ぶこと。それから、きみは10歳年上の男は嫌い?例えば私とか」

「き、嫌いかどうかは人によります。伯爵様は命の恩人ですし嫌いではありません」

 またも、私は壁際に追い詰められた。しかも今日は室長の助けがない。なんで??

 私の心を読んだように、伯爵様はにやりと笑った。


「エーリアルは来ないよ。大事な話を邪魔するなと言ってある」

 私は伯爵様に大事な話はありませんが?!

「あ、の。伯爵様・・・私は仕事をしなくてはいけないのですが?」

「おや。きみは先ほど本を全部並べ終えたじゃないか。逃げようなんて考えないでほしいなあ。私のもう一つの願いを聞いてくれないとね?」

 こ、今度こそ貞操の危機?!

「イーディ、私と結婚前提で恋愛してほしい」

 私はびっくりして伯爵様を見上げた。そこにいたのはいつものヘラヘラ顔じゃなくて、いたって真面目な伯爵様だ・・・だけど、その願いは聞けないわ。

「からかわないでください。伯爵様、恋人いっぱいいらっしゃるじゃないですか。ましてや妻?無理です、私の実家は貧乏な地方領主で身分が違います」

「イーディを知ってから私の生活はすっかり清廉潔白なものだよ。おかげで両親がすっかり喜んじゃって。きみはもうお気に入りのお嬢さんだ。それに、私の結婚相手に文句を言うヤツにはそれなりの手段を考えるから、きみは何も心配しないで?」

「私は男性と接したことがあまり、ないもので・・・すぐに飽きるかと思います。どうか他を・・・」

「私が最初で最後だ。イーディ」

 当たってくれと言おうとしたら、なぜか素晴らしく嬉しそうに耳元で囁かれ、顔を赤くした私に追い討ちをかけるように顔が近づいてきた。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


当初は短編にする予定で書き始めたら、あら不思議。

前後編になっておりました。

それにしても糖分過多のはずが申し訳ありません。

まあ当社比で甘いはず・・・だと思う。



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