終演 その2
[君達に伝言がある。必ず生きて帰る。だがもしもの事があればコレを]警官は渡された拳銃と警察手帳を見せた。[ホンダ長官。………なら何故行かせてくれない!][民間人だ。君らを守る義務は我々にある。品川駅にいた不審者を確保しろと命令したのは長官だった。その結果、ウイルスをばら蒔く事になるとは。君らは長官の苦悩を知らんだけだ。一人で乗り込んで行ったのは償いもある。コレを渡したのも][………すいません。少し頭冷してきます]ヒロミは電車の外に出た。[長官の血清弾の残りは把握してるか?][イヤ。正直、わからないのだ。効くのか効かないのか。一時的に抑える作用がある。そうとしか言えないのだ。すまないな]警官は頭を下げた。[イヤ。良いんだ。貴方が謝る事は無い。土下座するべきはレドガー・クーネス!そうだろ?]スレイターが肩を叩いた。[旨いな。このスープ。染みるな]
四人は車内で一夜を共にした。ヒロミは寝つけなかった。美香は心配そうにヒロミに近寄った。
[冷えるよ。ハイ。毛布][ありがとうございます。先輩][間違えて無いよ。ヒロミちゃんの言い分は。でもね、世の中ってだれかれミスを犯す時があるの。その処理についても様々。結局コレで良いなんて選択無いんだよ][ありますよ。そんなの。結果ウイルスをばら蒔く事になったじゃないですか!品川駅に。もし、警視長官が手を出すなって命令を下していたら………][じゃあ、ヒロミちゃんは時間を戻す事ができるの?少し先の未来から来ていけませんなんて言える?][そりゃー………できませんよ。私が言いたいのはもっと慎重な指示をって事です。助けになんか行きたく無いですよ。先輩も見たでしょ?あんな変わり果てた人間の姿を。私は行きませんから!勝手ですよ皆][なら貴女も彼等と代わらないわね。あの変死体と][わかってます。明日になれば補給できるんですよね。おやすみなさい]美香はヒロミに寄り添って寝た。
………わかってるわ。私だって戦いたくは無い。元は人間ですもの。ゲーセンのゲームじゃないんだもん。皆、知ってるわよ。ヒロミちゃん………
[まだ、起きてるか?美香さん][アラ、先生。何です?][もう一度聞きたい。終わったら食事位付き合ってくれるんだな][何よ?今さら][………確認だ。こうゆうのはな確認が必要なんだ。女性を預かる訳だからな][ハーッ………良いわよ。別に。無理して付き合わなくても][………初めてなんだ。その〜………女性を誘うのは][エーッ!そうだったのー!][………どうかしました?先輩][ウウン。寝てて][静かに頼む。俺と食事に行ってくれないか。終わったら][ショッピングも好きだし高く付くわよ。私][構わん。好きにして欲しい][エエ。わかったわ。お供しますわ。おやすみなさい][アア。おやすみ]
3月24日。早朝。その日は快晴だった。
[許可が降りた。君らにかかっている。早く事態を収拾して欲しい。頼んだぞ。それからコレも。長官の補給物資だ。届けて欲しい。万が一の事があれば………][警官さん。わかってる。民間人が警官を発砲したらそれこそ問題だ。必ず無事に帰る。編集長にも伝えて欲しい。行くぞ皆]隼人が血清弾を補給する。[アア。コレで最後だ。二度と惨劇は繰り返さない]スレイターが血清弾を余計に持つ。[そうね。あと少しよね。行きましょう]美香が二人に同意する。[私も。失った仲間を取り戻す。必ず]ヒロミは涙を堪えていた。
[行ってきます。民間人の教師の名誉に賭けて。必ず大学を取り戻して来ます。あと、お願いがあります][ン?何だね?][………この大学の買収問題が浮上してるみたいなんです。なんとかそれを…………][ウン。上に話してみよう。取り戻す代わりにその話しは無かった事に][私からもお願いしますわ]美香もその話しに立ち会う。[俺は、無いと思うぜ。むしろ良くなると考えようや。まあ、そんな話があればうちが独占スクープするがな]隼人が笑っていた。
四人は大学に目を移す。グロロロッと人ではない声が聞こえた。[行くか。皆。悔いが残らない様にな]スレイターの掛け声と共に、四人は走り出した。入り口は変死体で溢れていた。[スレイター。どうするんだ?][強行突破だ。隙間なく撃ち込め!][わかったわ。今回はリミット無しね!ウオリャー!]美香が叫ぶ[派手に散れよ!オタクラ]隼人が叫ぶ。[皆。…………止めようよ!もうこんなの!関係無いじゃん]銃声の中、泣き叫ぶヒロミ。
[片付いたか。中へ入ろう]ヒロミはふと変死体に目を移す。[コレって………ウチの高校の制服。………グスン………許さない!レドガー・クーネス!一体、この人達が何をしたの!私…………私………戦うよ。皆、見てて]ヒロミは大学の校内に走る。[マズイ。ガンナーズハイだ!止めなくちゃ!冷静な判断ができていない]隼人はヒロミの後を追う。[先生。ガンナーズハイって?][生体異変だ。戦争から帰った兵士によくある現象らしい。自分が誰なのか、目の前にいる者が誰なのか、敵味方の区別が付かないらしい][ハイになってるのね。どうりで目がいってたわ。早く追わなきゃ][高校生には辛い選択かもな。敏感な時期だ。少しフオローしよう]スレイターも後を追った。
続く