第91話 まだ見ぬ我が子は『ドル箱』!? セレスティアのロイヤルベビー計画
「本日の議題は、我が国の『未来のGDP』についてです」
ノエル政権による幼児化地獄から一夜明けた朝。 ジャンケンに勝利し、本日の第一夫人となったセレスティアは、会議室に全員(ディランと妻たち、そしてレオンら幹部)を招集した。
彼女はプロジェクターに、一枚のチャートを映し出した。
「現在、我が国はスーパーカーやブランド品で潤っています。しかし、ブームはいずれ去るもの。……そこで、次なる経済の起爆剤が必要です」
「起爆剤? また何か作るのか?」
俺が尋ねると、セレスティアはニヤリと笑い、お腹をさすった。 (※まだ何も入っていません)
「それは……『ロイヤルベビー(世継ぎ)』ですわ!」
彼女は分厚い雑誌を取り出した。 表紙には『月刊・王家のたまご(創刊号)』と書かれている。
「子供は国の宝と言いますが、王家の子は文字通り『宝(金脈)』です。……誕生記念グッズ、記念硬貨、ベビー服ブランドの展開。経済効果は計り知れません!」
「ま、まだ出来てもいないのに気が早すぎないか!?」
「ビジネスは『段取り』が全てですわ、旦那様。……すでに各方面への『先行投資』は始まっています」
セレスティアが指を鳴らすと、レオンたちがゾロゾロと入ってきた。 彼らはなぜか、大量の「お布施」を持っていた。
「へへっ、ディラン! 俺、第1子の『名付け親になる権利』をローンで買ったぜ!」(レオン) 「私は『王子の専属剣術指南役』の権利を予約しました!」(イグニス) 「ワシは『おじいちゃん』と呼ばれる権利を……」(ハゲた元国王)
「お前ら、何を買わされてるんだ!?」
セレスティアは恐ろしいことに、まだ存在しない子供の権利を切り売りして、すでに巨額の資金を調達していたのだ。 恐るべし、先物取引。
さらに、妻たちの『教育ママ』魂にも火がついた。
「ふむ。余の子供なら、生まれながらに魔力無限大じゃろうな。……今のうちに『最強の魔王英才教育カリキュラム』を作っておくか」(ヴェルザード)
「私の計算では、遺伝子の組み合わせにより99%の確率で天才が生まれます。……とりあえず、0歳児から読める『量子力学』の絵本を書きました」(ソフィア)
「男の子なら聖騎士、女の子なら聖女ですね! ……あ、でも私がママになったら、甘やかしすぎてダメ人間にしちゃうかも~♡」(ノエル)
「まずは体力づくりです! ディラン様、今から『妊活トレーニング』を始めましょう!」(アリシア)
会議室は、まだ見ぬ子供への期待と欲望でカオス状態になった。
「……あの、俺の意見は?」
俺がおずおずと手を挙げると、セレスティアは電卓を叩きながら冷徹に言った。
「旦那様の意見より、旦那様の『頑張り』が必要ですわ。……さあ、スケジュールを空けておきました。今夜から『子作り強化週間(義務)』です」
「「「異議なし!!」」」
「ひぃっ!?」
妻たちの目が、肉食獣のそれに変わる。
セレスティアの計画書には、 『第一四半期目標:懐妊』 『第二四半期目標:マタニティフォト写真集発売』 『第三四半期目標:出産ライブビューイング(有料配信)』 と、恐ろしい予定がびっしりと書き込まれていた。
「……逃げられない」
俺は悟った。 この国では、赤ちゃんでさえも彼女の手のひらの上で踊る『経済活動』の一部なのだと。
その夜。 『ロイヤルベビー計画』の名の元に、ディランが寝室へ連行されたのは言うまでもない。




